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集合動産譲渡担保権とは?概要・設定方法・対抗要件具備・担保実行

「集合動産譲渡担保権」は、工場の機械や倉庫中の在庫品などをまとめて担保にとる方法として、実務上活用されています。

今回は、集合動産譲渡担保権の概要や、担保設定・対抗要件具備・担保実行の各手続きなどについて、詳しく解説します。

1.集合動産譲渡担保権とは?

集合動産譲渡担保権」は、民法上の明文規定はないものの、実務上認められた担保物権です。

「特定の範囲の動産をまとめて担保にとる」ということが、集合動産譲渡担保権の内容であり、特に事業者同士の取引でよく用いられています。

たとえば、金融機関がメーカーである事業会社に対して融資をする際、工場内の資産価値がある製造機械をまとめて担保にとりたいとします。
この場合、「A工場内のXという機械全部」などと目的物を特定して、集合動産譲渡担保権を設定する方法が有効です。

集合動産譲渡担保権の特徴は、「物」それ自体ではなく、物の「範囲」で担保物を特定している点にあります。
つまり、範囲から外に出た物は担保権の対象から外れる一方で、新たに範囲の中へ入ってきた物については、担保権の対象に含まれるということです。

工場の機械や倉庫の在庫などは、事業を運営する中で入れ替わることが想定されます。
この入れ替わりを前提としたうえで、債務者の事業に支障を生じさせることなく担保権を設定するために、集合動産譲渡担保権は使い勝手がよい方法といえるでしょう。

【譲渡担保権の法的性質について】
「譲渡担保権」を設定する場合、担保権者は形式的に所有権を取得するものの、実質的には担保権のみを取得するという点で、形式と実態のずれが生じます。
すなわち、担保権者は形式上の所有者ですが、担保物を自由に使用収益・処分することはできず、あくまでも債務不履行が発生した場合に限って、担保物を処分できるということです。
「所有者であって、所有者でない」というわかりづらい状態も、ある意味では譲渡担保権の特徴といえます。

2.集合動産譲渡担保権を設定する方法

集合譲渡担保権は、債権者と債務者の間で譲渡担保契約を締結することによって設定します。

その際、担保物を以下の3つの要素によって特定することが必要です。

①動産の種類
(例)「工作用機械(製品名:A)」

②動産の保管場所
(例)「X工場内に存在する」「Y倉庫内に存在する」

③量的範囲
(例)「全部」「全体数量の半分」

なお、集合動産譲渡担保権の対象となっている動産は、出入りによって入れ替わることが当然に想定されます。

仮に債務者が、担保権の負担を逃れるために、対象範囲から動産をすっかり運び出してしまったりすると、債権者としては実質的に担保権を失う不利益を被ってしまいます。

そのため、集合動産譲渡担保権の設定契約において、担保物のモニタリングに関する規定を設けておくことが重要です。

どこまでルールを決めるかは債務者との交渉次第ですが、以下のような対応を検討すべきでしょう。

  • 担保物の処分につき、債務者の禁止行為を定める
  • 担保物の状況につき、債務者に対して定期報告を義務付ける
  • 担保物の状況を確認するため、債権者に対して立ち入り調査の権限を付与する

3.集合動産譲渡担保権の対抗要件を具備する方法

集合動産譲渡担保権を実効化するためには、設定後速やかに対抗要件を具備することが重要です。
対抗要件を具備することによって、その後に担保物を取得した第三者に対しても、担保実行の効力を主張できるようになります。

集合動産譲渡担保権の対抗要件は、「占有改定」または「登記」によって具備するのが一般的です。

(1) 担保物の引渡し|「占有改定」によるのが一般的

動産の物権変動(譲渡、担保設定など)について対抗要件を具備する場合、原則として当該動産の「引渡し」が必要になります。

民法上、動産の引渡し方法としては、以下の4つが認められています。

①現実の引渡し(民法182条1項)
譲渡人が譲受人に対して、動産を実際に(物理的に)引き渡す方法です。

②簡易の引渡し(同条2項)
すでに譲受人が動産を所持している場合に、譲渡人が、「今後は動産を譲受人の物としてください」と意思表示を行うことによって、簡易的に当該動産を引き渡す方法です。

③指図による占有移転(民法184条)
譲渡人・譲受人以外の第三者が動産を代理占有している場合に、譲渡人が、「今後は動産を譲受人のために代理占有してください」と指図を行うことによって、当該動産を引き渡す方法です。

④占有改定(民法183条)
譲渡人が、自ら占有する動産について、「今後は譲受人のために代理占有します」と意思表示を行うことによって、当該動産を引き渡す方法です。

集合動産譲渡担保権は、債務者(譲渡人)が所有・占有する動産を引き続き利用しつつ、観念的に担保権のみを債権者(譲受人)に付与するのが主な活用方法です。

そのため、譲渡人の下に動産の占有を残すことができる「占有改定」の方法により、引渡しによる対抗要件具備が行われるのが一般的となっています。

(2) 動産債権譲渡特例法に基づく登記

動産債権譲渡特例法3条(※)では、法人がする動産の譲渡について、民法所定の引渡しに代えて、動産譲渡登記ファイルに譲渡の事実を登記する方法による対抗要件具備が認められています。
(※正式名称:動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律)

