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取引先の倒産、破産

取引先が倒産したらどのような対応をすれば良いか

「取引先に商品を販売したのに、代金を支払ってもらえないまま取引先が倒産してしまった。売掛金は回収できるだろうか……」
これは、多くの企業が経験する問題です。

取引先の倒産手続が開始されてしまったら、債権を回収するにはどのような方法があるのでしょうか?

ここでは、売掛金のうち、典型的で、とりわけ法律事務所への相談事例が多い「商品売買代金」の回収について説明します。

また同じく倒産と言っても、実務における倒産は「破産」が大部分で、「会社更生」は非常に少ないので、この記事では破産と民事再生を念頭に説明します。

1.取引先が倒産した場合の売掛金請求

(1) 個別の請求は原則不可

すでに破産手続き、民事再生手続きの開始決定が下されている場合、債権者間の平等を確保するため、個別の請求は許されないことが原則です(破産法100条1項、民事再生法85条1項)。

このため、売掛金は、裁判所に債権届出をすることにより、破産債権、再生債権として、破産手続・民事再生手続の中でのみ支払いを受けることができます。

破産では債権額に応じた配当金を受け取り、民事再生では再生計画に従い減額のうえ分割弁済を受け取ります。

いずれも通常は満額の回収は難しく、特に破産の場合、配当率は債権額の数パーセント程度にしかならない場合が多く、事実上回収は困難なことが珍しくありません。

では、このような結果を回避する方法はないのでしょうか?

(2) 商品の引き揚げもできない

いかに自分が売った商品であっても、売買によってその商品が買主に引き渡された後は、その占有は買主に帰属していますので、無断で引き揚げる行為は他人の占有を侵害する行為として窃盗罪に該当します(※最高裁平成元年7月7日決定)。

無断引き揚げを目的として、他人の店舗や倉庫に立ち入れば建造物侵入罪に該当します。

これは、その商品に対する、後述する動産売買先取特権、所有権留保、譲渡担保権といった優先権がある場合でも全く同じです。たとえ、その財物に対する法的な権利を有している場合でも、法治国家である日本では、自力救済は禁止されているからです。

したがって、商品からの優先弁済権がある場合でも、破産管財人・再生債務者の承諾なく、商品を引き揚げることはできないと心得てください。

よって、以下で説明する担保権を主張して債権を回収する場合でも、きちんとした手続きを踏む必要があります。

(3) 担保権と別除権について

およそ担保は債務の不払いに備えるためのものですから、倒産時にこそ尊重されなくてはなりません。

そこで、破産でも民事再生でも、債権者が担保権を有していれば、担保目的物を換価するなどして売掛金を回収することが認められます。

[参考記事] 物的担保をわかりやすく解説|債権回収で有用な理由

3.担保権を主張する

(1) 動産売買先取特権

売掛金回収のためにまず検討するべきは、別除権の行使が可能か否かであり、一番に考えるのが、この「動産売買先取特権」です。

動産売買先取特権は、「別除権」が認められる担保権のひとつで、売主が買主に対して、動産である商品を販売した場合に、その代金と利息について当該商品から他の債権者に優先して弁済を受けることができる権利です(民法311条5号、321条)。

[参考記事] 動産売買先取特権についてわかりやすく解説

売買によって商品の所有権が買主に移転しており(民法176条)、それにもかかわらず売主が他の債権者と同一の立場でしか弁済を受けられないとすると、かえって不公平なため、その商品から得る弁済については優先権を認めているのです。

このように動産売買先取特権は、動産である商品の売主であることから法律上当然に認められる担保権(これを「法定担保権」と呼びます)なので、買主との間で売主の優先権を認める契約がなされていなくとも売主に権利が認められます。

