会社の資金繰りが苦しい!赤字経営を立て直すには?
会社を立ち上げ間もない段階では、設備投資・広告投資の先行により赤字経営となる場合があります。
また、思うように売り上げが上がらず、意図しない形で赤字経営に転落してしまうケースもあるかもしれません。
赤字経営の会社は、金融機関や投資家からの信用を得にくく、将来的な倒産のリスクを負っている状態です。
もし長年赤字経営から脱却できていない場合には、早めに弁護士へご相談のうえ、債務整理をご検討ください。
今回は、赤字経営の問題点や、事業立て直しの手段としての債務整理について解説します。
1.赤字経営の問題点
毎年の決算が赤字であったとしても、直ちに会社の存続が危ういというわけではありません。
むしろ経営戦略上、意図的に赤字を作り出した方がよい場合もあり、一概に赤字経営だからダメとは言えないのです。
しかし、長期間にわたって赤字経営を続けることには、以下のようなデメリットがあります。
会社としては、黒字化までのロードマップを明確に策定して、できる限り早期に黒字化を目指すことが望ましいでしょう。
(1) 銀行などから融資を受けにくくなる
赤字経営の会社は、黒字経営の会社よりも、財務基盤が脆弱であると評価されやすい傾向にあります。
そのため、金融機関の融資審査において、赤字経営であることは不利に考慮されてしまう可能性が高いです。
赤字経営の会社は、事業の運転資金を金融機関から借り入れようとする際、「必要な金額が借りられない」「借りられたとしても、金利が高くなってしまう」といったデメリットを被るおそれがあることに注意しましょう。
(2) 株主に対する印象が良くない
赤字経営が続いていると、既存の株主に対して配当を行うことができません。
投下資本回収の機会がなかなか訪れないことについて、既存の株主が不満を漏らすことも考えられます。
既存の株主が(非上場の)会社に見切りをつけた場合、第三者への株式譲渡を試みることも想定されます。
この場合、会社は株式譲渡を承認するか、さもなければ株式を買い取ることが義務付けられます(会社法140条1項)。
既存の株主からこのようなアクションを起こされてしまうと、会社にとって困難な状況を生じかねません。
既存株主から見た会社の印象を悪化させないためにも、長期間にわたって赤字経営を続けることは望ましくないでしょう。
(3) 新規出資も呼び込みにくくなる
ずっと赤字経営が続いている会社は、新規の投資家候補からも「本当に黒字化は可能なのか?」と懐疑的な目で見られてしまうかもしれません。
その結果、新規出資を呼び込むのがだんだん難しくなるでしょう。
(4) 資金調達が途絶えると倒産状態に陥る
新規出資を呼び込めない、さらに決算は赤字となると、運転資金の確保は借り入れによって確保するしかなくなります。
そうなると、完全に自転車操業状態となり、倒産の危機がいよいよ現実的な問題として迫ってきます。
借入額が増えてくると、いずれは与信の上限に達して、新規の借入を受けられなくなるでしょう。
また、既存の借金の返済負担もどんどん重くなり、会社の資金繰りは窮してしまいます。
このように、会社の資金繰りが窮地に陥る前に、赤字経営の状態を改善することが求められます。
2.赤字経営から脱却する手段
赤字経営の状態を解消し黒字化転換を目指すには、収入を増やすか、コストをカットするかのいずれか(または両方)が必要となります。
(1) 収益性の高い事業を生み出す
高収益事業を新たに生み出すことができれば、黒字化は間近でしょう。
もちろんそれができれば望ましいですが、慢性的な赤字経営に悩む会社では、なかなか新規事業がヒットしない状況に陥っているケースが多いかと思います。
また、新規事業の立ち上げには、一般的に初期投資が必要なため、赤字経営の会社ではその余裕がないかもしれません。
もし新規事業開発が難しい場合には、コストカットの方に目を向ける必要があります。
(2) 固定費を中心にコストを削減する
会社の財務状況を圧迫するのは、高額な固定費であるケースが多いです。
たとえば人件費やテナント賃料などは、固定費の中でも特に高額となり、会社経営を圧迫する傾向にあります。
人件費については、希望退職者の募集や転職あっせんなどにより、中長期的に圧縮できる可能性があります。
