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債権回収の重要知識

債権譲渡の方法・対抗要件などをわかりやすく解説【民法改正に対応】

債権があっても、長いこと回収をしないでいるといずれは時効を迎えてしまいます。その前に、相手が債務整理や倒産に踏み切る可能性も0ではありません。

しかし、債権を回収したいと思ってはいても、なかなか返済をしてくれない債務者に手を焼く債権者の方は多いです。

そういった場合は「債権譲渡」をすることで解決できる可能性があります。
この記事では、債権譲渡とはどういったものなのかを解説していきます。

1.債権譲渡とは?

債権譲渡とは、簡単に言えば文字通り「他人に債権を譲渡する」ことです。

例えばAさんがBさんに対して持っている債権を、AさんからCさんに譲ることが債権譲渡に当たります。

この債権譲渡が行われた後は、CさんがBさんに直接債務の弁済を請求できます。また、債務者BさんはAさんではなく、Cさんに直接債務の弁済を行うことになります。

なお、債権債務の内容は、債権譲渡をしても変わらないため、Bさんが弁済する内容は同じです。弁済する相手だけが変わることになります。

債権譲渡は、債権者が債権回収に手間を掛けられない場合に行われることが多いです。

例えばAさんはBさんに対して100万円の債権を持っているとします。
しかし、Aさんは事業に忙しいなどでBさんに請求する手間や時間を捻出できません。
そこでAさんは、自分がBさんに対して持つ100万円の債権をCさんに譲渡して、代わりにCさんから金銭を受け取る契約を結びました。

これによってAさんは、債権を回収する手間をかけずに金銭を手に入れることができ、債権回収に近い効果を得ることができるでしょう。

このような債権の売買は日常的に行われています。多くの債権者は債権回収を行う「サービサー」という業者に債権を売り渡すなどして、債権の回収を図っています。

2.債権譲渡はどうやって行う?

債権譲渡をする方法は簡単です。譲渡人と譲受人の間で合意があれば、債権譲渡が成立します。
企業間では通常、契約書を用いて「債権譲渡契約」を締結します。

しかし、譲渡人と譲受人との間のみで完結してしまっては、債務者に不都合が生じます。

例えばAさんがBさんに対して債権を持っている状態で、Bさんの知らないところでAさんからCさんへ債権が譲渡されたとします。CさんはBさんに「債務を弁済して」と請求できますが、見ず知らずのCさんから突然請求を受けたBさんは驚くはずです。通常は弁済を拒否するでしょう。

よって、譲受人が債権を取り立てるためには一定の要件が必要です。これを「債務者への対抗要件」と言います。

対抗要件を得る方法は以下の3つです。

(1) 債務者から債権譲渡についての承諾を得る

債務者本人が債権譲渡に承諾するものです。

承諾は債務者から譲受人と譲渡人のどちらに対して行っても、同じ効力を発揮します。

(2) 譲渡人から債務者に通知する

債務者が債権譲渡を拒否する、あるいは債務者が何人もいて承諾を得ることが難しい場合もあるはずです。

そこで、債権譲渡を円滑に進めるために、「譲渡人が債務者に債権譲渡の通知をする」ことで、譲受人が債務者への対抗要件を得られることになっています。
この通知は必ず譲渡人が行わなければならず、譲受人が通知をしても効果がありません。

実務上は債務者の承諾を得るよりも、通知によって対抗要件を得ることが多いです。その場合、譲渡人が内容証明郵便を使って債務者へ通知することが一般的です。

なお、債務者の連帯保証人などに通知する必要はありません。債務者本人に通知すれば、連帯保証人などへも債権譲渡の効力が生じます。

(3) 債権譲渡登記制度を利用する

債権譲渡登記」という制度を使えば、多数の債権譲渡を一度に登記し、債務者以外の第三者に対して対抗要件を有することができます。

登記完了後、譲渡人または譲受人が債務者に債権の譲渡及びその登記をしたことについて登記事項証明書を交付して通知をするか、債務者が承諾すれば、債務者に対する対抗要件が具備されます。

債権譲渡登記制度を利用できるのは、譲渡人が法人の場合のみです。申請は東京法務局に行います。詳しい内容はリンク先からご確認ください。

【参考】債権譲渡登記制度について(法務省)

3.債権を譲渡された側はどうなる?

