法人破産について弁護士に相談するメリット
会社の経営が思わしくなく、再建の見通しがない状態になった場合は、倒産を検討すべきでしょう。
法人の倒産のうち、多くを占めるのが「破産」です。
ご自身の会社を破産させるのは辛いものです。つい決断を先送りにしてしまう人も多いでしょう。
しかし、いつまでも二の足を踏んでいるわけにはいきません。時間が経つうちにますます経営が悪化して、破産すらできない状態に陥る可能性も0ではないのです。
法人破産は弁護士に依頼して行うケースがほとんどです。
弁護士に依頼すると、一体どういったメリットを得られるのでしょうか?また、どういったタイミングで破産のことを弁護士に相談するべきなのでしょうか?
1.法人破産を弁護士に依頼するメリット
早速ですが、弁護士に法人破産の手続きを依頼したときに受けられるメリットについて説明します。
(1) 難しい手続きをサポートしてもらえる
法人破産の手続きは、個人の破産よりも複雑です。
「売掛金」「買掛金」などの債権・債務がありますし、契約関係も個人の貸金契約などより遥かに複雑なことが多いからです。
また、裁判所に提出しなければならない書類も多いです。個人の破産には必要のない「商業登記簿謄本」など、数々の書類を集めなければなりません。
たとえ個人の破産であっても、大半は弁護士に依頼して手続きを代理してもらっているのが実情です。いくつかの裁判所では、弁護士がいることを前提として、個人の破産を処理する運用が行われているくらいです。
ましてや法人の破産となると、弁護士に依頼せず自力で行うことは、ほぼ不可能と言っても過言ではありません。
破産の申立てに手間取っている間に利息や遅延損害金などで債務が膨らんでしまい、状況が悪化してしまうでしょう。
よって、難しい部分は弁護士に任せてしまうのが、無難かつ最善の方法と言えます。
(2) 失敗のリスクが減る
法人破産で裁判所に提出する書類の中には、裁判所が用意した書式に従って、自分で記入しなければならない書類も数多く存在します。
書き方がわからない方も多いですし、そもそも書き込むための情報を集める方法さえ見当がつかない方もいるでしょう。
「裁判所に聞けば問題ないのでは?」と思う人がいるかもしれません。
しかし、裁判所に行ったり問い合わせたりするのも、手間と時間がかかります。法的知識の少ない人の場合、問い合わせて話を聞いても、まだ難しく感じることが多いでしょう。
手間と時間をかけた結果、書類の不備などで手続きに失敗してしまうこともあります。それでは状況を改善できません。
弁護士に依頼して、確実に法人破産できるようにするのがお勧めです。
(3) 費用が逆に安く済むこともある
「弁護士に依頼すると費用がかかる」と思って、弁護士への依頼をためらう人もいるでしょう。
確かに弁護士への支払いが発生するのは事実ですが、実は、弁護士依頼により破産費用がトータルで安くなることもあります。
まず、裁判所に納める費用が安くなる可能性があります。
例えば東京地裁では、通常は法人破産の際に少なくとも70万円以上を裁判所に納付しなければなりません。
しかし弁護士がいるときに限り、「少額管財」という、納付額が20万円〜で済む制度が適用されることがあります。約50万円も節約できるため、非常にメリットが大きい制度です。
また、弁護士がいることで、早く破産手続が始まる可能性が高くなります。早く破産手続を始められれば、その分早く会社をたたんで経営難から開放されます。
さらに、法人の代表者が個人で法人の連帯保証人になっている場合も、費用が安くなることがあります。
法人が破産すると、代表者も連鎖的に破産しなければならないケースが多いです。
このとき法人と個人の破産をまとめて依頼すると、費用を少し安くしてくれる弁護士事務所があります(個人の破産の調査や手続きの手間が簡略化できるため)。
(4) 受任通知で督促が止まる
破産の準備には数ヶ月単位の時間が必要です。その間も債権者からの督促が続きます。
しかし、弁護士に依頼することで、債権者への支払いをしなくて済むようになります。
依頼を受けた弁護士が債権者へ「受任通知」という書類を送ると、以後貸金業者等の債権者は弁護士を通さなければ債務者に連絡できなくなるからです。
