用語集

あ行

逸失利益(いっしつりえき)

逸失利益とは、債務不履行や不法行為が生じなければ「本来得られたであろう利益」のことをいいます。「得べかりし利益」または「消極的損害」ともいわれます。
現実に生じた損失(積極的損害)に対して、金額の算定に幅が生じやすいという特徴があります。

委任契約(いにんけいやく)

委任者(法律行為を委託する人)と受任者(法律行為を受託する人)の間で交わされる契約を委任契約と呼びます。民法643条~656条に規定されています。
なお、委任契約は原則無償ですが、報酬について合意した場合には有償となります。善管注意義務が要求されるため、一般的には有償となります。
また、法律行為ではない、法律事務等の業務の委託については「準委任」と呼ぶことがあります。

訴え提起前の和解(うったえていきまえのわかい)

裁判上の和解の一つで、合意が成立した場合に、民事訴訟を提起する前に、簡易裁判所に和解を申し立て、紛争を解決する手続です。当事者間に合意があり、かつ、裁判所がその合意を相当と認めた場合に和解が成立し、合意内容が和解調書に記載されることで確定判決と同一の効力を有する債務名義として用いることができます。

売掛金(うりかけきん)

企業が商品やサービスを提供したときに、後から代金を請求する権利(代金債権)が発生しますが、これを売掛金(売掛金債権)と呼びます。一方、商品やサービスの提供を受けた側が、後で代金を支払う義務のことを買掛金(買掛金債務)と呼びます。
企業間の取引の場合、この売掛金が多額となることが多いため、資金繰りにおいては売掛金を回収することが非常に重要となります。

ADR(裁判外紛争解決手続)(えーでぃーあーる(さいばんがいふんそうかいけつてつづき))

Alternative Dispute Resolutionの略称。「代替的紛争解決方法」と訳すこともあります。企業間や個人間でトラブルが起きた際に、裁判所の手続きを介さず、その分野の専門家が第三者として関与し、和解、あっせん、調停、仲裁、助言、相談などの方法により、トラブルの解決を目指す機関です。
裁判外の手続であり、関係者本人たちによる解決を目指します。そのため、通常訴訟と比べるとコストを低く抑えられるとともに、解決までの期間も短くなる傾向があります。また裁判と異なるため、非公開で手続きが進みます。
ただし、話し合いが必ずしも成立するとは限らず、決裂してしまうケースもある上、裁判外であるがゆえに強制執行力がないというデメリットもあります。ですので、たとえ和解等が成立したとしても、決定された事項が守られないケースも考えられます。
そのため、さらなるトラブルを避けるため、弁護士会によってはADRの利用に際し、予め弁護士相談をするようすすめるところもあります。

か行

買掛金(かいかけきん)

企業が商品やサービスの提供を受けたときに、後から代金を請求され、支払いをする義務(代金債務)が発生しますが、これを買掛金(買掛金債務)と呼びます。一方、商品やサービスの提供をする側が、後で代金を請求する権利のことを売掛金(売掛金債権)と呼びます。

貸倒れ(かしだおれ)

債務者側が倒産するなどして、債権回収が不能となることを貸倒れと呼びます。
そのため、相手側が貸倒れになる前に債権回収を行う必要があります。

仮差押え(かりさしおさえ)

債権者が、債務者の財産を訴訟の前に仮に差押えることを仮差押えと呼びます。
裁判には時間がかかるため、訴訟を提起した後に、債務者が財産を処分(他人に譲渡したり隠匿したりするなど)するケースがあるため、それを防ぐ目的で、訴訟前に債務者の財産を仮に差押えることができます。その際、予め裁判所に保証金として供託金を支払う必要があります。

仮執行(かりしっこう)

