ファクタリング業者を選ぶ際のポイント・違法業者の見分け方
ファクタリングの利用を検討する際には、貸金業法などに違反する違法業者に注意する必要があります。
また、ファクタリングには2社間ファクタリングと3社間ファクタリングの2種類があるので、ご自身のニーズに合った方を選択してください。
この記事では、ファクタリング業者を選ぶ際のポイントについて、違法業者の見分け方も併せて解説します。
1.ファクタリング業者については貸金業法違反が問題となり得る
「ファクタリング」は、ファクタリング業者が利用者から売掛債権などを買い取ることで、一定の手数料と引き換えに、債権を早期に現金化できるサービスです。
ファクタリングの基本的な知識については、以下のコラムをご参照ください。
[参考記事] ファクタリングとは|仕組み・メリット・デメリットファクタリングは「債権譲渡」の仕組みを採用していますが、スキームの内容によっては、債権譲渡ではなく「貸付け」と判断され、貸金業法違反などに該当する可能性があります。
というのも、ファクタリングの経済的な実質は「ファクタリング業者が手数料という名目で利子を取り、利用者に貸付けを行う」点にあると判断されやすいからです。
ファクタリングが「貸付け」であると判断された場合、ファクタリング業者には以下の違法性の問題が生じます。
(1) 無登録貸金業(貸金業法違反)
「貸付け」を業として行うためには、「貸金業」の登録を受ける必要があります(貸金業法3条1項、11条1項)。
したがって、ファクタリングと称した「貸付け」を無登録で業として行っている場合、貸金業法違反に該当し、刑事罰の対象となります(同法47条2号)。
(2) 出資法・利息制限法違反
出資法では、営業的金銭消費貸借の上限利率が年20%と定められており(出資法5条2項)、違反した場合は刑事罰の対象となります。
また利息制限法では、貸付けの元本額に応じて年15~20%の上限利率が定められており、上限を超える利息は無効となります(利息制限法1条)。
ファクタリングが「貸付け」とみなされる場合、手数料の名目で利用者から徴収される金銭も「利息」とみなされ(利息制限法3条)、上記の出資法・利息制限法に基づく上限金利によって規制されます。
ファクタリングの手数料を年率に引き直すと、ほとんどの場合出資法・利息制限法の上限を超過するため、「貸付け」とみなされるファクタリングは違法の疑いが極めて強いです。
適法にファクタリングサービスを提供する業者は、法的に「貸付け」ではなく「債権譲渡」と認定されるように、契約上必要な措置をとっています。
しかし、中には「貸付け」と評価せざるを得ないスキームを採用している業者も存在するため、ファクタリング業者を選定する際には十分注意が必要です。
2.違法なファクタリングを見分けるポイント
違法なファクタリング業者を見分けるためには、契約内容をよく確認する必要があります。
具体的には、以下のポイントに着眼して契約書の内容をチェックしましょう。
(1) 手数料が著しく高額でないか
手数料が著しく高額(年率換算で数百%、数千%など)の場合は、ヤミ金業者がファクタリングを装って無登録貸金業を営んでいる可能性が高いです。
ファクタリングを利用する際には、必ず手数料の水準が合理的であることを確認してください。
(2) 債権の「売買契約」である
ファクタリングが原則として「貸付け」に当たらないとされているのは、債権の「売買契約」であるからです。
この点の法的整理が曖昧なファクタリング業者は、違法に無登録貸金業を営んでいる可能性があります。
ファクタリングの契約を締結する前に、必ず契約書の内容を確認して、債権の「売買契約」であることが明記されているかを確認しましょう。
もし「利息」「貸付け」「融資」などの表現が用いられている場合には、違法業者である可能性を疑ってください。
(3) 債権の買戻し義務・償還義務がない
ファクタリングが債権の「売買契約」である以上、債権回収に関するリスクはすべて、利用者からファクタリング業者に移転しなければなりません。
しかし、ファクタリング業者の中には、売掛債権が回収不能となった場合に、利用者に対して債権の買戻し義務や償還義務を課す例が見受けられます。
利用者に債権の買戻し義務や償還義務が課されている場合、債権回収に関するリスクはファクタリング業者に移転しておらず、利用者の下に残っていると評価されます。
