「所得税の青色申告の取りやめ届出書」とは|個人事業主
青色申告をすると、年間最大65万円の所得控除を受けることができますので、個人事業主の方の多くが青色申告を行っているかと思います。
青色申告を行っている個人事業主が廃業する際には、「所得税の青色申告の取りやめ届出書」を税務署に提出しなければなりません。
廃業時に提出すべき書類はたくさんありますが、本記事を参考にして、必要書類を漏れなく提出してください。
この記事では、個人事業主が廃業時に提出する「所得税の青色申告の取りやめ届出書」について、提出期限・提出先・書き方などを解説します。
1.「所得税の青色申告の取りやめ届出書」とは?
「所得税の青色申告の取りやめ届出書」とは、その名のとおり、青色申告をやめることを税務署に届け出る書類です。
(1) 提出義務がある個人事業主
「所得税の青色申告の取りやめ届出書」の提出義務があるのは、青色申告を取りやめようとする方です(所得税法151条1項)。
個人事業主が廃業する場合、その事業に係る事業所得を失うことになります。
他に不動産所得・事業所得・山林所得がある場合には、青色申告を維持することもできますが、そうでなければ「所得税の青色申告の取りやめ届出書」を提出しなければなりません。
(2) 提出期限
「所得税の青色申告の取りやめ届出書」の提出期限は、青色申告書の提出をやめようとする年の翌年3月15日です。
確定申告書の提出期限と同じですが、廃業によって「所得税の青色申告の取りやめ届出書」を提出する場合には、廃業届などの他の書類と併せて、廃業後速やかに提出するのが良いでしょう。
(3) 提出先
「所得税の青色申告の取りやめ届出書」の提出先は、納税地を所轄する税務署長です。
廃業届などと同じ提出先となりますので、税務署に足を運ぶ回数を減らすためにも、できる限りまとめて書類を準備しましょう。
2.青色申告の取りやめ届出書の記載要領
「所得税の青色申告の取りやめ届出書」の書式は、以下の国税庁ホームページからダウンロードできます。また、各税務署の窓口でも交付を受けられます。
参考:所得税の青色申告の取りやめ手続|国税庁
「所得税の青色申告の取りやめ届出書」の書き方を、記載事項に沿って見ていきましょう。
①税務署長
所轄の税務署の名称を記載します。
(例)東京上野税務署長、荒川税務署長、浅草税務署長など②提出日
「所得税の青色申告の取りやめ届出書」を提出する日付を記載します。③納税地
納税地に該当する住所、居所または事務所の所在地を記載します。④納税地以外の住所地・事業所等
納税地とは別に住所地や事業所等がある場合は、その所在地を記載します。
(例)自宅と事務所が別で、事務所を納税地とする場合には、自宅の住所を記載する⑤氏名
提出者(個人事業主)の漢字氏名とフリガナを記載します。⑥生年月日
提出者(個人事業主)の生年月日を和暦で記載します。⑦職業
個人事業の種類を記載します。
(例)小売業、飲食店業、弁護士など⑧屋号
個人事業の屋号がある場合には、その名称を記載します。⑨青色申告を取りやめる年度
青色申告をしなくなる年度を記載します。廃業の場合は、廃業日の属する年度になります。⑩青色申告書提出の承認を受けていた年分
いつの年度からいつの年度まで青色申告をしていたかを記載します。
青色申告の承認申請を行った年度から、廃業日の属する年度の前年度までとなります。⑪青色申告書を取りやめようとする理由
「個人事業を廃業するため」などと記載します。⑫その他参考事項
税務署に伝えておくべき備考があれば、この欄に記載しておきます。⑬関与税理士
税理士に依頼して「所得税の青色申告の取りやめ届出書」を作成・提出してもらう場合に、その税理士の情報を記載します。
個人事業主の方が自分で「所得税の青色申告の取りやめ届出書」を作成・提出する場合には、記載する必要はありません。
3.個人事業主の廃業時の提出書類
「所得税の青色申告の取りやめ届出書」の他にも、個人事業主が廃業する際には、提出すべき書類がたくさんあります。
主な提出書類は以下のとおりですので、漏れなく準備して適時に提出してください。
①廃業届
納税地を所轄する税務署長に対して、廃業から1か月以内に提出します。
参考:個人事業の開業届出・廃業届出等手続|国税庁
②消費税の事業廃止届出書
消費税の課税事業者が廃業する場合には、納税地を所轄する税務署長に対して、廃業後速やかに提出します。
参考:事業廃止届出手続|国税庁
③給与支払事務所等の廃止届出書
青色事業専従者や使用人に給与を支払っている場合には、給与支払事務所等の所在地を所轄する税務署に対して、廃業後1か月以内に提出します。
参考:給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出|国税庁
④事業開始(廃止)等申告書(個人事業税)
都道府県税事務所に対して提出します。提出期限・提出先・書式などは、各都道府県によって異なりますので、該当する窓口にご確認ください。
参考:事業を始めたとき・廃止したとき|東京都主税局
⑤予定納税額の減額申請書
廃業によって所得が減少すると、7月・11月の予定納税が大きな負担になります。
その場合は、予定納税額の減額を申請することができます。
参考:所得税及び復興特別所得税の予定納税額の減額申請手続|国税庁
廃業届を中心とする各書類の概要については、以下の記事でまとめて解説しているので、併せてご参照ください。
[参考記事] 個人事業主の廃業手続き|廃業届の書き方・提出方法を解説4.個人事業主の債務整理を弁護士に相談するメリット
個人事業主が廃業するには、法人ほどではありませんが、かなり煩雑な手続きを踏まなければなりません。
また、廃業と併せて債務整理を検討する場合には、どの手続きを選択するかも重要ですので、十分な法的検討を行う必要があります。
もし個人事業主の方が債務整理をご検討中の場合は、お早めに弁護士までご相談ください。
(1) 煩雑な手続きを一任できる
弁護士は、債務整理に必要な手続きをわかりやすくご説明し、その大部分を代理いたします。
弁護士のアドバイスをお聞きいただくことで、手続きの全体像を理解し、安心していただけるかと思います。また、ご自身で債務整理の手続きを進める場合よりも、時間と労力を大きく節約することが可能です。
(2) 適切な債務整理手続きを選択できる
借金の負担に苦しんでいる個人事業主の方は、債務整理を弁護士にご依頼いただくことをお勧めいたします。
債務整理には、主に「任意整理」「個人再生」「自己破産」の3つがあるところ、それぞれメリットとデメリットが存在します。
どの手続きを選択するのがよいかは、債務者の状況によってケースバイケースであり、各手続きの得失を綿密に比較検討しなければなりません。
弁護士にご相談いただければ、依頼者のご状況に合わせた債務整理手続きを、総合的な観点からご提案いたします。
また、債権者との交渉や裁判手続きなど、債務整理に必要な手続きや対応についても、弁護士が一括してサポートいたします。
廃業や債務整理は後ろ向きに捉えられがちですが、個人事業主の方にとっては、事業をリセットしてまた一から再スタートを切るための、前向きなきっかけでもあります。
個人事業主の方で債務整理をご検討中の方は、弁護士が親身になってサポートいたしますので、どんなお悩みでもお気軽にご相談ください。