債権者が裁判で勝訴しても、債務者が上訴するケースがあります。そのため、裁判が長引いてしまうことがあります。
そのため、確定判決をもって強制執行をする前に、勝訴判決に基づいて、暫定的に強制執行を行うことがあります。これを仮執行と呼びます。
仮執行により、より早期に債務者の財産を差押えることができます。
なお、仮執行には、裁判所による「仮執行の宣言」が必要です(民事訴訟法259条)。
仮執行の宣言が出るかどうかは裁判所の裁量によりますが、金銭債権問題では仮執行の宣言が出ることが多いようです。

期限の利益(きげんのりえき)

債務者にとっての債務履行期限についての利益のことで、一定期間義務を履行する必要がないことを期限の利益と呼びます。

期限の利益喪失条項(きげんのりえきそうしつじょうこう)

契約に違反した場合に、期限の利益を失うと定めた契約の条項を、期限の利益喪失条項と言います。

強制執行(きょうせいしっこう)

債権を回収するために訴訟を提起し、裁判に勝ったとしても、債務者が支払いをしないこともあります。その場合、裁判所などの公的機関を通して強制的に債権を回収することを「強制執行」といいます。
債権者が裁判所に強制執行の申立てを行い、申立てに問題がない場合は、裁判所が債務者の財産を差し押さえます。債権者は、差し押さえた財産から債権を回収します。
強制執行は、いわば国家が債務者の財産に働きかけて、強制的に債務の弁済をさせる制度です。債権回収の最終手段として使われます。

供託(きょうたく)

供託とは、金銭や有価証券などを国家機関である供託所に預けることで、一定の法律上の目的を達成する制度です。
ただし、供託が認められるのは、法令の規定によって、供託が義務付けられている場合または供託をすることが許容されている場合のみです。
たとえば、債権回収の場合では、裁判所の許可を得て仮差押えを行うために、裁判所が命じる保証金を法務局に供託します。

金銭消費貸借契約(きんせんしょうひたいしゃくけいやく)

金銭消費貸借契約とは、借主が、貸主から金銭を借り入れて消費し、その借入額と同額の金銭を貸主に返済する契約のことです。契約書に利息に関する条項がある場合には、借主は利息分も含めて貸主に返済します。

黒字倒産(くろじとうさん)

黒字倒産とは、売上があって帳簿や決算書では利益が出ている(黒字状態)にもかかわらず、支払いに必要な資金が不足して倒産することです。
黒字倒産を防ぐためには、迅速で確実な債権回収を行い、一方で支払いを遅らせるなどして、キャッシュフローをプラスに保つ必要があります。

契約(けいやく)

契約とは、当事者間で法律上の権利義務を発生させるために、当事者の合意によって成立する法律行為のことです。
契約は、原則として合意があれば成立しますが、口約束ですと、お互いの理解にずれが生じるおそれがあるとともに、第三者にもその契約内容がわからないため、契約書を作成して目に見える形にするのが一般的です。
債権回収においても明確な内容の契約書は債権の存在を裏付ける証拠となります。

公正証書(こうせいしょうしょ)

公正証書とは、公証人によって作成する公文書です。公証人という公務員が作成しますと、いわば、国がお墨付きを与えた文書ということになりますので、通常の契約書より証拠としての価値が高まります。
特に債権回収においては、公正証書を作ると、民事訴訟を経由せずに、いきなり強制執行をすることができるというメリットがあります(執行証書、民事執行法22条5号)。

婚姻費用(こんいんひよう)

婚姻費用とは、夫婦とその未成熟の子どもが通常の社会生活を維持するために必要な生活費のことです。具体的には、衣食住の費用や、出産費、医療費、教育費などが該当します。

さ行

サービサー(さーびさー)

サービサーとは、金融機関等の債権者から委託を受けて、または譲り受けて、債権回収を行う民間の専門業者のことです。もともとは、弁護士のみが行うことができる業務でしたが、不良債権の処理等を促進するために、弁護士法の特例として、「債権管理回収業に関する特別措置法(サービサー法)」が施行され、専門業者が債権回収を行えるようになりました。

債権回収(さいけんかいしゅう)