この場合、ファクタリング業者は債権を担保として利用者に貸付けを行っているにほかならず、貸金業法などに違反する違法業者となるため要注意です。
【給与ファクタリングは違法なので利用しない】
事業者が利用する売掛金ファクタリングとは別に、勤務先に対する給与債権を買い取り対象とする「給与ファクタリング」を営む業者も存在します。
給与ファクタリングについては、金融庁および東京地裁が相次いで貸金業法に該当する旨の見解を示しており、現在では「給与ファクタリング=貸金業」が通説的になっています。
金融庁・東京地裁の見解によれば、給与ファクタリングは一律貸金業に該当するため、ほとんどの給与ファクタリング業者は無登録貸金業・出資法違反・利息制限法違反に当たります。違法業者との取引を回避するためにも、給与ファクタリングの利用は避けましょう。
【参考】金融庁に対するノーアクションレターの質問文|金融庁の回答|給与ファクタリング ヤミ金 契約無効 刑事罰の対象(一般社団法人日本ファクタリング業協会)
3. 2社間ファクタリングと3社間ファクタリング
ファクタリングのサービスには、債務者(売掛先)に知らせずに行う「2社間ファクタリング」と、債務者(売掛先)の承諾の下で行う「3社間ファクタリング」の2種類があります。
ファクタリング業者を選ぶ際には、まず以下の目安を考慮し、2社間ファクタリングと3社間ファクタリングのどちらを選ぶかによって、大まかに範囲を絞るとよいでしょう。
(1) 手数料重視の場合は3社間ファクタリング
3社間ファクタリングの手数料は、2社間ファクタリングよりも安くなる傾向にあります。
3社間ファクタリングでは、債務者(売掛先)から債権譲渡に対する承諾が取れており、ファクタリング業者が直接債権回収を行えるため、回収可能性が高いと考えられるからです。
ファクタリングの利用に伴う手数料を抑えたい場合には、3社間ファクタリングを選択するとよいでしょう。
(2) 取引先に知られたくない場合は2社間ファクタリング
これに対して、2社間ファクタリングの最大のメリットは、債務者(売掛先)にファクタリングの事実を知られずに済む点にあります。
「ファクタリングを利用する=お金に困っている」と捉えられてしまうと、売掛先との取引関係に悪影響が生じるおそれがあります。
そこで、2社間ファクタリングによって内密に債権譲渡を行えば、売掛先との関係悪化を防げる可能性があります。
売掛先にファクタリングの事実を知られたくない場合には、2社間ファクタリングを利用するとよいでしょう。
4.ファクタリング業者の選定に関するQ&A
最後に、ファクタリング業者を選ぶ際に気になりやすいポイントについて解説します。
(1) 大手業者の方が安心?
ファクタリング業者には規模の大小があり、基本的には大手業者の方が安心といえます。
大手業者の場合、多くの利用者による違法業者でないかどうかのチェックを乗り越えて、顧客の信頼と多くのシェアを勝ち得ていると考えられるからです。
ただし、大手業者だから絶対に問題がないとは言い切れないので、前述の違法性に関するチェックポイントを踏まえて、契約内容をよく確認してください。
(2) 即日融資・来店不要などの謳い文句は怪しい?
ファクタリング業者がある程度のセールス文句を用いることは、営業上当然と言える側面があります。
しかし、中には怪しいセールス文句を用いる業者もいるので、不審な点がないかを注意深く観察すべきです。
たとえば「即日融資」は、ファクタリングが「融資」であることを前提としているようなワードであり、業者の貸金業法違反などを疑うべきでしょう。
「来店不要」については、オンラインでの金融取引が活発化している昨今では、それだけで怪しいとは言いきれません。しかし、店舗を訪問されることがないため、中には架空の住所を記載している違法業者もいますから、注意が必要です。
いずれにしても、前述の違法性に関するチェックポイントを踏まえて、契約内容をよく確認する必要があるでしょう。
5.まとめ
ファクタリングを利用する際には、違法業者に当たらないかどうかを慎重にチェックしたうえで、ご自身のニーズに合ったファクタリング業者を選定しましょう。
なお、もし取引先による債務不履行にお悩みの場合は、ファクタリングを利用するのではなく、弁護士に債権回収をご依頼ください。
法律の専門家としてさまざまな手段を駆使し、依頼者の債権を迅速・円滑に回収できるよう尽力いたします。