会社(法人)は破産しても「免責」されないの?
インターネットでは「自己破産をすると“免責”されて借金がゼロになる」という情報が散見されます。
破産においての「免責」は、「借金を返済する責任を免除する」という意味で使われます。すなわち、借金が0になることを言うのです。
確かに、個人の方が自己破産し、裁判所から免責を受けると借金が0になります。
しかし、法人の破産について、「法人が破産すると免責される」と記載してある記事はなかなか見つからないのではないでしょうか?
それを見て「法人や会社って破産しても免責されないの?」と思う方もいらっしゃるかもしれません。
はたして、会社法人は破産しても免責されず、借金が残ってしまうのでしょうか?
1.法人破産と「免責」の関係
まず、個人の破産(自己破産)は、「破産手続」と「免責手続」の2つで構成されています。
最初に、破産手続で自己の財産が処分・売却され、そのお金が債権者へ配当されます。
その後、免責手続が行われて、自己破産する人に免責を認めるべきか否かが検討されます。
晴れて免責が認められると、借金を返済する責任や義務が免除されます。
実は、法人破産には「免責手続」そのものが存在しません。
したがって、法人が破産しても「免責を受ける」ことはないのです。
しかし「免責を受けられない」ことと、「法人破産をしても借金の返済義務が残る」ということはイコールではありません。
法人破産をすると、自己破産同様に破産手続により法人の資産は全て売却されて、債権者への弁済に充てられます。
その後、その法人は消滅します。
法人格が消滅すると、その法人が持っていた一切の権利や義務も同時に消滅します。
権利がなくなるということは、所有権なども消滅するということです。よって会社は財産を保有することができなくなります。
また、会社が持っていた義務もなくなるため、借金の返済義務なども消滅します。
つまり「借金がゼロになる」という、免責と同じ効果がもたらされるのです。
2.個人の破産と法人破産の違い
このように、法人破産には「免責」はありませんが、結果だけを見れば自己破産で免責を受けた場合と同じ効果を得られます。
しかし、だからと言って、法人破産と個人の破産の効果が全く同じというわけではありません。
主な相違点をピックアップしてご説明します。
(1) 財産の処分(残せる財産の種類)
法人破産では、先述の通り法人格が消滅するため、法人が所有していた全ての財産が処分されます。
しかし、個人の破産の場合、一定以下の財産は処分されずそのまま手元に残すことができます。
破産すると法人は消滅しますが、個人は破産しても消滅するわけではありません。当然ですが、個人は破産後も生活をしていく必要があります。
法人破産と同じように個人の財産も全て処分すると、破産後の個人の生活が困難になってしまいます。これでは破産をした意味がありません。
そのため、個人の破産の場合、当面の生活に必要な財産(99万円以下の現金、生活必需品、総額20万円以下の預貯金など)は処分を免れることになっています。
(2) 税金などの支払義務
法人が消滅すると、「一切の債務」について支払義務がなくなります。
しかし、個人の破産の場合、公租公課(税金・国民保険料など)をはじめとする一部の債務に関しては、破産後も支払義務が継続します。
税金等のほか、不法行為によって他人の身体や生命に与えた損害の賠償金、子の養育費や親族間の扶養義務に基づく生活費の支払義務なども免責されません。
破産をしても免責されない債務(債権者から見れば「債権」)のことを「非免責債権」と言います。
[参考記事] 法人破産をしたら、滞納中の税金・社会保険料はどうなる?3.法人破産の注意点(代表者の自己破産)
ここまで読んで、「法人破産をすれば全ての債務がなくなるなら安心だ」と考える方もいらっしゃるでしょう。
しかし、法人の代表者などが法人の債務を連帯保証している場合、破産をしても問題が残ってしまいます。
破産した法人の債務は、連帯保証人が引き継ぎます。
消滅した法人が債務を支払う義務はありませんが、保証人が法人の債務を代わりに支払うことになるのです。
もし保証人に法人の債務を支払う能力がない場合、保証人も法人とともに自己破産することになるでしょう。
[参考記事] 会社が破産したら連帯保証人は要注意!代表者が負う法律上の義務しかし、これまでお話をした通り、自己破産をすることで無一文になることはありません。自己破産ならば、その後の生活に必要な最低限の財産を手元に残すことができます。
また、現実には様々な障害があるとはいえ、自己破産後に再度起業することを制約する法律自体はありません。
会社の法人破産と代表者の自己破産を並行して進めるのは、非常に手間のかかる作業です。しかし、弁護士にご相談いただければ、法人破産と自己破産の手続きを一括してご依頼いただけますので、ご安心ください。
4.法人破産は複雑!弁護士に相談して乗り切ろう!
法人破産をすれば法人の債務は消滅します。
しかし、法人破産の準備や手続きは複雑で、自力で行うのは困難です。多くの方は弁護士に依頼して、法人破産の準備や手続きを代理してもらっています。
それだけでなく、弁護士は代表者が同時に自己破産をする場合の相談にも乗ってくれます。
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