債権回収とは、債務者が期限までに金銭を支払わないとき、債務者がその金銭を支払うように、債権者が手段を講じることをいいます。
具体的には、まず請求・督促を行い、その後、仮差押え、訴訟手続などを行います。

債権執行(さいけんしっこう)

債権執行とは、債務者が第三者に対して持っている債権を差し押さえて、当該第三者から直接取り立てる等して債権を回収する強制執行の一種です。
例えば、債務者の銀行の預金口座を差し押さえたり、債務者の有する売掛金債権を差押えたりするケースが多いです。

債権者(さいけんしゃ)

特定の人(債務者)に対して、何らかの行為や給付を請求できる法的権利を「債権」といい、その権利を持つ人や企業などのことを債権者と呼びます。たとえば、金銭債権の場合、お金を払ってもらえる側が債権者です。
債権には様々なものがありますが、貸付金、売掛金、損害賠償請求権、慰謝料、養育費、未払い賃金などがあります。
他方、この債権を行使される側(特定の人に対して、何らかの行為や給付をしなければならない義務を負う側。金銭債権の場合、お金を払わないといけない側)を債務者と呼びます。

債権者代位権(さいけんしゃだいいけん)

債権者代位権(民法423条1項)とは、債権者がその債権を保全するために、債務者が第三者に対して持っている権利を債務者に代わって行使するすることができる権利をいいます。
たとえば、債務者が第三者に金銭を貸していた場合、債権者は、債権者代位権行使の要件を満たせば、債務者から金銭を借りているその第三者に対して、債務者の代わりに自分へ支払うように求めることが出来ます。

催告(さいこく)

債権者が支払いを滞らせている債務者に対して送る、債務の履行を要求する通知のことを催告と呼びます。一般的には、最終的な督促を催告と呼ぶことがあります。
催告通知の書類を「催告書」と呼びます。
催告を行っても債務の履行がなされない場合になって初めて、債権者は契約解除を行うことができます(民法541条)。
催告書を受け取った債務者は法的措置を受ける可能性がありますので、早急な対応が必要になってきます。
また、催告は債務の消滅時効の完成を猶予する事由(一時的に時効の完成を阻止する事由)になりますが、時効更新の効果を生じさせるには、裁判による請求等を催告後6か月以内に行って確定判決を得る等する必要があります。

財産開示制度(ざいさんかいじせいど)

財産開示制度とは、債務者に対して強制執行の対象となり得る財産の情報を開示させるための裁判所の手続です。
債権者が裁判で勝ったとしても、債務者がどこにどれくらいの財産を保有しているのかわからない場合、強制執行ができません。そこで、債務者の財産がどこにあるのかを把握し、強制執行ができるようにします。
債務者が、財産開示について正当な理由なく出頭しなかったり、嘘をついたりすると、刑事罰(6か月以下の懲役又は50万円以下の罰金)が課されます(民事執行法213条1項6号)。

裁判上の和解(さいばんじょうのわかい)

裁判上の和解とは、裁判手続の中で当事者同士が互いに譲り合って争いを終えることを合意することです。裁判では、必ずしも白黒をはっきりさせなければいけないわけではなく、互いに合意すれば和解して終了することもできます。
裁判所で和解が成立したときには、書記官により和解の内容が調書に記載されますが、この和解調書は確定判決と同一の効力を有します。この和解調書に基づいて強制執行を行うことも可能です(民事執行法22条7号、民事訴訟法267条)。

債務者(さいむしゃ)

特定の人(債権者)に対して、何らかの行為や給付をしなければならない義務を「債務」といい、その義務を負っている人や企業などのことを債務者と呼びます。たとえば、金銭債務の場合、お金を支払わなければならない側が債務者です。
債務には様々なものがありますが、借金、買掛金、損害賠償金、慰謝料、養育費、未払いにした賃金などがあります。
他方、この債務を請求する側(特定の人に対して、何らかの行為や給付を請求できる法的権利を有する側。金銭債務の場合、お金を支払ってもらう側)を債権者と呼びます。

債務名義(さいむめいぎ)

