みなし解散のリスク|登記せず放置していた会社を継続するには
家族または1人で会社を長く経営している場合、取締役の変更などが行われないことが多いです。
取締役が変更されたら登記を変更しなければなりません。しかし、そもそも変更がないため、最後に登記をしてから随分と時間が経ってしまっている会社も少なくないでしょう。
しかし変更がないからといって登記を更新せず放置していると、「みなし解散」の対象になってしまいます。
みなし解散とは、登記手続を長期間放置している会社を強制的に解散させる手続です。
具体的には「最後の登記から12年以上」経っている会社に対して行われます。
1.みなし解散が行われるとどうなる?
商業登記の本来の目的は、会社名・所在地・事業目的・役員などの重要な情報を公開して、各種の取引が安全かつ円滑に行われるようにすることです。
しかし、休眠している会社や事業を行っていない会社、あるいは実態のない会社の登記が放置されていると、悪意を持った人が「この会社は放置状態にあるから、社名を騙って悪いことをしよう」「自分の会社だと偽装してしまおう」などと考えて、休眠会社や商業登記などを悪用するおそれがあります。
こういったリスクを避けるために、そして登記の整理を目的として、登記が長期間更新されていない会社は「実態を失っている」とみなして、みなし解散が行われているのです。
「みなし解散が行われる=即座に会社がなくなる」ではありません。清算手続をしない限り、会社の法人格は残り続けます。
ただし、会社が解散した状態になると、営業活動はできなくなります。営業を再開するには「会社継続の手続」を行わなければなりません。
【そもそも登記の放置は会社法違反】
登記を疎かにしている会社もあると思いますが、登記は定期的に行う必要があります。
取締役の任期は10年であり、再任された場合でも登記をしなければなりません。つまり、少なくとも10年に1度は登記をする必要があるのです。
みなし解散の対象となるのは最後の登記から12年以上経った会社なので、この10年に1度の再任の登記を怠った状態と言えます。
ちなみに登記を怠る行為は会社法違反とされており、過料などの対象になります。
2.みなし解散になるまでの流れ
では、みなし解散はどのように行われるのでしょうか?
手続の流れを見ていきましょう。
(1) 法務大臣による公告
最初に行われるのは法務大臣の公告です。公告と同時に対象の会社へ通知書が発送されます。この通知は登記簿上の本店所在地に送られます。
本店を移転した、あるいは住居表示の変更があったのに登記簿に反映していないなどの場合、通知が届かないおそれがあります。
(2) 事業を廃止していない旨の届出をする
上記の通知には「まだ事業を廃止していない旨」の届出書が同封されています。
事業を継続したい場合は、この届出書を使って管轄の法務局へ届出をしなければなりません。法務局に郵送しても持参しても構いません。
ただし、この届出は法務大臣の公告があってから2ヶ月以内にしなければなりません。
(3) 登記の申請
まだ事業を廃止していない旨の届出をしただけでは十分ではありません。届出をしても法人の登記が更新されていないからです。
みなし解散を避けるには、法務大臣の公告から2ヶ月以内に「登記の申請」を行う必要があります。
事業を廃止していない旨の届出をしなくても、期限内に登記の申請をすれば、解散とはみなされません。大切なのはあくまで「登記」というわけです。
法務大臣の公告から2ヶ月以内に登記の申請をしない場合、その会社は解散したとみなされます。
また、登記を怠っている場合は法律(会社法第976条第1項第1号等)に基づいて100万円以下の過料に処される可能性があります。
この過料は会社の経費にできないため、会社の代表者などが自腹で支払うことになります。
3.みなし解散の通知が届いたときの対処法
自社にみなし解散の通知が届いた場合、一体何をすればいいのでしょうか?
(1) 速やかに登記をする
必ず行わなければならないのは登記です。
事業を廃止していない旨の届出をしても、登記をしなければ会社が解散したとみなされてしまいます。
法務大臣の公告は2ヶ月しか猶予がありません(公告から2ヶ月経過した翌日になると、その会社は解散したとみなされます)。
通知を受け取ったらすぐに司法書士や弁護士などの専門家に相談しましょう。指示に従って登記を進めれば、通常問題ありません。
(2) 登記が間に合わなかった場合
登記の申請が期限内に行われなかった場合、その会社は解散したとみなされてしまいます。
しかし、解散とみなされてしまっても、3年以内に「会社継続登記」をすれば、会社を継続することができます。
ただし、会社継続登記は手続が複雑で費用がかかります。また、前述のとおり、登記を怠ったことに対して過料などを課される可能性もあります。
会社を継続する意思がある場合は、みなし解散通知が届いたら速やかに登記の申請を行ってください。
(3) みなし解散から3年経った場合
みなし解散から3年経過した会社は、それ以降事業を再開することができません。会社を清算する以外の選択肢がなくなってしまいます。
このとき「どうせ営業するつもりはないし、清算するのも面倒だから会社を放置しておこう」などと考えてはいけません。
会社が存続している限り、その会社の確定申告を毎年行う必要があります。損益が発生しているかどうかは関係ありません。
確定申告の度に税理士に依頼する必要があるため、余計な経費がかかってしまうでしょう。
また、会社が存続していると法人税がかかってしまいます。
これらの無駄を避けるためにも、弁護士に相談して清算手続にとりかかり、会社の清算結了登記を行いましょう。
4.法人の解散や倒産は弁護士へ相談を
登記は最低でも10年ごとに行わなければなりません。忘れたままだとみなし解散の対象となってしまい、みなし解散通知書が届きます。
住所変更などを登記していない場合は、その通知書すら届かない可能性があります。会社に重大な変更があったら必ず登記を行い、変更がなくても取締役再任の登記を行ってください。
もし、登記を怠ってみなし解散通知書が届いてしまったら、すぐにでも司法書士へ相談してください。継続登記の手続をサポートしてくれます。
また、資金繰りが厳しいなどで会社を解散・清算したい場合は、弁護士までご相談ください。
弁護士は法人の清算や破産手続のプロです。適切な処理を行った上で会社を畳むことができます。
自分だけで登記や清算の手続をすることは困難で、時間や手間がかかってしまいます。しかし、専門家に依頼すれば確実に、短期間で処理してくれるでしょう。
[参考記事] 会社・法人の廃業|解散・清算手続き