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内容証明郵便の受け取りを拒否・無視されたらどうすれば良い?

債権の回収を図るときや、重要な事柄を相手に伝える場合、実務では「配達証明付き内容証明郵便」(以下では、単に「内容証明郵便」と言います)という方法が多く使われています。

しかし、内容証明郵便を受け取った債務者が無視を決め込むこともあります。そもそも内容証明郵便の受け取りを拒否されることもあるでしょう。

そういった場合、債権者はどのような対応をすれば良いのでしょうか?

この記事では、内容証明郵便の効果や役割・メリットとともに、内容証明郵便を無視または受け取り拒否されたときの対応について解説していきます。

1.内容証明郵便の役割や効果

内容証明郵便は、郵便局の窓口で手続きして送ってもらう郵便です。
(一部の郵便局でのみ受け付けてもらえます。すべての郵便局から内容証明郵便を送れるわけではないので注意してください。)

内容証明郵便の役割や効果は以下の5つです。

(1) 文書の内容を公的に証明できる

内容証明郵便を送るには、同じ文面の文書を3通作成します。うち2通はコピーでも構いません。

文書は差出人・受取人・郵便局がそれぞれ保存することになっています。仮に差出人が文書を紛失し、受取人が文書を捨ててしまっても、郵便局には文書が残ります。

内容証明郵便の文書は公的な証拠となり、後で裁判などに提出できます。内容証明郵便を送って証拠を作っておけば、将来的に有利に立ち回れる可能性があるのです。

(2) 相手に手渡しされ、その日付が確定できる

内容証明郵便は相手のポストに投函されるのではなく、直接手渡しされます
手渡しなので相手は「受け取ってない」「ポストに投函されてなかった」などの言い訳ができません。

そして内容証明郵便は、自分が差し出した日や相手が受け取った日などが記録に残り、日付が確定されます。この日付も裁判のときの証拠になります。

(3) 相手に心理的な効果を与えられる

内容証明郵便を送られた相手は、債権者が本気で督促に乗り出したと身をもって知ることになります。

債務者が企業などの場合、訴訟によるイメージダウンなどを警戒して、早期に支払いに応じる可能性が高くなります。

一般人が債務者の場合でも訴訟は避けたいはずです。一括返済は無理だとしても、それまで無視していた交渉に応じるようになる確率が上がります。

(4) 消滅時効の成立を引き延ばせる

債権には消滅時効がありますが、内容証明郵便を送ることで時効の進行を6ヶ月間先送りできます。

内容証明郵便を送ってから6ヶ月以内に裁判上の請求(訴訟や支払督促)をすることで、時効の進行をストップできます。
このため「あと1ヶ月で消滅時効になる債権があるが、訴訟の準備に2ヶ月かかる」という場合は、内容証明郵便を送って時間を作ることができます。

ただし、裁判外の催告(この場合は内容証明郵便による催告)で時効の完成を遅らせることができるのは1度のみです。数ヶ月ごとに内容証明郵便を送っても、その都度時効までの期間が伸びるわけではありません。

[参考記事] 債権回収の消滅時効は?時効期間・完成阻止の方法

(5) 不要な債権を損切りできる

債権者が法人の場合、債権を持っているだけで法人税がかかります。利益にならない債権は、損切りのために手放してしまった方が良いケースもあります。

そこで、内容証明郵便で契約の解除を主張しておけば、将来裁判をしたときに契約解除を主張した確定日付を内容証明郵便によって主張できます。

2.内容証明郵便の「無視」や「拒否」はできる?

内容証明郵便を使ったとしても「債務者が読んでくれないかもしれない」と思う債権者もいるはずです。
あるいは「宅配便のように受け取り拒否されるかも…」と心配する債権者もいるかもしれません。

債務者が内容証明郵便を無視したり、受け取り拒否したりすることは可能なのでしょうか?

(1) 無視されてもその後の手続き上問題はない

内容証明郵便は受取人へ手渡しされ、その記録も残ります。「郵便事故で届いてない」と主張されることはありません。
ただし郵便物を開封せず、中身を読んでいないことはありえます。事実上の「無視」という状態です。

しかし、たとえ相手が読んでいなくても、送った内容と日付は郵便局に記録されています。内容証明郵便の送付によって、通知をしたことが証明されるのです。

届いた郵便を読むか読まないかは関係なく、債権者はその後の手続きを粛々とこなしていけば問題ありません

(2) 受け取り拒否されても催告の事実は証拠にできる

実は、内容証明郵便は受け取り拒否できます。
不在や居留守が続くなどで長期間配達できない場合、郵便局員が債務者のポストに連絡票を入れるなどして「郵便物を◯月◯日まで預かっています」ということを知らせます。それでも債務者が連絡しない場合、内容証明郵便は「受取拒否」や「不在」などのハンコを押されて、債権者の手元に戻ってきます。

(1)の無視と違い、受け取り拒否などの場合は、内容を知ることができない状態にあります。
しかし、受け取り拒否されたとしても催告した事実は残るため、裁判ではこれを証拠にすることができます。

受け取り拒否された、または返事がないからと言って、何度も内容証明郵便を送付する必要はありません。

3.内容証明郵便の次の手は?

