法人破産手続の流れ

経営が苦しくなり、会社の債務が支払えなくなってしまった場合は、法人破産をご検討ください。

法人破産をすることで、債務を抱えた会社を清算し、事業をリセットして新たにスタートを切ることができます。

法人破産の手続の大まかな流れは、以下のとおりです。

手続全体として、おおむね半年から1年程度の期間を要します(債権者多数の場合、会社財産が多額に及ぶ場合などは、さらに長い期間を要することもあります)。

  1. 弁護士への相談・申立の準備
  2. 破産手続開始の申立・債務者審尋
  3. 破産手続開始の決定・破産管財人の選任
  4. 破産管財人による法人財産の換価・処分
  5. 債権者集会・債権者への配当
  6. 破産手続終結または廃止の決定
  7. 法人格の消滅

それぞれの段階について、詳細を見ていきましょう。

1.弁護士への相談・申立の準備

法人の債務の支払いが困難になった場合は、まず弁護士にご相談ください。

法人の債務整理には、民事再生・法人破産・特別清算などの手続があり、それぞれにメリット・デメリットが存在します。

弁護士は、債務者の状況をヒアリングしたうえで、どの債務整理手続を利用するのが適切であるかを検討し、アドバイスを行います。

法人破産を申し立てることが決まったら、債権者や債務者財産に関する調査を行った上で、破産手続の申立書類を準備します。

なお、弁護士にご依頼いただいた場合、速やかに債権者に対して受任通知を発送します。

受任通知が債権者に到達して以降は、債権者(貸金業者など)からの取り立てが原則として禁止され、債務者は日常的な取り立てのストレスから解放されます。

しかし、法人破産の場合、口座凍結や取引先の混乱を避けるため、受任通知を送付せずに破産申立を行うこともあります。

[参考記事] 取り立て・督促を止めるには

2.破産手続開始の申立・債務者審尋

申立書類の準備ができたら、裁判所に対して破産手続開始の申立を行います。

申立先は、主たる営業所の所在地を管轄する地方裁判所です(破産法5条1項)。

破産手続開始の決定を得るためには、以下の要件が必要となりますので、申立の段階で各要件を充足しているかどうかを確認しましょう。

  • (a)支払不能または債務超過(同法15条1項、16条1項)
    ※支払不能:弁済期が到来している債務を、一般的・継続的に支払うことができない状態
    ※債務超過:貸借対照表上の負債が、資産を上回っている状態
  • (b)予納金の全額が納付されていること(同法30条1項1号)
    ※少額管財の場合は最低20万円程度
  • (c)不当な目的による申立や、不誠実な申立でないこと(同項2号)

裁判所は、破産手続開始の要件を満たしているかどうかを確認するために、債務者に対して質問を行うことがあります(債務者審尋。裁判所によって運用が異なります。)。

裁判所の質問に対しては、隠すことなく誠実に回答しましょう。

3.破産手続開始の決定・破産管財人の選任

申立を受けた裁判所は、上記の各要件を充足していることを確認したうえで、破産手続開始の決定を行います。

破産手続の開始をもって、破産財団に属する財産に対する強制執行などを新たにすることはできなくなり、すでに進行している強制執行などの手続は失効します(同法42条1項、2項)。

また、破産手続開始の決定と同時に、裁判所は「破産管財人」を選任します。

破産管財人は、後述する法人財産の換価・処分や、債権者への配当などの業務を行います。

4.破産管財人による法人財産の換価・処分

法人破産は、法人の所有する財産をすべて処分したうえで、債権者に対して配当を行った後、法人を消滅させる手続です。

その第一段階として、破産管財人により、債務者である法人が所有する財産の換価・処分が行われます。

破産手続開始の決定をもって、法人が所有する財産(=破産財団)の管理処分権は、破産管財人に専属します(破産法78条1項)。

つまり、破産管財人のみが法人財産を換価・処分できる反面、取締役などの役員が法人財産を処分することはできなくなるのです。

破産管財人は、善良な管理者の注意をもって法人が所有する財産を管理し(同法85条1項)、各財産を順次換価・処分して、債権者への配当原資を確保していきます。

5.債権者集会・債権者への配当

破産管財人による法人財産の換価・処分状況につき、債権者に対して説明を行うため、裁判所の指揮によって「債権者集会」が開催されます。

債権者集会は、破産手続開始の決定から約3か月程度が経った段階で開催されるのが一般的です。

破産管財人より、その時点での換価・処分の状況や、配当に関する見通しについての報告が行われ、適宜債権者からの質問も受け付けられます。

法人財産の換価・処分が長引く場合には、債権者集会が複数回開催されることもあります。

[参考記事] 取引先対応

破産管財人による法人財産の換価・処分が完了した段階で、プールされた資金が債権者に対して配当されます。

配当率は、債務者である法人の財務状況によって異なりますが、配当が全くないケースや、債権額の10%以下というケースが大半となっています。

6.破産手続終結または廃止の決定

債権者への配当が完了したら、裁判所が破産手続終結の決定を行います(破産法220条1項)。

破産手続終結の決定が行われた場合、裁判所は直ちにその主文および理由の要旨を公告し、破産者である法人に対して通知を行います(同条2項)。

これに対して、配当が行われないうちに破産手続の費用が不足した場合には、裁判所が破産手続廃止の決定を行います(同法217条1項)。

破産手続廃止の決定は、裁判所によってその旨が公告され(同条4項)、2週間の即時抗告期間を経て確定します(同条6項)。

7.法人格の消滅

法人破産の手続が終結または廃止によって終了した場合、裁判所書記官が法務局の登記所に嘱託し、破産手続終結または廃止の登記が行われます(破産法257条7項、1項)。
この登記が完了した時点をもって、法人格が消滅し、商業登記簿も閉鎖されます。

法人格の消滅に伴い、法人の債務も当然に消滅することになります。

ただし、代表者が法人の債務を連帯保証している場合には、法人の債権者から連帯保証債務の履行を求められる可能性があるので、注意が必要です。

[参考記事] 代表者の自己破産について

8.法人破産手続は全て弁護士にお任せください

このように、法人破産には多くの工程を必要とします。
漏れなく対応するのは非常に大変ですが、弁護士にご相談いただければ、手間なくスムーズに法人破産の手続を進めることが可能です。

会社の債務を支払えずにお悩みの経営者の方は、お早めに泉総合法律事務所の弁護士までご相談ください。

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