失業給付|法人破産した会社の従業員対応
会社等の従業員を雇用している法人が破産するにあたっては、通常、破産申立前に全従業員を解雇します。
例外的に破産に伴う清算業務等のため一部の従業員のみ雇用を継続する場合もありますが、このような従業員も、必要な清算業務等が終われば解雇されることになります。
したがって、いずれ全ての従業員が職を失うことになります。
[参考記事] 会社が破産したら従業員はどうなる?どのように対応すべきか解雇された従業員は、以後、それまでの収入が途絶えるため、その生活の安定、そして就業の支援が必要であり、そのため公的な強制加入の保険である雇用保険により失業給付がなされます。
今回は、この「失業給付」について解説します。
1.失業給付とは
(1) 失業給付の受給条件
失業給付を受給するためには、まず、雇用主である会社が雇用保険に加入している必要があります。
労働者を雇用する事業は、その業種・規模等を問わず、農林水産業の一部を除きすべて適用事業となり、その事業主は、労働保険料の納付・雇用保険法の規定による各種の届出等の義務を負っています(違反の場合は刑事罰あり)。
そして、雇用保険の適用事業に雇用される労働者は、本人の希望の如何を問わず被保険者となります。
(※ただし、1週間の所定労働時間が20時間未満である方や、同一の事業主に継続して31日以上雇用されることが見込まれない方、大学や高校などの学生・生徒などは雇用保険の適用除外となります。)
その上で、解雇による離職の日以前1年間に6ヶ月以上の被保険者期間があることが必要です。この期間は、複数の事業者に雇用されていた場合は通算されます。
自己都合退職など一般の離職の場合は、離職の日以前2年間に12ヶ月以上の被保険者期間があることが必要とされることと比べると、倒産に伴う解雇の場合は「特定受給資格者」として失業手当の受給資格要件が緩和されており、手厚い保護を受けていると言えます。
ただし、解雇日に即日失業保険がもらえるわけではありません。失業保険の受給開始時期まで待つ必要があります。
倒産に伴う解雇等、会社都合による退職者の受給開始時期は、離職票をハローワークに提出し、7日間の待機期間が経過した翌日からです。
(2) 失業給付の基本手当
失業給付の種類にはいくつかありますが、基本となるのは、決められた計算方法により算定された「基本手当日額(雇用保険で受給できる1日当たりの金額)」に「所定給付日数(基本手当の支給を受けることができる日数)」をかけて算出される「基本手当」です。
基本手当日額は、解雇前に支払われていた賃金(賞与等は除く解雇前6か月の平均)を、180(30日×6ヶ月)で割って算出した金額です。
この金額のおよそ45%から80%の範囲で決まりますが、年齢区分ごとに上限額があります。
また、所定給付日数は、雇用保険の被保険者だった期間の長さや解雇当時の年齢により、90日から330日の間で定められています(倒産に伴う解雇の場合)。
参考:ハローワーク|基本手当について
2.失業給付受給の手続き
失業給付を受給するためには、解雇された従業員が、離職票と求職申込書をハローワークの窓口に提出し、失業の認定を受ける必要があります。
具体的な必要書類等は以下のとおりです。
- 離職票(正式名称:雇用保険被保険者離職票)
- 雇用保険被保険者証
- 求職申込書
- 本人の住所・氏名・年齢を確認できる書類(運転免許証等)
- 写真2枚
- 本人名義の普通預金通帳
- 印鑑
- 個人番号確認書類(マイナンバーカード、通知カード等)
このうち、離職票はハローワークから会社に交付されますので、従業員は会社から受け取る必要があります。
また、雇用保険被保険者証は、会社が預かっている場合には、これも会社から従業員に渡される必要があります。
求職申込書は、従業員がハローワークに赴き、備え付けの用紙に記入します。
3.従業員が失業給付を受けるにあたり会社側がすべきこと
きちんと雇用保険に加入し、保険料を支払っていること(会社と従業員が折半して負担します)は当然です。
その上で、倒産に至った場合には、なるべくスムーズに従業員が失業保険を受けられるようにすべきです。
具体的には、従業員の解雇後、会社がハローワークに雇用保険被保険者離職証明書(いわゆる離職証明書)と雇用保険被保険者資格喪失届を提出し、ハローワークから離職票の交付を受けて、雇用保険被保険者証(会社が預かっている場合)とともに従業員に渡すことになります。
離職証明書等は、経営者が自ら作成するか、それまで労務を担当していた従業員に廃業後に日当を払って作成を依頼する方法、あるいは、顧問の社労士がいればそこに依頼するという方法もあり得ます。
事業の廃止日前から可能な限り必要書類を準備しておき、事業を廃止して従業員を解雇したら速やかにハローワークへ離職証明書等を提出できるようにしておくことが必要でしょう。
4.まとめ
法人の破産手続は、裁判所の制度自体、弁護士が申立代理人としてつくことを前提として設計されています。
従業員への対応ひとつとっても、経営者の方ご自身での対応は極めて負担が大きいと思います。
法人の破産を検討する場合は、どうぞお早めに弁護士へご相談ください。