参考までに、債権を譲渡された側がどうなるのかについて簡単に説明します。
(※ここでは「債権を譲渡された」=「債権(債務)を譲渡された債務者」という意味で扱います。)

債権譲渡を知った債務者にできることは多くありません。債権譲渡通知が詐欺でないかを確認したり、弁護士に相談したりするなどの対応を取ることになります。
場合によっては消滅時効の援用や、反対債権があれば相殺などを考えるかもしれません。

大抵の場合、債権の譲受人には債権回収のノウハウがあります。債務者が何らかの対応をしない限り、訴訟を提起されたり財産を差し押さえられたりするでしょう。

4.民法改正で変わった点

民法は2020年4月1日に大きく改正され、債権譲渡に関する規定も変わりました。最後に、この変更点について解説します。

なお、新しい民法は、改正民法の施行日である2020年4月1日以後に行われた債権譲渡契約に対して適用されます。債権自体が発生した日や債権譲渡の効力が発生した日ではなく、譲渡人と譲受人との間で交わされた債権譲渡契約の締結日が基準です。

そのため2020年3月31日以前に債権譲渡契約が締結されている場合は、旧民法の規定が適用されます。

(1) 譲渡制限特約の効力に関する変更

債権者と債務者の間で、債権の譲渡を制限する旨の契約を締結することがあります。これを「譲渡制限特約」と言います。

旧民法では、この特約がある場合、債権の譲渡が基本的に無効とされていました。例外として、譲受人が譲渡制限特約のことを知ず、かつ知らないことにつき重大な過失がない場合は、債務者がこの特約の存在を主張できず、債権の譲渡が成立していました。

しかし、これでは譲受人次第で債権譲渡の効果の有無が決まってしまいます。そのため改正民法では、譲渡制限特約があっても債権譲渡が有効に行われることになりました。

ただし譲渡制限特約について譲受人が知っていた場合や、重大な過失があって知らなかった場合は、債務者が譲受人に対する債務の履行を拒否して、譲渡人に対する弁済等をもって対抗できることになっています。

また、譲譲渡制限特約付きの債権が金銭の支払いを目的とする債権だった場合は、譲受人が譲渡制限特約の存在を知っていたかどうかに関わらず、債務の全額を供託所に供託できることになりました。

(2) 異議をとどめない承諾の扱いに関する変更

わかりやすく表現すると、「異議があってもそれを相手に伝えないで承諾すること」です。

例えばAさんとBさんとの間で「Aさんが商品を渡したらBさんが30万円を払う」という契約をしていたとします。この状態でAさんからCさんに「Bさんから30万円をもらえる債権を譲渡する」という債権譲渡が行われました。
この場合、Bさんは「Aさんから商品をもらうまで30万円は払いません」とCさんに異議を主張することができます。

一方、BさんがCさんに対して異議を伝えず、「わかりました、30万円払います」と返事をしてしまうと、異議をとどめない承諾をしたことになります。

旧民法では異議をとどめない承諾をした場合、債務者は譲渡人に対して主張できた事情を、譲受人に主張できないことになっていました。先の例で言えば、BさんはAさんから商品をもらっていないにも関わらず、Cさんの請求に応じて30万円を支払わなければなりませんでした。

この規定は債務者にとって負担が大きいため、改正民法では異議をとどめない承諾に関する制度そのものが廃止されました。

(3) 相殺について

債務者が譲渡人に対して反対債権を持っていた場合、改正民法では譲受人に対してその反対債権と譲渡債務を相殺できる規定が設けられました。
「反対債権を持っている」とは、AさんがBさんに対する債権を持っているときに、BさんにもAさんに対する債権がある状態です。

相殺可能な債権は、原則として譲受人が債務者に対する対抗要件を具備する前に、債務者が譲渡人に対して取得していた債権に限られます(民法469条1項)。譲受人が債務者へ対抗要件を具備した後で、債務者が譲渡人に対する債権を獲得しても、その債権では譲受人に対して相殺権を行使できません。

ただし、債務者が対抗要件具備後に取得した譲渡人に対する債権であっても、①対抗要件具備時より前の原因に基づいて生じた債権、または、②譲受人の取得した債権の発生原因である契約に基づいて生じた債権であれば、債務者は譲渡人に対する債権による相殺を譲受人に対抗できます(民法469条2項)。

旧民法では相殺権について明確化されていなかったため、相殺できるかどうかはケースバイケースでした。

5.債権回収のために債権譲渡の活用を

自分で債権を回収できそうにない場合は、他者に債権を譲渡して、代わりに金銭を受け取るという方法もあります。債権を買い取ってくれる業者も存在しているので、信用できるところを探してみるのもいいでしょう。

ただし、譲渡人と譲受人との間でしっかりと契約を結び、譲渡人が債務者に通知する義務を負うなど、様々な注意点があります。

債権譲渡をするときは弁護士に相談するなどして、入念に検討してから実行に移すことをおすすめします。

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