債権者が債務者に対して持つ、債権・請求権を有することを証明する公文書で、強制執行の際に必ず必要となるもの(民事執行法22条)を債務名義と言います。
裁判所や公証人などが作成した公的な文書であって、私文書(契約書や通帳等)は債務名義にはあたりません。
債務名義無しに強制執行はできません。
具体的には、確定判決、調停証書、和解調書、認諾調書、仮執行の宣言を付した損害賠償命令、仮執行の宣言を付した支払督促などが債務名義となります。
このほか、公証役場で作成した強制執行認諾文言が含まれる公正証書(執行証書)も債務名義として使用されます(民事執行法22条5号)。

詐害行為取消権(さがいこういとりけしけん)

詐害行為取消権(民法424条1項)とは、債務者が行った詐害行為を取り消して無かったことにするよう裁判所に請求できる権利です。
「詐害行為」とは、債務者が債権者を害することを知りながら、故意に自己の財産を減少させ、債権者が十分な弁済を受けられないようにする行為をいいます。
たとえば、金融機関からお金を借りている債務者が、借金のかたに家をとられないように、自分の子に贈与したとします。債権者である金融機関は、自身の債権を保全するために、債務者が行った贈与の行為を詐害行為として、詐害行為取消権を行使することができます。
本来、債務者であっても自分の財産を自由に取引することは可能ですが、その取引によって、債権者が債権回収をできなくなるおそれがある場合は、例外的にその債務者の取引を取消して、債権者の権利が不当に害されないようにします。

先取特権(さきどりとっけん)

先取特権とは、複数の債権者がいる場合に、他の債権者よりも優先して債務者から債権を返済してもらえる権利のことです。
先取り特権には、大きく分けて「一般の先取特権」「動産の先取特権」「不動産の先取特権」の3つがあります。「一般の先取特権」では、債務者の総財産から優先的に弁済を受けることができます。「動産の先取特権」と「不動産の先取特権」では、特定の財産(動産または不動産)からのみ弁済を受けることができます。

差押え(さしおさえ)

差押えとは、債権者の債権・権利を保全するために、国の執行機関が、債務者の一定の財産の処分を禁止することをいいます。
具体的には、競売などで、債務者の財産を売却してその売却代金から債権を回収する場合、競売前に債務者が財産を処分してしまうことを、あらかじめ防いでおきます。

時効(じこう)

時効とは、一定の期間が経過すると、権利が消滅したり、反対に権利を取得する法制度のことです。時効によって権利を取得する場合を「取得時効」といい、時効によって権利が消滅する場合を「消滅時効」といいます。
債権回収においては、請求権を行使しないままでいたところ、消滅時効が成立し、債権を回収できないことが問題になります。

示談(じだん)

示談とは、トラブルや紛争において、その当事者間で解決方法を話し合い、自主的に解決することを言います。いわゆる裁判外の和解を示談と呼びます。

質権(しちけん)

質権とは、民法で定められている担保物権の一つです(民法342条)。債権者が質権設定者(債務者または第三者)から物を受け取って占有し、債務が弁済されなかったときにはその物を売却して、その売却価額から優先して債権の弁済を受けることができるという担保権です。
典型的な例としては、お金を貸す代わりに宝飾品を預り、お金を返済しなかったら、その宝飾品を売却して債権を回収します。

執行証書(しっこうしょうしょ)

執行証書とは、公証人が作成した公正証書で、訴訟をしなくても、債務者が直ちに強制執行を受け入れる旨が記載されている証書のことです(民事執行法22条5号)。
債権回収においては、執行証書があれば、訴訟を起こして勝訴判決を得なくても、いきなり強制執行が可能です。

支払督促(しはらいとくそく)

支払督促とは、簡易裁判所に対して申し立て、債務者に対して金銭を支払う(債務を履行する)ように督促をしてもらう手続きのことです。
債務者が支払督促について異議の申立てをしなければ、債権者は、支払督促に仮執行宣言を付与してもらうことができ、それに基づいて強制執行することができます。債務者が支払督促について異議の申立てをしたときは、通常の裁判へ自動的に移行します。