合意による設定が不要な動産売買先取特権は、もっとも有効な債権保全方法と言うことができます。

【動産売買先取特権の実行方法】
動産売買先取特権を行使して実際に優先弁済を受けるには、①裁判所に対する競売の申立(民事執行法190条)、②物上代位(民法304条)という2つの方法があります。
競売の申立は、例えば、裁判所に「担保権の存在を証明する文書」、すなわち売買基本契約書、発注書、納品書、受領証、請求書などを提出して競売開始の許可を受けます。
物上代位とは、買主である債務者が、当該商品を売却や賃貸することで得る代金や賃料、当該商品が毀損された補償として得る損害賠償金など、その商品の交換価値が現実化した金銭に対して、担保権を行使できる制度のことです。
例えば、買主Aが、売主Bから購入した商品を第三者Cに売却してしまった場合、商品の所有権はCに移転してしまっているので、Bは商品を競売にかけることはできませんが、CからAへの代金が未払いであれば、AのCに対する代金債権を差し押さえて、そこから優先的に弁済を受けることができます。

(2) 所有権留保

法律で当然認められる動産売買先取特権に対し、商品売買契約に際し、買主と売主の合意で設定される例が多い担保権が、所有権留保と譲渡担保(後述)です。

所有権留保とは、買主と売主が「代金支払いを終えるまでは、商品の所有権は売主にある」と合意しておくことです。

当事者としては、代金が支払われなかった場合、所有者である売主が商品を回収できるようにしておくことで、代金債権の担保とすることに狙いがあります。

このため法的には、所有権留保は、あくまでも「担保」であって、代金の一部が支払われなかった場合、売主は商品を丸取りできるのではなく、商品価値から未払債務額を差し引いた剰余額は、買主に返還して清算する義務があると理解されています。

担保である以上、売主は破産手続・民事再生手続とは別に、担保権を行使して優先弁済を受ける別除権を有することが認められます(※民事再生に関する最高裁平成22年6月4日判決もこれを認めています。ただし、同判例は、所有権留保を主張するには対抗要件が必要であることから、これを欠く者の別除権を否定していることに注意してください)

そこで、所有権留保の合意がある場合、破産管財人・再生債務者の同意を得たうえで、商品を引き上げ、換価して代金を弁済に充てることができます。

(3) 譲渡担保権

譲渡担保とは、債務者の所有する物の所有権を、債権担保の目的で債権者に移転する合意のことです。

形式的には所有権の移転ですが、その実質は担保ですので、債務が弁済されなかった場合でもやはり債権者には清算して剰余を債務者に戻さなくてはならない義務があると理解されています(※最高裁昭和46年3月25日判決)。

譲渡担保においても、担保としての優先弁済を受ける別除権が認められます。

[参考記事] 債権回収と担保権|集合動産譲渡担保権と動産売買先取特権の優劣

(4) 相殺権

相殺とは、相互に同種の債務を負担する者が、対立する債権債務を対当額で消滅させる意思表示です(民法505条1項)。

売主が買主に対して100万円の売掛金債権を有すると同時に、その買主から別の商品を購入した50万円の買掛金債務があったとしましょう。

売主が自己の100万円の代金債権と買主に対する50万円の買掛金債務を50万円の範囲で清算して消滅させることができれば、当事者の公平を実現し、簡易迅速な決済が可能となるだけでなく、少なくとも50万円の範囲では売主の代金債権は確実な担保をとっているのと同じです。

破産手続・民事再生手続では、担保権における別除権と類似するものとして、それぞれ一定の条件のもとで、相殺する権利が認められています(破産法67条以下、民事再生法92条以下)。

[参考記事] 民法の「相殺」とは?相殺の要件・効果と相殺できない債権

4.契約の解除はできる?

商品の売買契約を結び、代金は受け取っていないものの、売主である当方も商品の全部または一部を引き渡していないという場合、手続開始後に契約を解除して、商品を他の取引先に売却することで売掛金を回収することはできるでしょうか?