またテナント賃料については、賃料水準の安い地域にオフィス・店舗を移転したり、専有面積を減らしたりすることが、コストカットに繋がるでしょう。
他にも、無駄な固定費がないかを徹底的にチェックして、コストカットに努めましょう。
(3) 業務を効率化する
会社の業務を効率化することができれば、収益性アップ・コストカットの両面でプラスに働きます。
たとえば、マニュアルを見直して業務にかかる工数を削減したり、機械化によって人件費を削減したりすることが考えられます。
業務改善チームを組織するなり、経営者が直接監修して業務改善に取り組むなりして、赤字経営からの脱却を図りましょう。
3.赤字経営が深刻化したら債務整理の検討を
債務不履行が発生するなど、赤字経営が深刻な状態に陥ってしまうと、自力での経営改善は困難となります。
その場合は、弁護士にご相談のうえ、債務整理をご検討ください。
債務整理は、債務負担に苦しむ会社が利用できる、債務軽減のための手続きです。
法人の債務整理手続きとしては、主に以下のものが挙げられます。
(1) 私的整理
「私的整理」は、債権者と直接交渉して、債務カットや支払いスケジュールの変更を認めてもらう手続きです。
債権者も「会社が破産して回収不能になるよりは良い」と考えて、私的整理に応じてくれる場合があります。
私的整理は、比較的短期間で、かつ柔軟な形で債務負担を軽減できる点が大きなメリットです。
私的整理の対象とする債務は会社が選べるので、特定の取引先に迷惑をかけることを避けたり、経営者保証の対象となっている債務を除外したりすることもできます。
(2) 事業再生ADR
「事業再生ADR」は、私的整理の一種ではあるものの、第三者機関が定める手続きに従い、多くの債権者が参加して行われるのが特徴です。
第三者機関の監督により、公正・中立性を確保しながら、私的整理に準じた柔軟な債務負担の軽減を実現できる可能性があります。
ただし、手続き費用がかなり高額になる点がデメリットです。
事業再生ADRについては、以下の記事で詳しく解説しているので、併せてご参照ください。
[参考記事] 事業再生ADRとは?利用要件・メリット・デメリット・活用事例(3) 再建型の倒産
裁判所で行われる債務整理手続きのうち、組織などを消滅させず、法人を存続させて営業を継続しながら負債を弁済していくタイプのものです。会社更生手続き、民事再生手続き等があります。
法人の財務状況がそれほど悪化していない場合や、特別な技術・ノウハウがあるなどの事情で再建の見込みがある場合などは、再建型の倒産で借金の解決を図ることがあります。
[参考記事] 再建型の倒産の種類|民事再生・会社更生(4) 法人破産
会社の財産をすべて処分して債権者に配当し、最終的に会社を清算する手続きです。
このまま会社を続けても、再建の見込みがないと判断される場合には、法人破産を選択すべきと言えます。
会社が法人破産によって消滅しても、旧経営陣は、自ら新たに事業を起こしたり、他の会社の取締役に就任したりすることは可能です。
そのため、今の会社に将来性がないと思われる場合には、思い切って法人破産を選択することも有力でしょう。
ただし、会社の債務を経営者が連帯保証している場合、法人破産に伴って、会社債権者から連帯保証債務の履行を求められることになります。
そうなると、経営者も連鎖的に破産に追い込まれる可能性が高いので、注意が必要です。
[参考記事] 会社が破産したら連帯保証人は要注意!代表者が負う法律上の義務4.法人の債務整理は弁護士にご相談を
赤字経営が深刻化し、債務整理が必要となった場合には、弁護士にご相談いただくことをお勧めいたします。
各債務整理手続きにはそれぞれメリット・デメリットがあり、会社の状況に合わせた適切な手続きを選択することが大切です。
弁護士にご相談いただければ、丁寧なヒアリングを行ったうえで、会社や経営者にとってベストと思われる選択肢をご提案いたします。
また、債務整理に必要な債権者との交渉や裁判手続きなどについても、弁護士が一括して代理いたします。
会社の経営状態が思わしくなく、債務整理の可能性を検討したい経営者の方は、お早めに泉総合法律事務所の弁護士までご相談ください。