仮に内容証明郵便が無視されたり受け取り拒否をされたりしても、催告した事実は残ります。

相手から返事がないか、返事があっても交渉にならないようであれば、次の手を講じることになります。

(1) 弁護士から内容証明郵便を送付してもらう

内容証明郵便の無視や受け取り拒否をされた場合、もし個人名で内容証明郵便を送っているのであれば、弁護士に依頼して改めて内容証明郵便を送ってもらうのも良いでしょう。
それだけで相手の態度が変わり、返済に応じるようになるかもしれません。

(2) 支払督促

相手の住所を管轄する簡易裁判所に申立てをして、裁判所から債務者に督促をしてもらう手続きです。
2週間経って相手から異議が出なければ、債権者は裁判所に仮執行宣言の申立てをします。裁判所はこれに基づいて支払督促に仮執行宣言を付します。

仮執行宣言付支払督促の正本が債務者に送達されてから2週間以内に債務者から異議が出ず、支払いもないような場合は、債権者は裁判所に強制執行の申立てができます。

支払督促は全てを書面で済ませることができる手続きです。裁判所まで行く必要がないという利便性の高さがあります。

しかし、相手から異議が出ると通常の訴訟に移行するため、相手に弁護士がついていない場合や、異議が出る見込みのないときに行うと効果が高いでしょう。

[参考記事] 支払督促とは|やり方などをわかりやすく解説

(3) 少額訴訟

60万円以下の金銭の支払いについて行える訴訟です。通常の訴訟と違って、原則的に1回の審理で決着し、即日判決が行われます。

簡易な手続きとは言え訴訟であることに違いはないので、相手に与える心理的なダメージは大きいです。うまく行けば審理の前に債務者から連絡や支払いがあって、和解に至るかもしれません。

もちろん勝訴すれば、通常の裁判と同様に強制執行に移ることができます。

ただし、少額訴訟も支払督促と同じく、相手が異議を申し立てれば通常の裁判へ移行することになります。

また、審理が1回しかないため、それに備えて十分な証拠や証人を用意しなければなりません。

[参考記事] 少額訴訟とは|デメリット・流れ・やり方

(4) 訴訟

いわゆる「裁判」です。これまでに利用した内容証明郵便が証拠となります。

裁判と言うと時間がかかってなかなか解決しないイメージがあるかもしれませんが、実際には相手が途中で和解に応じることもあるため、早期に解決できるケースも多いです。

和解できずに確定判決が出た後は、強制執行の申立てができます。

(5) 強制執行

支払督促や少額訴訟または通常の訴訟が終わった後は、強制執行をすることが可能になります。強制執行で相手の財産を差押えすれば、そこから債権を回収できます。

これに先立って、相手が勝手に財産を処分しないように「仮差押え」などの手続きをするケースも多いです。

[参考記事] 債権回収に向けた仮差押えとは?

何を差し押さえるか、仮差押えをするのか、実際にどのような手続きをするのかなどは、弁護士と相談して決定し、手続きを代行してもらうことをおすすめします。

(6) 和解

強制執行ではなく、債務者から連絡があって和解になることも多いです。

和解にあたっては、和解の条件を決める必要がありますし、和解の内容を書面化する必要も出てきます。

可能であれば和解の内容を公正証書で残しておきましょう。公正証書には裁判の確定判決と同じ効果があるため、いざというときに訴訟を経ることなく強制執行に移ることができます。

和解についても弁護士に依頼することをおすすめします。書面化する際に間違いがあるかもしれませんし、知らないうちに不利な条件を飲まされるおそれがあるからです。

4.内容証明郵便は本気の債権回収のための第一歩

内容証明郵便を使うことで、債務者が支払いに応じる確率が上がります。

仮に無視されたり受け取り拒否されたりしても、内容証明郵便を送った事実は変わらないため、それを元にして次の債権回収手続きに進むことができます。

内容証明郵便の送付やその後の債権回収は、弁護士に依頼することをおすすめします。弁護士が作成した内容証明郵便は債務者へのインパクトが大きいですし、その後の債権回収においても弁護士なら最適かつ効果的な方法を選択してくれるからです。

泉総合法律事務所では、内容証明郵便に関するご相談も承っておりますので、お気軽にご連絡ください。

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