売買契約の商品引渡義務と代金支払義務のように、当事者双方の義務が対価的な関係に立つ契約を双務契約と呼び、双方が契約上の債務を履行していない場合を「双方未履行双務契約」と言います。

双方未履行双務契約を①解除するか、それとも②契約を継続して履行を求めるかは、破産手続きでは破産管財人に、民事再生手続きでは再生債務者等に選択権が与えられており、手続開始後には、売主側から解除することはできません(破産法53条1項、民事再生法49条1項)。

破産管財人・再生債務者等が解除を選択した場合、商品の一部が買主側に残っていれば、売主は、その引き渡しを請求することが認められています(破産法54条2項、民事再生法49条5項)から、これを他に売却して代金を得ることは可能です。

ただし、契約が解除されたことに伴い損害が発生しても、損害賠償債権には優先権はなく、破産債権・再生債権として、各手続きの中で配当金、分割弁済を受けることになります(破産法54条1項、民事再生法49条5項)。

他方、破産管財人・再生債務者等が契約の継続と履行を選択した場合は、もちろん売主は残りの商品を引き渡さなくてはなりませんが、その代わりに、売買代金債権は、破産では財団債権、民事再生では共益債権として、優先的に弁済を受けることが認められています(破産法148条1項7号、民事再生法49条4号)。

破産管財人・再生債務者がどちらにするかを決めてくれない場合、売主は、破産管財人・再生債務者等に対して、相当な期間を定めて、解除または履行の選択をするよう催告することができ、期間内に回答がないときは、破産においては解除とみなされ(破産法53条2項)、民事再生では解除権の放棄とみなされます(民事再生法49条2項)。

なお、売主が商品を引き渡し済みであるにもかかわらず、一方的に買主の代金支払義務が債務不履行となっており、その後、破産・民事再生手続が開始されたという場合は、売主からの解除が許されます。

しかし、解除権を行使しても、その効果としての原状回復請求権や損害賠償請求権には優先権はなく、破産債権・再生債権となってしまいますから、解除するメリットはなく、逆に売買契約の解除によって、動産売買先取特権を含む担保権も消滅してしまうデメリットがあります。ですから安易な契約解除は、原則としてお勧めできません。

5.民事再生における「許可弁済」制度

なお、民事再生法では、裁判所が認可した再生計画に基づいた分割弁済が原則ですが、その例外のひとつとして、再生計画確定前でも裁判所が特定の債権者に対する弁済を許可できる場合が認められています。これを許可弁済と呼びます。

(1) 中小企業に対する許可弁済

再生債務者を主要な取引先とする中小企業者が、弁済を受けなければ事業の継続に著しい支障を来すおそれがある場合、取引状況・再生債務者の資産状態・利害関係人の利害その他一切の事情を考慮して、裁判所は、再生計画認可の決定が確定する前でも、再生債務者等の申立てにより又は職権で、その全部又は一部の弁済を許可できます(民事再生法85条2項)。

これは民事再生申立による中小企業の連鎖倒産を防ぐための制度です。

(2) 少額債権の許可弁済

①少額の再生債権の早期弁済で再生手続を円滑な進行が可能となるとき、又は、②少額の再生債権を早期に弁済しないと再生債務者の事業継続に著しい支障を来すときは、裁判所は、再生計画認可の決定が確定する前でも、再生債務者等の申立てにより、その弁済を許可できます(民事再生法85条5項)。

①は多数の少額債権者が存在するときにその頭数を減らして手続をスピードアップすること、②は債務者の事業を継続していくために不可欠が取引先を維持することを目的とした制度です。

6.各法違反の売掛金回収は無効

上に述べた各方法が、破産手続、民事再生手続における商品売買代金の主な回収方法です。
これらに当てはまらない債権回収は手続外の権利行使を禁止した法(破産法100条1項、民事再生法85条1項)に違反し無効となります。

相手が倒産の手続を開始した場合には、有効な回収方法に関する法的知識は不可欠なのです。

売掛金の回収には、倒産法制や債権回収に詳しい弁護士のアドバイスを求めることをお勧めします。

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