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法人破産の重要知識

法人の準自己破産とは?|単独での法人破産申立て

「会社の経営が傾き、負債の返済がままならない。しかし、取締役がもう会社を破産させるしかないと進言しても、社長や専務は首を横に振るばかり。」

実は、このような状況で「自分(取締役や業務執行社員)だけで裁判所に破産の申立を行う」ことができるのが、法人の「準自己破産」という制度です。

経営難のまま放置しても、傷口を広げるばかりで、取引先にも従業員にも余計な迷惑をかけてしまいます。
他の取締役の同意が得られずに困っているという取締役や業務執行社員の方は、このコラムをぜひ参考にしてください。

1.「自己破産」とは?

破産手続を申し立てることができるのは、「債務者」と「債権者」です。

債権者が債務者を破産させるよう申し立てることを「債権者破産」と呼びます(司法統計に基づくと、債権者破産は全体の破産事件に占める割合でいえば1%にも満たない数です)。
これに対し、債務者が自身の破産を申請することが「自己破産」です。

自己破産においては、債務者が「個人」の場合と株式会社などの「法人」の場合があります。

法人が自己破産(=法人破産)をするには、その法人組織として法的に要求される手続を経て、法的に有効な意思決定がなされている必要があります。

例えば、株式会社の場合、取締役会非設置会社で複数の取締役がいる会社では、定款に特別な定めがない限り、取締役の過半数によって破産申立ての意思決定が必要です(会社法348条2項)。

また、この会社に代表取締役が選定されているときは、裁判所への申立ては代表取締役が行う必要があります(会社法349条1項但書)。

取締役会設置会社でも、取締役会における取締役の過半数による議決を経て破産申立ての意思決定を行い(会社法369条1項)、代表取締役が裁判所への申立てを行います(会社法363条1項)。

2.法人の「準」自己破産とは?

(1) 準自己破産とは

本来、このような法定の手続・要件を満たさずに行われた破産申立ては、会社法の規定に違反する違法な行為として法的に無効です。

しかし、例えば、会社の経営が悪化し、このまま経営を続けることは悪戯に状況を悪化させるだけで、債権者など多数の利害関係人に迷惑をかけてしまう状況にありながら、会社の存続に固執する役員の存在もあるでしょう。
この場合、会社内部の意見対立のために、破産申立てを行う方針が多数決で否決されてしまう可能性があります。

あるいは、すでに会社が破綻状況にありながら、代表取締役や取締役が行方不明になってしまい、意思確認や申立て行為ができない事態もあり得ます。

このような事態を避けるため、次の者には、単独で破産を申立てる権限が与えられています(破産法19条1項)。

  • 一般社団法人、一般財団法人の理事
  • 株式会社、相互会社の取締役
  • 合名会社、合資会社、合同会社の業務執行社員

このような立場にある者が行う破産申立てを、慣習上「準自己破産」と呼びます。

(2) 準自己破産の法的効力

準自己破産は、法律で認められた申立てである以上、法人の自己破産と同じ効力が認められます。

もちろん、申立行為こそ、「取締役会の決議書や議事録を提出することなどが不要」という手続の形式的な違いはあります。

また、破産開始決定前の裁判所での審尋や選任された破産管財人との最初の面談は、当然に申立者が出席することになります。

しかし、それ以外の破産手続の流れは、法人破産も準自己破産もまったく同じです。

[参考記事] 会社破産の手続き|流れ・期間・必要書類と費用などまとめて解説

3.準自己破産のデメリット・注意点

ただし、準自己破産は、本来の正統な手続を踏んだものではないという点は、法律も考慮しています。

よって、以下のような注意点がありますので、覚えておくべきでしょう。

(1) 破産原因の疎明責任が必要

自分の意見が聞き入れられない少数派の取締役や、会社から排除されそうな取締役が、会社の運営を妨害したり攪乱したりする意図で、準自己破産を申し立てる権限を濫用する危険もあります。

そこで、このような言わば内部紛争による準自己破産を抑止するため、準自己破産においては特別な要件が課されています。

それが「破産原因の疎明責任」です。

準自己破産では、その法人に複数いる取締役・理事・業務執行社員の全員が破産申立てをする場合を除いて、準自己破産を申立てる者が、その法人における破産原因となる事実を「疎明」しなくてはならないとされているのです(破産法19条3項)。

