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債権回収先が自己破産したら債権者は泣き寝入りするしかない?

「離婚した元配偶者が慰謝料・財産分与・養育費等を支払わない」「家賃を数か月以上滞納している賃借人」がいる、という場合に、当該債務者から自己破産に関する通知が届いたら、債権を満足に回収できる可能性は低くなってしまいます。

しかし、債権の全額を諦める必要はありません。正しい対応をすれば多少なりとも債権を回収できる可能性があります。

今回は、自己破産者からの債権回収について解説します。

1.債務者が自己破産することによる影響

債務者が自己破産を申し立ててしまった場合、債権者には具体的にどのような影響があるのでしょうか?

(1) 借金の支払義務が免除される

まず、自己破産とは、債務者が裁判所に申立てを行うことにより、一部例外を除き、抱えている全ての借金の支払義務を免除してもらう手続きです。
多重債務者の救済を図るための手続きであり、これ以上借金を返済できない状況の債務者の多くが利用しています。

すなわち、債務者は自己破産が認められた(免責が確定した)時点で返済義務を免れることになりますので、これまでのように督促・取り立てなどをしても無意味になるということです。

もっとも、全ての債務が免除されるわけではありません。

以下のような債権は、債務免除を認めると、社会正義に反する結果となることや、不平等な結果が導かれてしまうことを考慮し、自己破産をしても免除されない借金とされています。このような債権を「非免責債権」と言います(破産法の253条第1項)。

  • 租税などの請求権(税金、年金、国民健康保険、介護保険など)
  • 破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権
  • 破産者が故意または重過失により加えた人の生命または身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権
  • 養育費や婚姻費用分担義務に基づいた請求権
  • 雇用関係に基づいて生じた従業員の給料債権など
  • 破産者が知りながら債権者名簿に記載しなかった請求権
  • 罰金などの請求権

例えば、交通事故の慰謝料が確定しておりまだ支払っていない場合、悪質性の高いもの(飲酒運転や無免許運転)に起因している場合は免除されることはありません。
他人の物を盗んだり、横領したりした場合も、悪意で加えた不法行為とされ、損害賠償請求が免除されることがないのが通常です。

一方、価値観の違いによる離婚に伴う慰謝料は、原則として免除されてしまいます。これは積極的に妻を害する意思はなく、悪質性の高いものと言えないからです。
しかし、DVを原因とする慰謝料の場合は悪質性が認められ、免除されない可能性高いです。

ご自身の債権が非免責債権にあたるのかどうか、難しい判断が必要な場合もございますので、わからない場合は弁護士に確認してください。

(2) 破産者の財産処分で一部回収は可能

自己破産により債務者は借金免除という利益を享受しますが、他方で債権者は多大なる被害を被ることになります。債権の額が大きければ大きいほど損害は大きくなるでしょう。

しかし破産法は、債権者にとっての不公平を放置するわけではなく、破産者に財産がある場合は、債権者に平等に分配することで公平を保とうとしています。

例えば、破産する債務者の資産に家や車、一定額以上の現金・預金がある場合には、当該債務者の債権者全てに(債権額に応じて)平等に分配されます。

ただし、破産者が個人の場合は、手持ち資産が少ないケースも多く、特に大きな配当は得られないと考えるべきです。

なお、配当以外にも債権を回収する方法はあります。
例えば、賃貸借契約であれば保証会社・保証人をつけているはずです。家賃の滞納などがある場合や、債務者が自己破産を申し立てた場合には、保証人に請求することができます。

[参考記事] 連帯保証人に対する債権回収(請求)方法

もっとも、金額が大きい場合には保証人でも支払えない可能性があり、この場合は保証人も債務整理をする可能性があるので、注意が必要です。

2.債権者が自己破産を止めることはできる?

自己破産をされてしまうと回収額が大幅に下がってしまうため、なんとかして自己破産を止めたいと考える債権者も多いでしょう。
債権者が自己破産を止めることはできるのでしょうか?