受領書(じゅりょうしょ)

受領書とは、受領者が金銭や物を受け取ったとき、確かに受け取ったと意思を表明する書類です。
「受け取っていない」と言ってトラブルになるのを防ぐことができます。

少額訴訟(しょうがくそしょう)

少額訴訟とは、60万円以下の金銭の支払いを求める場合に限り行うことができる、民事訴訟の特別な手続きのことです。簡易裁判所に訴えを提起します。申立費用が安く手続きにかかる期間が短いという特徴があります。原則1回の期日で審理が終了し、即日判決が言い渡されます。

譲渡担保権(じょうとたんぽけん)

譲渡担保権とは、債権者が債権の担保を目的として、譲渡担保権設定者(債務者または第三者)からその有する財産の所有権を譲り受け、債務の弁済がなされたら所有権が設定者に戻るというものです。譲渡担保権設定者の財産の所有権を債権者に移転しつつも、質権のように目的物である財産を引き渡す必要はないため、設定者はその財産を使用し続けることができるという特徴があります。
たとえば、債務者は工場の機械を譲渡担保とすることで、機械を使用して収益をあげながら、お金を借りることができます。
質権では、財産を物理的に債権者に渡さないといけませんが、譲渡担保権では、財産を債務者の手元において利用可能であるのが特徴です。

所有権留保(しょゆうけんりゅうほ)

所有権留保とは、ある物の売買契約において、商品は引渡しても、その代金を完済するまでは、担保として売主に所有権を残しておくことをいいます。これにより、買主が代金を完済しない場合には、売主はその商品を回収することができます。

請求書(せいきゅうしょ)

請求書とは、請求者が相手方に対して支払を請求する意思を表明した書類です。通常、相手方は請求書に基づいて支払いを行います。

相殺(そうさい)

相殺とは、相手方に対して有している債権と、相手方に対して負担している債務とを対当額で消滅させる意思表示のことです。
相殺では、両者間で具体的な金銭の支払い等は発生しませんが、お互いに債務を履行したのと同じ効果が生じます。意思表示だけで迅速に債権回収を行うことができます。

租税債権(そぜいさいけん)

租税債権とは、納税義務者(債務者)に対して、国や地方公共団体が納税を請求する権利のことです。
国税徴収法8条には「国税優先の原則」について、地方税法第14条には「地方税優先の原則」について定められており、その他の債権より優先的に回収できるとされています。

即決和解(そっけつわかい)

即決和解は「訴え提起前の和解」(民事訴訟法275条)とも呼ばれます。裁判上の和解の一種で、争いのある当事者が、民事訴訟を提起する前に、簡易裁判所に和解の申立てをし、紛争を解決する手続のことです。
即決和解が成立すると、和解調書が作成されます。和解調書は確定判決と同一の効力を有しますので、この和解調書に基づいて強制執行を行うことも可能です。

た行

第三者弁済(だいさんしゃべんさい)

第三者弁済とは、本来の債務者以外の第三者が債務者に代わって弁済することをいいます。
ただし、弁済をするについて正当な利益を有する者でない第三者(利害関係を持たない第三者)は本来の債務者の意思に反して弁済することはできません。たとえば、債権者が債務者の知人・友人などから弁済を申し出られても、利害関係を持たなければ、本来の債務者の同意なしに弁済を受けることはできません。

担保権(たんぽけん)

担保権とは、債務者が債権を完全に弁済しない事態に備えて、債権者が、債権の回収を確実にするために設定するものです。先取特権・質権・抵当権・譲渡担保権など様々な種類があります。

遅延損害金(ちえんそんがいきん)

