法人の場合、取引先が多岐に渡るケースが多いです。法人が支払いの滞納を続けていると、複数の取引先から毎日のように取り立て・督促を受け、精神的にも辛い思いをすることでしょう。
このような債権者からの取り立て・督促は、弁護士に法人破産を依頼することでストップします。
ここでは、取り立て・督促を止める「受任通知」について解説します。
1.受任通知の効果
「受任通知」とは、会社破産などの債務整理を受任した弁護士等の専門家が、借金の借入先(=貸金業者や取引先など)に対して発送する書面のことです。
内容証明郵便での発送が原則で、弁護士事務所によってはメールやFAXも併用して発送の旨を通達するところがあるようです。
受任通知には「借入について、この債務者(法人)の負債の整理については当弁護士が受任しました」「今後は本人への直接請求・連絡はせず、当職までご連絡ください」といった内容が書かれます。
この受任通知を債権者が受け取ることで、以下のような効果が発生します。
(1) 取り立て・督促が止まる
弁護士が受任通知を送ることによる一番のメリットは、何といっても「借金の取り立て・督促などの請求が止まる」ことです。
貸金業法第21条第1項第9号には、『弁護士から受任の通知があった場合、正当な理由なく直接本人に対して請求してはならない』と定められています。
したがって、受任通知書送達以降は債権者からの直接の取り立てがなくなり、債務者は日々の取り立てから解放されることになります。
※ただし、貸金業法の制約を受けない個人債権者や取引先については、必ずしも催促を止められるとは限りません。
(2) 支払いもストップできる
受任通知発送後は、債務者への支払いをストップすることもできます。
これにより債務者は、破産にかかる費用を準備したり、個人の場合は生活を立て直す基盤を築いたりすることができます。
2.受任通知で督促を止めた際のリスク
受任通知により債務者が得られるメリットは大きいですが、一方、取り立て・督促を止めた後にはこのあとにご説明するような問題も発生します。
とは言え、弁護士は受任通知送付前に以下のことについてもよく説明をしてくれるはずです。適切な対応をすればデメリットは最小限に抑えられますので、疑問点は遠慮なく弁護士へ相談するようにしましょう。
(1) 銀行口座が凍結する
銀行や信用金庫などの金融機関が受任通知を確認したら、該当の法人名義の口座を「凍結」してしまいます。
銀行によっては、出金だけでなく入金もできなくなることがあるようです。
凍結した銀行口座に預金があれば、その預金は銀行に対する借金の弁済に充てられます(相殺)。
口座が凍結されると、売掛金の引出しが出来ません。弁護士費用や裁判所費用を工面することも難しくなります。
よって、受任通知の送付前に、弁護士と相談の上で対応策を講じておく必要があります。
(2) 連帯保証人へ請求がいく
受任通知を受け取った債権者は、主債務者に対して請求が出来なくなることから、借金に連帯保証人が付いている場合はその連帯保証人へ残務の一括請求をします。
これは法人破産の場合でも例外ではありません。
法人の場合、代表者が会社の債務を保証しているケースが多いです。特に中小企業などの場合、融資を受けるときに代表者個人が法人の連帯保証人になるよう求められることがほとんどでしょう。
よって、該当の法人の代表者に残務の請求がいってしまいます。
連帯保証人がこれを支払うことができない場合は、連帯保証人もそろって債務整理をしなければならないでしょう。
このようなケースでは、弁護士は法人破産と代表者の自己破産を同時に申し立てることが多いです。
[参考記事] 代表者の自己破産について3.法人破産の場合の受任通知
なお、個人の破産(自己破産)の場合、弁護士事務所は受任後直ちに各債権者に受任通知を発送します。
(泉総合法律事務所では通常、翌営業日には受任通知書を発送します。)
しかし法人破産の場合、上記の口座凍結や取引先の混乱を避けるため、受任通知を送付せずに破産申立を行うこともあります。
「いつ受任通知を送付するか」「そもそも送付せずに破産申立を行うのか」ということについても、法人破産の実績豊富な弁護士ならば適切な時期を見極めて対応が可能ですので、安心してお任せください。
4.まとめ
最初は「今はお金がないから」と言って返済を待ってもらえても、滞納の期間が長くなればなるほど取り立て・督促は厳しいものになっていきます。
お金の不安だけでなく、日々の督促のストレスで精神的に辛い思いをされている方は、一日でも早く弁護士にご相談ください。
弁護士が債権者に送付する「受任通知」には、取り立て・督促だけでなく、支払いまでもストップさせる効果があります。
借金問題は早期な程とれる解決策が多くなりますので、お悩みの方はどうぞ泉総合法律事務所の無料相談をご利用ください。