(1) 債権者による自己破産の異議申し立て

自己破産について、債務者を説得してやめてもらうことはほぼ不可能ですので、裁判所手続きにてアプローチを図ることになります。

破産手続きでは、債権者による異議申立て手続きが用意されていますので、これを利用することはできるでしょう。

破産手続開始決定後には、債権者が破産者の免責許可決定の当否に対し異議を述べる機会が与えられます。
(免責とは、簡単に言うと借金を0にすることです。)

異議として、免責決定を与えることが相当でない理由(免責不許可事由があること)を述べることで、自己破産が認められない可能性が出てきます。

裁判所や破産管財人は債権者の異議の理由を調査し、悪質な免責不許可事由に該当する具体的な理由があると判断された場合には、自己破産が認められなくなります。

しかし、総合的な視点からみると、異議申し立てに大きなメリットはないかもしれません。

と言うのも、免責不許可の判断が下りるのは、一般的に全体の申立ての2~3%に過ぎないといわれています。
実際に免責不許可事由にあたる事実があったとしても、裁判官は裁量による免責をすることができます。

ギャンブルや浪費などによる借金という免責不許可事由にあたるケースでも、債務者が真摯に反省し破産手続きに協力することで、裁量免責が認められているのが実情です。

実際に免責不許可事由に当たり免責不許可決定がされるのは、財産隠しや虚偽の申告を繰り返している、破産手続き開始後も反省せずギャンブルなどの浪費を続けているなど、特に悪質なケースのみでしょう。

反対に、上記のような行動が債務者に見られる場合には、積極的に異議申立てをする意味があります。

(2) 債務者を訴える

自己破産をストップすることはできませんが、債権者が債務者を訴えるという方法もあります。

自己破産手続きの開始決定が行われ、免責許可が出てしまった後に訴えを起こしても、債務者の返済義務は免除されているため、意味のない訴えとなってしまいます。

しかし、まだ自己破産手続開始決定前の段階である場合には、訴えを起こし強制執行をすることも可能です。

自己破産の準備には時間がかかることもあります。申し立て前の段階でなんらかの異変を察知した場合であれば、先に訴えを起こすことで強制執行をして回収を図ることも可能でしょう。

もっとも、強制執行をしても債務者に財産がない場合には、回収を図るのは現実問題として難しいといえます。また、差押えができたとしても、自己破産手続き開始決定によって差押えが解除されてしまいますので、開始決定までに時間がある場合のみ利用可能な方法です。

3.正当な配当を得るために気をつけるべきこと

最後に、債権者が正当な配当を受け取るために気をつけるべきポイントをご説明します。

(1) 破産債権届出書を提出する

まず、債務者から自己破産の通知が届いたら、管財事件かどうかを確認しましょう。

自己破産には、同時廃止事件と管財事件の2種類がありますが、管財事件の場合には配当を受けられる可能性があります。

その上で、配当を受けるために、必ず「破産債権届出書」や他の必要書類を提出しましょう。これをしないと、配当を受けられない可能性があります。

[参考記事] 破産債権届出書とは|書き方やメリット

(2) 手続き前に債務者から不当に財産を受け取らない

債務者が自己破産の直前や支払い不能になった後に、特定の債権者だけに返済を行なったり、財産を与えたりしてしまうと、これは詐害行為や偏頗弁済(免責不許可事由)となります。

自己破産には「債権者平等の原則」があり、全ての債権者を平等に扱うことになっています。
しかし、上記のような偏頗弁済(特定の債権者だけが得をするように弁済したり、担保を提供したりする行為)が行われると、債務者の財産が減ってしまい、他の債権者が満足な弁済を受けられません。

よって、偏頗弁済を受けた債権者は、当該財産を破産管財人に取り返されてしまう可能性があります。
(破産管財人が行為を取り消す権利を「否認権(ひにんけん)」と言い、その権利を使うことを「否認権の行使」と呼びます。)

すなわち、債務者から無料で資産を受け取っていた場合には資産価値の金額を、通常の売却金額から明らかに安く売却された場合にはその差額分を回収されます。返済を受けていた場合なら、受け取った返済金を回収されるでしょう。

「自分だけ先に返済をしてもらおう」と思っても無意味なものになってしまうので、手続き前に債務者から返済を受けたり、財産を受け取ったりすることはないように注意が必要です。

4.債権回収はお早めに弁護士に相談を

債務者の返済が滞っている場合には、弁護士に相談して早めに債権回収を図りましょう。弁護士が間に入ることで回収可能性は高まります。

また債務者から自己破産の通知が届いた場合でも、債権の全額を諦める必要はありません。債務者に資産がある場合は、きちんと対応をすれば、多少なりとも債権を回収できる可能性があります。

債権回収についてお困りの方、お悩みがある方は、一度弁護士にご相談してみることをお勧めします。

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