遅延損害金とは、支払いが遅れた場合に生じる損害賠償金です。約束の期日を守らなかったことに対するペナルティの意味合いがあります。
遅延損害金の利率には、「約定利率」と「法定利率」があります。当事者間で利率を合意した場合は、その利率を「約定利率」といいます。 当事者間の合意で、遅延損害金の利率を定めなかった場合は、民法などの法令に定められた「法定利率」に従って計算します。 ただし、「約定利率」には上限があります。

抵当権(ていとうけん)

抵当権とは、債権を担保するために、債務者(または物上保証人)の不動産に対して設定する担保権です。債務者(または物上保証人)はその不動産を利用し続けることができますが、債務の弁済がなされなかった場合、債権者はその不動産を売却(競売)して得られた金銭から債権を回収します。

手形(てがた)

手形とは、手形の発行者(振出人)が、手形の所持人に対して、記載された金額を、指定した期日(満期日)に指定された場所で支払うことを約束した信用証券のことです。
満期日に、手形の振出人が、記載された金額を支払えないと「手形の不渡り」が発生し、取引先や銀行から大きく信用を失うこととなります。そのため、手形の振出人は手形の債権者に対して他の債権者よりも優先的に支払いをする動機が高まります。

登記(とうき)

登記とは、権利関係などを公に明らかにするために、設けられた制度のことであり、公的な帳簿や台帳に記載します。
代表的なものとして、会社などの情報を公示する「商業登記」や、土地や建物の情報を公示する「不動産登記」があります。
登記申請は、その会社の本店所在地や不動産を管轄する法務局(支局、出張所)で行います。

倒産(とうさん)

倒産とは、企業が債務の支払不能に陥ったり、経済活動を続けることが困難になった状態を指します。「倒産」という用語には、明確な定義はありません。
似た用語として「破産」がありますが、「倒産」は「破産」を含む概念で、破産手続は倒産手続の中の一種です。

動産執行(どうさんしっこう)

動産執行とは、強制執行の一種であり、債務者の動産を差し押さえ、売却(競売)して得られた代金から債権を回収することです。動産執行の対象となる財産の例としては、現金、工場の機械、店舗の商品、宝飾品などがあります。

督促(とくそく)

督促とは、期限を過ぎても支払いをしない債務者に対して、速やかに支払うように促すことです。通常、口頭ではなく、「督促状」という書面をもって行われます。
督促の中でも、簡易裁判所に対して申し立て、債務者に対して金銭を支払う(債務を履行する)ように督促をしてもらう手続きのことを「支払督促」といいます。

な行

内容証明郵便(ないようしょうめいゆうびん)

内容証明郵便とは、日本郵便が提供している、送付した郵便物の文書の内容について証明するサービスのことです。受取人に送付する内容文書とまったく同一の文書(謄本)を、差出人と差出し郵便局で保管します。いつ、どんな内容の文書を誰から誰あてに送付したかを証明できます。請求書、督促状などの重要な書類は、内容状名郵便で送ります。
また、いつ請求したか(いつ請求の意思表示の効力が生じたか)が重要になることが多く、いつ配達したかを証明する、「配達証明付きの内容証明郵便」で送ることが一般的です。

二重差押え(にじゅうさしおさえ)

二重差押えとは、ある債権者が債務者の特定の財産を差し押えた後、他の債権者がさらに、債務者のその財産を二重に差し押えることを言います。 動産については、二重差押えは禁止されています(民事執行法125条1項)。

根抵当権(ねていとうけん)

根抵当権とは、抵当権の一種であり、継続的な取引を行う場合に設定します。限度額(極度額)を定め、この設定金額の範囲内であれば何度でも返済と借り入れができます。
通常の抵当権では、一つの債権に対して一つの抵当権が設定されますので、その債権が消滅すると、抵当権も消滅します。一方、根抵当権では、被担保債権となっている個々の債権が弁済されて消滅しても、根抵当権は消滅せず、将来発生する債権を担保するために存続します。

根保証(ねほしょう)

根保証とは、保証の一種であり、継続的な取引を行う場合に設定します。特定の債務の保証ではなく、一定の法律関係から生じる不特定の債務を保証します。根保証のうち、限度額(極度額)や期間の定めのないものを「包括根保証」といい、一定の限度額や期間の定めがあるものを「限定根保証」といいます。

