破産した法人・会社の税務申告・確定申告について
株式会社などの法人を経営なさっている方は、毎年、法人の税務申告・確定申告をしていることと思います。
通常の経営状況であれば、税理士さんに依頼して任せ、それほど税務処理の負担を感じることはないかもしれません。
しかし、経営状況が厳しくなり、支払不能、破産申立てを検討するといった状況になると、税理士さんに払う顧問料の支払いも厳しくなり、これ以上の業務はできないと言われて以後の税務申告業務を断られたり、契約を解除されてしまったりすることもよくあることです。
それでは、破産した場合の税務申告・確定申告は誰が行うのでしょうか。
法人の破産申立てをお考えの方は、破産にあたってご自身で法人の税務申告・確定申告を行わなければならないのかとご不安に思っていらっしゃるかもしれません。
ここでは、破産法人の税務申告・確定申告は誰が行うのかをご説明します。
1.破産法人の租税債務
(1) 破産により租税債権は消滅する
法人が破産をすると、最終的に法人格が消滅、つまり会社等法人の存在自体がなくなります。
法人の消滅に伴い、法人の債務も当然に消滅します。
個人の破産の場合は、租税債務は免責の対象外ですが、法人の場合は債務を負っている法人自体がなくなってしまうため、租税債務も消滅するのです。
もし配当可能な財産があれば、租税債権は優先的に配当を受けますが、残った租税債権は結局、消滅することになります。
(2) 法人破産と税務申告・確定申告との関係
破産により法人が消滅すれば、租税債務も消滅します。
しかし、破産手続開始時に税務申告が済んでいないことがあります。特に破産申立てに至る過程では、経営者は様々な対応に追われ、また税理士さんへの未払いにより税務処理を拒絶されてしまい、税務申告ができていない、という事態は十分にあり得るのです。
法人破産により最終的には租税債務は消滅するのですが、そもそも税務申告・確定申告がなされていなければ、租税債務がいくらあるのかが分かりません。
法人が破産しても、税務申告・確定申告をすること自体は必要なのです。
では、誰が申告するのでしょうか。
2.税務申告・確定申告は破産管財人が行う
破産管財人というのは、破産手続において破産財団(簡単に言うと破産者の財産)に属する財産の管理と処分をする権限を持った人です。言わば、破産法人の管理人です。
破産管財人は、破産手続開始の決定と同時に、裁判所によって選ばれます。現在の運用では、ほとんどの場合に弁護士の中から選ばれます。
破産管財人の主な職務は以下のとおりです。
- 破産者が有していた財産の換価・処分・回収
- 破産債権の認否(破産者に対する債権の有無とその額を確定すること)
- 債権者に対する配当
- 裁判所と破産債権者に対する報告
このような破産管財人の職務を遂行するために、破産管財人には、破産者の財産の管理と処分をはじめとする大きな権限が法律上与えられています。
破産法人の税務申告・確定申告は、租税債務という破産債権の有無とその金額を確定させる行為です。また、場合によっては申告によって過払いの税金があることが明らかになり、破産財団を増やすことにつながる場合もあります。
そのため、上に挙げた権限として、破産管財人によって破産法人の税務申告・確定申告が行われるのです。
3.破産管財人が行う税務申告・確定申告の対象期間
破産管財人が破産法人の法人税について申告義務を負うのは、解散事業年度から確定事業年度までとされています。
解散事業年度というのは、破産法人の事業年度開始の日から破産手続開始決定日までの年度です。
確定事業年度というのは、破産手続中の最後の事業年度末日の翌日から残余財産確定の日(全ての資産の換価により財産の確定が完了した日と考えるのが一般的)までの年度です(事業年度の途中で破産手続開始決定があった場合、解散事業年度と確定事業年度の間の事業年度は、清算事業年度になります)。
つまり、破産管財人が義務により税務申告・確定申告をするのは、破産開始前の最後の事業年度開始の日から、破産手続により破産法人の財産が確定された日までの期間、ということになります。
これは消費税についても同様に扱われています。
なお、法人の住民税については、課税期間の関係から破産後の租税債務が発生することは少ないのですが、租税債務が発生した場合には、やはり同様に破産管財人が税務申告・確定申告をすることになります。
なお、上記解散事業年度の前の年度、つまり破産開始前にすでに事業年度の末日を迎えている年度については、破産管財人に申告義務がありません。
この期間については、本来は、税務申告・確定申告が既になされているはずです。
しかし、事情により申告がなされていない場合についての取扱いについては、税務署や自治体によって異なるようです。特に申告を求めないというところもあれば、やはり申告を求められるところもあります。
そのため、破産申立て時点ですでに申告されているべき年度についての申告がなされていない場合には、所轄の税務署や自治体に事前に相談して、その反応に応じて対応する必要があります。
4.まとめ
このように、破産法人の税務申告・確定申告は、基本的に破産管財人が行うものです。
したがって、自分で申告を行わなければならないのかと思い破産申立てを躊躇する必要はありません。
経営が立ち行かず法人破産をご検討になる場合は、できるだけ早く、破産に詳しい弁護士へご相談ください。
本当に破産が必要なのか、他の方法はないのかというところから検討し、的確なアドバイスをいたします。