「疎明」とは、証拠による裏付けが、裁判官に「事実である」と確信させる「証明」の程度には至らないものの、裁判官が「一応確からしい」との推測に達する程度の裏付けはできていることを意味します。

法人の破産原因は、①支払い不能②債務超過です(破産法15条1項、16条1項)。

支払い不能とは、「債務者が支払能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態」と定義されます(破産法2条11号)。

債務超過とは、「債務者が、その債務につき、その財産をもって完済することができない状態」と定義されます(破産法16条1項)。

準自己破産では、法人が、このような状態にある事実を、準自己破産を申し立てる者が、証拠を示して、裁判官に「一応確からしい」と判断してもらう責任があるのです。

疎明の責任があるということは、裁判官が「一応確かといえるかどうか判断がつかない」という場合、準自己破産の申立ては却下されてしまうということです。

疎明責任を課す目的は申立権限の濫用防止ですから、破産申立ての濫用が想定しにくい自己破産については、破産原因の疎明は要求されていません(破産法18条1項)。

【破産原因を疎明することが困難なケース】
たとえば、法人が手形の不渡りによる銀行取引停止処分を受けていれば、これは問題なく「支払停止」に該当するので、「支払不能」の疎明は容易です。しかし、準自己破産の実行を視野にいれる必要があるケースの多くは、そのような単純な事案ではなく、法人内部の財務資料を検討しなくては破産原因の有無を判断できない事案です。
自己破産に反対する取締役が多数派を形成している場合、たとえ取締役といえども、そのような裏付資料を入手して裁判所に提出することは事実上困難な場合が珍しくありません。
経理部門に味方となってくれる従業員がいれば別ですが、法人が破産すれば会社は消滅し、従業員は失業しますから、自分の失職を確実にしてしまう準自己破産に協力してくれる従業員を見つけることは、現実には至難の業です。
したがって、準自己破産にあたっては、まずこの破産原因の疎明責任が大きな障壁となって立ちはだかることになります。

(2) 破産費用の負担

次に準自己破産を困難にするものは、破産の費用です。

法人の自己破産であれば、申立代理人の弁護士費用も、裁判所への予納金も、法人が負担することになります。
しかし、準自己破産の場合、これらは申し立てる者が個人で負担しなくてはなりません。

もちろん、申立代理人の弁護士費用や裁判所への予納金は、債権者全体の利益に資する費用なので、配当手続を経ずに他の債権に優先して会社財産から随時弁済を受けることが許されています。これを「財団債権」と呼びます(破産法2条7号、148条1項1号、151条)。

ただ、申立ての際には、申立人自身が支出しなくてはならないうえ、もしも法人にめぼしい資産が残っていない場合は、弁済を受けることはできず、完全に申立人の「持ち出し」となってしまうリスクもあります。

このような金銭的なリスクを負ってまで準自己破産を申し立てることは、事実上、困難なことと言わざるを得ません。

例えば東京地裁の場合、法人破産は、①費用も安く簡易な手続で行われる「少額管財事件」と②それ以外の「特定管財事件」に分かれます。

少額管財事件では、多くの場合、予納金は22万円程度で済みます。

他方、特定管財事件では、予納金は負債総額によって異なり、負債総額5,000万円未満の場合でも予納金は70万円以上、負債総額が1億円を超え5億円未満の場合は予納金は200万円以上かかります。

準自己破産であっても、たとえば、「たんに代表取締役や取締役が失踪したために、自己破産のための手続要件が充足できないだけで、特に破産申立に反対する内部意見があるわけでもなく、破産原因も明らかである」という単純なケースでは、少額管財事件として取り扱ってもらえる場合もあります。

しかし、(a)法人破産の申立をするべきか否かや、破産原因の有無について、会社内部で意見対立があるために自己破産の要件を充たせないというケース、(b)負債総額が大きいケース、(c)債権者数が数百件にのぼるケースなどでは、破産管財人の負担が大きくなることが予想されるので、特定管財事件となり、予納金も高額となります。

4.法人の自己破産は弁護士に依頼を

法人の準自己破産では、上に説明したとおり、多くの場合、破産原因の疎明資料を確保するハードルと、個人で破産費用を負担するハードルという2つの障壁を超えなくてはなりません。慎重・確実にことを運ばなくてはならないでしょう。

法人破産を確実に行うためにも、法人の破産手続に精通した弁護士に相談・依頼することを強くお勧めします。

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