納品書(のうひんしょ)

納品書とは、取引先に商品を納品したときに発行する文書です。確かに商品を引き渡したことを証明するためのものです。ただ、納品書を発行するだけですと、一方的に納品したと主張しているだけですので、控えに取引先担当者の署名・押印をもらうか、別途受領書をもらうことが望ましいです。

は行

破産(はさん)

破産とは、債務者が債務の支払不能に陥ったり(法人・個人)、債務超過になったり(法人のみ)した場合に行う裁判所上の手続きのことです。債務者の資産・負債すべての財産を清算し、得られた金銭を債権者へ平等に分配することを目的とします。

付加金(ふかきん)

付加金とは、時間外・休日・深夜労働の割増賃金などを労働者に支払わない悪質な使用者に対する一種の制裁措置のことで、労働者が裁判手続で割増賃金等を請求した場合、裁判所はその裁量によりペナルティとして、使用者が支払うべき未払金と同一金額である「付加金」の追加支払いを命じることがあります。

物上保証(ぶつじょうほしょう)

物上保証とは、実際に債務を負っている人(主債務者)以外の第三者(物上保証人)が、自分の財産を債務の担保として提供することです。物上保証人は債務を負っているわけではなく、債務を履行する義務がありませんが、提供した財産の範囲で有限の責任を負うことになります。
典型的な例としては、会社が銀行から融資を受けるために、会社の代表取締役が自分の不動産を担保に提供する場合があります。

不動産執行(ふどうさんしっこう)

不動産執行とは、強制執行の一種であり、債務者の不動産を差し押さえ、売却(競売)して得られた代金から債権を回収することです。
不動産は一般的に価値が高くそれなりの金額の回収が期待できるというメリットがありますが、一方で、不動産の査定に時間がかかったり、裁判所に払う費用が高額であるというデメリットもあります。

不良債権(ふりょうさいけん)

不良債権とは、回収が困難となった債権のことをいいます。貸出先が債務超過に陥っていたり、破産手続きをしたりしていると、回収は困難ですので、不良債権となります。

弁護士会照会(べんごしかいしょうかい)

弁護士会照会とは、弁護士法に基づき、弁護士会が、官公庁や企業などの団体に対して必要事項を調査・照会する制度です。
弁護士が、依頼者の紛争を解決しようとするとき、事実を立証するための資料を収集することは不可欠ですが、必ずしも、依頼者が必要な資料を持っているとは限りませんので、資料を持っていると考えられる官公庁や企業などの団体に対して、必要事項を照会することがあります。弁護士には、その職務の公共性から、情報収集のための手段が設けられています。

ま行

民事再生(みんじさいせい)

民事再生とは、経済的に破綻した企業や個人が、債務の一部免除および弁済猶予を受けながら、再生計画を策定し、利害関係者の利害を適切に調整しつつ、継続的に支払いながら再建を目指していく手続のことです。

民事執行(みんじしっこう)

民事執行とは、債権者の申立てによって、裁判所がお金を返済しない債務者の財産を差し押えてお金に換え(換価)、債権者に分配する(配当)などして、債権者に債権を回収させる手続です。
民事執行の一つとして「強制執行」があります。また、強制執行には「不動産執行」「動産執行」などがあります。

民事訴訟(みんじそしょう)

民事訴訟とは、個人・法人の間の法律的な紛争、特に財産権に関する紛争を、裁判官が当事者双方の言い分を聞いたり、証拠を調べたりした後に、判決をすることによって紛争の解決を図る手続です。
民事訴訟は、相手の同意がなくても一方的に訴訟を提起することができ、勝訴判決を得れば、強制的に債権を回収することができます。

民事調停(みんじちょうてい)

