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債権回収の重要知識

連帯保証人に対する債権回収(請求)方法

「お金を返してもらえない」「代金を支払ってくれない」「家賃を滞納されている」というリスクを回避するため、債務者に「連帯保証人」を立ててもらうことがあります。

しかし、いざ連帯保証人に請求するときに「いくらまで請求できるの?」「どうやって請求するの?」と悩んでしまうこともあると思います。

本記事では、連帯保証人から債権を回収する際の注意点や回収方法について説明していきます。

1.連帯保証人の責任とは

まずは、前提知識として、連帯保証人には、どのような内容の責任を追求できるのかを解説しましょう。

(1) 「連帯保証人」と「保証人」の違い

保証人とは、債権者との間に「保証契約」を締結した者です。
「保証契約」とは、他人(主たる債務者)の債務につき、主たる債務者が、その債務を履行しない場合に、主たる債務者に代わって債務を履行するという契約です。

例えば、長男Bが、Aから100万円を借り、Bの父CとBの兄Dが「保証人」となった場合、主たる債務者である長男Bが100万円を返済しなければ、CとDが返済する義務を負います。

ただの「保証人」と「連帯保証人」の違いのうち大きなものは、ただの保証人に認められている、①「催告の抗弁権」及び「検索の抗弁権」と、②「分別の利益」という制度が、連帯保証人には認められていないという点です。

①催告の抗弁権・検索の抗弁権

催告の抗弁権(452条)とは、債権者Aが保証人CやDに支払を請求したら、CやDは、「まず、主たる債務者Bに請求してください」と要求できる権利です。
この要求を受けたAは、いったんBに請求しない限り、CやDに請求をすることはできません。

検索の抗弁権(453条)とは、AがBに請求をしたのに支払わないので、CやDに請求した場合でも、CやDが、主たる債務者Bに返済の資力があり、それへの執行が容易であることを証明すれば、Aからの請求を拒むことができる権利です。

なお、CやDが、催告の抗弁権・検索の抗弁権を行使したのに、AがぐずぐずしてBの給与を差し押さえなかったためにBが退職してしまい、給与から回収できなくなった場合は、仮に直ちに給与を差し押さえていれば回収できたはずの金額についてはCとDは支払義務を免れます(455条)。

②保証人の分別の利益

「分別の利益」とは、保証人が複数人いる場合、それぞれ平等の割合で義務を負うという制度です(456条、427条)。
これにより、CとDは、それぞれ50万円ずつの返済義務しか負いません。

(2) 連帯保証人の特殊性

さて、先に述べましたとおり、連帯保証人には、催告の抗弁権、検索の抗弁権は認められません(454条)。したがって、前述した例のCやDが連帯保証人の場合は、債権者AはBに請求することなく、いきなりCやDに請求することが可能です。

そして、たとえBが十分な強制執行可能な資力を有し、それをCやDが証明したとしても、CやDが応じなければ、CやDの資産を差し押さえ、債権を回収することが許されます。

また、明文の規定はありませんが、分別の利益も認められないとするのが判例です(大審院大正6年4月28日判決・大審院民事判決録23巻812頁)。

このため、CもDも100万円全額を支払う義務があります。AはC又はDに対して100万円全額を請求できるのです(もちろん、二重取りはできません。Cが100万円を支払えば、債権は消滅し、重ねてDに請求することはできません)。

以上が、連帯保証人が負う責任内容の基本知識です。

このように、ただの保証人と比べて、連帯保証人の責任は非常に強化されており、債権者側からみれば、主たる債務者が2人いることとほぼ同じと言えます。

我が国では、簡易かつ強力な債権担保手段として連帯保証契約が広く選択されており、保証人と言えばほぼ例外なく連帯保証人という事態となっています。

【新設された「債権者の情報提供義務」に注意】
前述のとおり、我が国では連帯保証契約が広く普及し、連帯保証人となることがごく普通のことと認識されています。このため、主たる債務の債務内容を十分に確認しないまま連帯保証契約を締結したうえ、その後の主たる債務者の返済状況に関心を払わないままの連帯保証人が珍しくありませんでした。
このような連帯保証人は、債権者から支払を請求されて、ようやく主たる債務者が債務履行を起こしている事実や返済しなくてはならない金額が膨大になっていることを知って愕然とし、経済的な破綻に陥ることになります。
このような事態を避けるため、2017(平成29)年の改正民法では、保証人が、その責任内容を認識することができるよう、債権者から保証人に対して情報を提供する義務が新設されました(債権者の情報提供義務)。詳しくは以下のコラムをご覧ください。
参考:民法改正による保証の変更|賃貸借契約にも適用される重要な変更点

2.連帯保証人に対する督促・債権回収方法

次に、実際の回収をどのように行っていくかを考えていきましょう。

(1) 連帯保証人にはいつ請求するべき?