集合動産譲渡担保権についても、動産譲渡登記ファイルに登記することによって、第三者対抗要件を具備することが可能です。

動産譲渡登記制度の詳細については、以下の法務省ホームページをご参照ください。

参考:動産譲渡登記制度について|法務省

4.集合動産譲渡担保権を実行する手続き

被担保債権について債務不履行が発生した場合、債権者は集合動産譲渡担保権を実行することができます。

集合動産譲渡担保権は、実務上、民事執行法上の手続きをとることなく、債権者が私的に実行する方法が採用されています。

担保実行の大まかな手続きの流れは、以下のとおりです。

(1) 債務者に対して担保実行の通知を行う

債権者は、債務者に対して、債務不履行が発生したため、集合動産譲渡担保権を実行する旨の通知を行います。

担保実行の通知は、内容証明郵便によって行うのが一般的です。
債権者から債務者に対する通知がなされた時点で、譲渡担保契約に基づき、担保動産の完全な所有権が債権者に移転します。

(2) 帰属清算と処分清算について

債権者は、「帰属清算」または「処分清算」のいずれかの方法により、担保動産の価値を債権の弁済に充当します。

①帰属清算
担保動産をそのまま債権者が取得する一方で、担保動産の価値を算定して債権の弁済に充当し、差額(不足額または余剰額)を債務者との間で清算します。

②処分清算
担保動産を債権者が処分したうえで、換価代金を債権の弁済に充当し、差額(不足額または余剰額)を債務者との間で清算します。

帰属清算・処分清算のいずれの方法が採用されるかについては、譲渡担保契約の定めによります(債権者の裁量によって決定できると定められるケースも多いです)。

債権者としては、担保動産の価値が債権額を上回る場合には、債務者に対して清算金を支払わなければなりません。

特に帰属清算の場合、清算金として支払う資金を捻出しなければならないので注意しましょう。

5.債務者が担保物の引渡しを拒否する場合の対処法

集合動産譲渡担保権を実行し、担保物の所有権が債権者に移転したにもかかわらず、債務者が担保物の引渡しを拒否する場合には、どのように対処すべきなのでしょうか。

この場合、民事保全や訴訟の手続きを利用して、強制的に担保物の引渡しを求めることが考えられます。

(1) 占有移転禁止の仮処分を申し立てる

債権者が何もしないでいると、債務者は集合動産譲渡担保権の対象範囲から動産を運び出し、担保を流出させてしまうかもしれません。

そのため、まずは裁判所に対して、民事保全処分の一つである「占有移転禁止の仮処分」を申し立てましょう(民事保全法23条1項)。

占有移転禁止の仮処分命令が執行されると、債務者は担保動産の占有を第三者に移転することが禁止されます。

仮に第三者が債務者から担保動産の占有を取得した場合であっても、後述する動産引渡請求訴訟において、債権者勝訴の判決が確定した場合には、当該第三者に対して担保動産引渡しの強制執行をすることができます(同法62条1項、2項)。

(2) 動産引渡請求訴訟を提起する

占有移転禁止の仮処分命令を得て、担保動産の流出を暫定的に阻止したら、動産引渡請求訴訟を提起し、本格的に担保動産の引渡しを求めましょう。

動産引渡請求訴訟では、

  • 集合動産譲渡担保権を設定したこと(譲渡担保契約の存在)
  • 債務不履行が発生したこと
  • 債務者に対して担保実行の通知を行ったこと

につき、証拠によって立証することが必要です。

訴訟手続きの準備・遂行は、煩雑かつ専門的な作業になりますので、弁護士にご依頼いただくことをお勧めいたします。

6.集合動産譲渡担保権と動産売買先取特権の優劣について

集合動産譲渡担保権は、動産売買先取特権と競合するケースがあります。

集合動産譲渡担保権が動産売買先取特権に優先するというのが判例の立場ですが、学説上はさまざまな異論があり、今後どのように処理されるかは不透明です。

そのため、自社が有する集合動産譲渡担保権と、他社が有する動産売買先取特権が競合している場合の債権回収については、弁護士にご相談のうえで慎重に対応することをお勧めいたします。

動産売買先取特権についての詳細や、集合動産譲渡担保権と動産売買先取特権が競合した際の取り扱いについては、以下の記事を併せてご参照ください。

[参考記事] 動産売買先取特権についてわかりやすく解説 [参考記事] 債権回収と担保権|集合動産譲渡担保権と動産売買先取特権の優劣

7.まとめ

集合動産譲渡担保権は、実務慣行上認められた担保物権で、工場内の機械や倉庫内の在庫品などをまとめて担保にとることができます。

担保権実行も簡易的な手続きにより行うことができますが、債務者が担保動産の引渡しを拒否した場合には、民事保全や訴訟などの法的手続きが必要となることに留意しましょう。

集合動産譲渡担保権については、難解な法的論点が多数存在するため、設定時には弁護士にご相談いただくことをお勧めいたします。

また、集合動産譲渡担保権の実行を巡って債務者との間でトラブルが発生した際にも、お早めに弁護士までご相談ください。

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