民事調停とは、裁判で勝ち負けを決めるのではなく、話し合いによりお互いが合意することで紛争の解決を図る手続です。調停では、裁判官1人と一般市民から選ばれた調停委員2人以上(通常は2人)からなる「調停委員会」が構成され、当時者の言い分を聞きながら、歩み寄りを促し、法律のみにとらわれず、社会の良識にかなった解決を図ります。
訴訟と比較して、手続きが簡単で費用も安く円満に早く解決できるというメリットがあります。一方、話し合いがまとまらないと、調停が無駄に終わってしまうこともあります。

民事保全(みんじほぜん)

民事保全とは、裁判で勝訴判決を得るまでの間に、債務者が価値のある財産を処分してしまうリスクを回避するために、債務者の財産を一時的に処分できないようにしたり、権利を主張する者に暫定的に一定の権能や地位を認めたりする手続きです。
たとえば、債務者から何らかの代金を支払ってもらえない場合、勝訴判決に基づいて相手の不動産を強制執行しようとしても、相手がその不動産を売却してしまうと、強制執行が困難となります。このような自体を防ぐために、仮差押えという民事保全の手続きが行われます。

や行

養育費(よういくひ)

養育費とは、子どもの監護・教育のために必要な費用をいいます。一般的には、子どもが経済的・社会的に自立するまでに要する費用を意味し、衣食住にかかる経費、教育費、医療費などが該当します。

与信管理(よしんかんり)

与信管理とは、取引において発生しうるリスク被害を抑制することです。具体的には、代金回収ができなくなるリスクをなくす、または損失金額を抑えることを指します。
取引先の情報を収集・分析することで現状や動向を予測し、取引にリスクがあると判断した場合には、取引の規模を縮小したり取引の可否を判断したりします。取引先が倒産してしまうと、債権回収は困難になりますので、通常時から、取引先の経営状況を把握し、適切な対応をしておくことが大切です。

ら行

留置権(りゅうちけん)

留置権とは、法定担保物件の一つで、他人の物の占有者が、その物に関して生じた債権を有する場合に、その弁済を受けるまではその物を自分の下に留めておくことができる権利です。
たとえば、典型例としては、顧客が時計の修理代金を支払うまで、時計職人は時計を引き渡さないといったケースがあります。

連鎖倒産(れんさとうさん)

連鎖倒産とは、ある企業が倒産した場合に、その企業と関連する他の企業も経営が困難となり倒産してしまう現象です。
ある企業が倒産すると、その企業に商品を販売していた企業は売上が減少し、他に販路がなければ倒産状態に陥ることもあります。またその企業から商品を仕入れていた企業が仕入れができなくなり製造販売ができず、経営が厳しくなることもあります。

連帯債務(れんたいさいむ)

連帯債務とは、一つの債務について、複数の債務者がそれぞれ独立に債務の全てを負担し、そのうちの一人が弁済すれば、他の債務者も債務を免れる関係をいいます。たとえば、200万円の借入に対して連帯して2人が債務を負担している場合、それぞれが200万円の債務を負担しており、債権者は2人のどちらにも200万円の返済を要求することができます。

連帯保証人(れんたいほしょうにん)

連帯保証人とは、債務者が債務を返済しない場合に、債務者と連帯して全額を返済することを約束した保証人のことをいいます。通常の保証人とは異なり、連帯保証人には「催告の抗弁」、「検索の抗弁」、「分別の利益」がありません。催告の抗弁がないため、債権者はまず債務者から回収する必要はなく、最初から連帯保証人に対して請求することができます。

わ行

和解(わかい)

和解とは、トラブルや紛争において、お互いに譲り合い、自主的に解決することを言います。
和解には「裁判上の和解」と「裁判外の和解」とがあります。「裁判上の和解」では、裁判手続きの中で和解が行われ、和解調書が作成されます。和解調書は確定判決と同一の効力を有しますので、この和解調書に基づいて強制執行を行うことも可能です。一方、「裁判外の和解」では、裁判所が絡まないため、強制力はなく、和解内容の履行を求めるときには訴訟手続きを行う必要があります。

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