当然督促も止まり、当面は支払いをする必要もなくなります。返済しながら破産の準備をしなくても済むため、精神的にも経済的にも負担を小さくすることができます。
なお、法人破産の場合、受任通知による口座凍結のデメリットが大きく、また、取引先や従業員の混乱が起きる可能性があるため、受任通知を送付せずに破産申立を行うケースもあります。
2.法人破産を検討すべきタイミング
弁護士に依頼するメリットが分かったところで、問題はどういったときに法人破産の決断をし、弁護士に相談するべきか、ということです。
以下、弁護士へ相談するタイミングの目安を説明します。
(1) 黒字を見込めない
まずは「黒字化の目処が立たない」ときが挙げられます。
借金を解決するには、破産の他に「民事再生」や「任意整理」などの方法があります。
しかし、これらは「借金の支払額を減額して、支払いスケジュールを再設定する」方法です。黒字を見込めない状態では、借金を減額されても返済は難しいでしょう。
返済の見込みがなければ、民事再生を裁判所に認めてもらえません。債権者と任意整理の交渉がまとまる可能性も薄いです。
だからと言って何もしなければ、利息や遅延損害金で債務総額が増えていくだけです。それでは会社を再建する道が遠ざかっていくばかりになります。
黒字を見込めない以上、法人を破産させて借金を0にした方が、傷の浅い状態で撤退ができます。再度資金を集めれば、将来また起業できるかもしれません。
(2) 資金繰りの見通しを立てられない
経営をしていると、現在はまだ黒字でも、「数ヶ月先には入金の見込みがなくなる」などと予測ができることがあります。
あるいは「数ヶ月先に必要な支払いをするためのキャッシュが用意できない」などの状態になることもあるでしょう。これは借金の返済だけでなく、例えば「数ヶ月先には従業員への給料が支払えなくなる」「遅配しそう」などのケースも含まれます。
こういった状態になった場合、多くの経営者は無理にでも仕事を増やしてお金を生み出そうとします。割に合わない仕事を請け負うこともあるでしょう。
それ以外に、何とか資金を集めようと、消費者金融を駆け回る経営者も散見されます。
しかし割に合わない仕事をしたり、高金利で借り入れをしたりすると、すぐに自転車操業状態となってしまいます。
そして、あっさりと「従業員に払うお金がない!」「取引先にお金を払えない!」という事態に陥ってしまいます。従業員や取引先に大きな混乱が生じ、迷惑がかかるでしょう。
資金繰りが厳しくなった段階で弁護士に相談した方が、問題を小さく抑えることができます。
(3) 破産の費用がある
法人の破産には、ある程度まとまったお金が必要です。
債務総額や契約関係の複雑さなどで左右されますが、弁護士費用の相場は50万円から60万円です。
一方、裁判所に納める費用は、裁判所にもよりますが、最低50~70万円以上です。少額管財が採用されている裁判所でも、最低20万円かかります。
これに加えて、代表者個人が連帯債務で破産する場合は、その費用も上乗せされます。
分割払いを認めてくれる弁護士や裁判所もありますが、100万円以上の資金がないと法人破産ができない可能性が出てきます。
資金が底をついて泥沼状態になる前に、弁護士に相談して事態の打開を図ることを強くおすすめします。
[参考記事] 法人破産の費用が払えない・お金がない場合の対処法3.法人破産の相談は早めが肝心!
「全てを尽くして経営ができなくなったら破産すればいい」と考えている方もいるようです。
しかし破産を検討すべきタイミングは、実は一般にイメージされているよりもずっと早く訪れています。
反対に、早めのタイミングで弁護士に相談するだけで、破産以外の解決方法が見つかって、会社を立て直せるケースもあります。
泉総合法律事務所は、経営難に苦しんでいる企業様からのご相談を、これまで数多く承ってまいりました。
破産に至ったケースでも、破産費用が残っていたためスムーズに手続きが進んだことがある一方で、破産費用の捻出に大変な苦労が必要だった事例もあります。
会社を再建するにしろ、破産をするにしろ、早めの相談は大切です。少しでも今後の経営に不安を感じたら、ぜひ泉総合法律事務所までお声がけください。