先述の通り、連帯保証人は主たる債務者と全く同じ責任を負い、催告の抗弁権、検索の抗弁権もありませんから、主たる債務の弁済期が到来すれば、いつでも連帯保証人に請求することが可能です。

主債務者に請求する前に連帯保証人へ請求をしても構いません。

通常は、まず主たる債務者に請求してから連帯保証人に請求する場合が多いと思われますが、債権回収にはスピードが重要ですから、主たる債務者の対応を待って考えるなどと悠長な姿勢は禁物です。

少なくとも弁済期前に主たる債務者の信用状況に不安が生じてきた場合は、主たる債務者にかかわっている場合ではありません。直ちに連帯保証人に請求するべきです。

(2) 連帯保証人に請求する方法

債権者には権利がある以上、いきなり法的手段をとることも可能ですが、連帯保証人が任意に弁済してくれるなら、余計な手間やコストをかける必要はありません。そこで、時間的な余裕があるなら、まずは穏当に書面などで請求の連絡をすることになります。

ただし、連帯保証人自身の信用状況が悪化している局面では、財産隠しや競合する他の債権者による回収を防止するため、連絡などすることなく、ただちに法的手続を開始することも必要です。

連帯保証契約書が強制執行認諾文付きの公正証書であれば、訴訟など起こさずとも、金銭債権のみではありますが、これを債務名義としてスピーディに連帯保証人の財産を差し押さえることが可能です。

また、それ以外の場合でも、裁判所から連帯保証人の財産に対する仮差押命令を発令してもらい、連帯保証人による資産の処分を防止しておき、後の強制執行に備えておくことも可能です。

①連帯保証人に請求する文面

連帯保証債務の履行を請求する書面に記載する内容が決まっているわけではありませんが、最低限、連帯保証人が何を請求されているのか理解できる内容である必要があります。

連帯保証人の責任は、連帯保証契約に基づいて発生し、主たる債務を担保するものですから、次の内容は記載されている必要があります。

  • 主たる債務を特定する内容(当事者、契約日、金額、弁済期など)
  • 連帯保証契約を特定する内容(当事者、契約日、主たる債務など)

具体的には次の文例を参考にしてください。

<連帯保証人に対する請求書の文例>

冠省 弊社はAとの間において、弊社を貸主、Aを借主とし、返済期を令和3年8月31日とする令和3年4月1日付け金銭消費貸借契約(以下「本件金銭消費貸借契約」)を締結し、金1000万円をAに貸し付けました。

また弊社は貴殿との間において、本件金銭消費貸借契約を主たる債務とし、貴殿を連帯保証人とする、同日付連帯保証契約を締結しました。

上記主たる債務の弁済期は経過しましたが、主たる債務者Aからの返済はありません。

そこで、弊社は上記連帯保証契約に基づき、貴殿に対し、金1000万円の支払を請求します。つきましては、上記金額を速やかにお支払いください。

本書受領後○○日以内にお支払いなき場合は、法的手段をとることを申し添えます。

以上

②内容証明郵便の利用

連帯保証人に対する請求は、普通郵便やメールでも構いませんが、内容証明郵便を利用することをお勧めします。

内容証明郵便は、郵便局が、書面の内容と相手方の受領を証明してくれる制度ですので、書面を裁判の証拠とする場合に強い証明力を持つからです。

③法的手段

請求しても任意の支払いがない場合は、法的手段を採ることが考えられます。

前述のとおり連帯保証人自身の信用に不安があったり、連帯保証人の債権者が多数存在したりといった場合では、回収を急ぐ必要があり、直ちに仮差押えなどの強制執行を選択するべきですが、そのような状況になく時間的な余裕を見込めるならば、以下のような方法をご検討ください。

民事調停

簡易裁判所に申し立てをし、調停委員を仲介役として当事者が話し合うことで解決を目指します。
あくまで当事者双方が同意することで調停が成立します。

費用が低額な他、手続きが簡単で、合意できれば円満な解決が望めるというメリットがありますが、合意できない場合には、調停は不成立となり、訴訟などで解決する必要が出てきます。

支払督促

支払督促は、債権者が簡易裁判所へ申し立てる手続です。金銭などの請求に理由があると認められる場合に、裁判所が「支払督促」という一種の支払命令を発します(民事訴訟法382条以下)。

これを債務者が受け取ってから2週間以内に異議の申立てをしなければ、この命令は仮執行が可能となり、債権者はこれに基づいて強制執行を行うことができます。書面のやりとりだけで手続ができるので、訴訟よりも労力がかからず、費用も低廉で済みます。

ただし、支払督促の申立に対して、債務者は督促異議の申立を行い、通常の訴訟手続による審理に移行させることが可能です(民事訴訟法395条)。

支払督促に関しては以下のコラムをご参照ください。

[参考記事] 支払督促とは|やり方などをわかりやすく解説

支払督促に督促異議が出された場合は、手続は自動的に通常の訴訟に移ります。

④強制執行

連帯保証人が弁済に応じない場合の最終手段は強制執行です。

強制執行認諾文付き公正証書によって連帯保証契約書が作成されているときは、その公正証書に基づいて直ちに強制執行が可能ですが、それ以外の場合は、調停の和解調書、訴訟の判決などによる債務名義を得て、はじめて強制執行が可能となります。

連帯保証人の財産を差押えして、これを金銭に換えて債権を回収します。金銭に換える方法は、差し押さえた財産が動産や不動産の場合は競売、債権の場合は、その債務者(第三債務者)からの取立てなどによります。

強制執行に関しては以下のリンクをご参照ください。

[参考記事] 強制執行の手続きを行う方法|申立書の内容・流れなど

3.連帯保証人から債権を回収するときも弁護士へ

債権回収は多くの場合、時間との勝負です。連帯保証人の資産状況が悪化する前に、差し押さえるべき的確な資産を探り当て、もっとも有利な回収方法を選択したうえ、他の債権者に先駆けて回収を実行しなくてはなりません。

各種法律が交錯する場面であり、法律の専門知識がない方、実務の運用を知らない方では、実際の債権回収は困難です。

是非、法律のプロである弁護士に御相談ください。

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