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債権回収の重要知識

留置権を利用した債権の回収方法

債権を回収する方法には様々なものがあり、中には俗に言う「借金のカタ」を利用した方法も存在します。
これは法律的には「担保」と呼ばれ、合法的なものです。

ここでは担保の1つである「留置権」を利用した債権回収方法について解説します。

1.留置権とは

留置権は「法定担保物権」に分類される権利です。

ここで言う「法定」とは、「契約を締結しなくても当然に発生する」という意味です。相手の承諾がなくても、後述する要件を満たしていれば留置権が発生します。

そして留置とは、「相手から預かった物を保管する」という意味です。
すなわち留置権は、相手から預かった物を保管することで、債権の回収が可能になるのです。

例えばAさんがBさんに「壊れたパソコンを5万円で修理して」と依頼したとします。
Bさんは実際にパソコンを修理しましたが、パソコンを引き取りに来たAさんが「修理代金の持ち合わせはないが、仕事で急いでパソコンを使う用事があるので、パソコンをすぐ返して欲しい」と頼んだとします。

これに対してBさんは「修理代金を払ってもらえるまでパソコンを留置(預かって保管)します」と主張して対抗できます。

このように「弁済を受けるまで預かった物を相手に返さないと主張できる権利」が留置権です。

相手(Aさん)としては代金を払うか別の担保を提供しない限り、パソコンを返してもらえなくなります。そのため留置権には「間接的に弁済を促す効果」があり、この効果で債権の回収を図ることになります。

2.留置権が成立する要件

留置権には民法で定められた「民事留置権」(民法295条1項)と、商法で定められた「商事留置権」(商法521条)があります。

ここでは商事留置権の成立要件を紹介します。
以下の4つを満たせば商事留置権が成立します。

  • 両当事者が法人や事業者などの商人である
  • 商行為によって生じた債権が存在している
  • 支払期限が到来している
  • 債権者が取引先の所有物(動産、不動産又は有価証券)を保管している

この要件の他、商事留置権には注意点があるので、以下で詳しく説明します。

(1) 牽連性は不要

民事留置権では、債権と留置物の間に「牽連性がある」ことが要件となっています。
牽連性とは、簡単に言えば「債権と留置物の間に関連がある」ということです。

先のパソコンの例では、パソコンの修理を発端として5万円の債権が発生したため、パソコン(留置物)と5万円(債権)の間には牽連性があると言えます。

これに対して牽連性がない例としては、例えばパソコンを修理して引き渡したのに5万円をもらえない場合に、別の用事で預かっていた相手のスマホを留置して「スマホを返して欲しかったら5万円払え」と要求するようなケースです。

5万円はあくまでパソコンの修理によって発生した債権であり、スマホと債権は何ら関係がないため、民事留置権は成立しません。

しかし商事留置権は、留置物と債権に牽連性がなくても、商事留置権の要件を満たせば成立します。

商取引をする場合、何度も商品や代金のやりとりを繰り返すことが多いはずです。度重なる取引の中のどれか1つの取引で弁済が行われなかった場合、その取引と関係ない物であっても、相手の物がたまたま自分の手元にあれば、それを留置して留置権を行使できます。

(2) 第三者の物の留置の禁止

民事留置権では「第三者の物」を留置することが認められています。債務者自身の物でなくても、債権との間に牽連性がある物なら留置できます。

しかし商事留置権では第三者の物を留置できません。
留置物と債権の間に牽連性がなくても構いませんが、留置する物は債務者の物でなければならないのです。

(3) 実質的に優先弁済的効力を持つ

留置権は物を留置することで相手に弁済を促すことが基本的な役割です。そのため優先的に弁済を受ける効力は制度上ありませんが、実質的に優先弁済的効力を持つことがあります。

例えば債務者の所有物である家畜などを目的物として留置している場合、エサ代などに費用がかかります。こういったケースでは目的物を競売にかけて現金化することが認められる場合があります。
こういった競売を「形式的競売」と呼びます。

競売で得た現金は目的物の持ち主へ返還しなければなりませんが、このときに債権と相殺して、残った部分だけを返金できることになっています。そのため留置権には事実上の優先弁済的効力があると言えます。

(4) 倒産手続きにおいて保護される

倒産の各手続きでは、商事留置権は基本的に保護されます(民事留置権は保護されないため、相手が倒産したら債権の回収は諦めるほかありません)。

また、破産法では商事留置権は特別の先取特権とみなされるため、破産手続きに関係なく行使することが可能です。
破産管財人などが留置物の引き渡しを要求しても拒否できるのです。

【留置権の消滅要件】
債務者からの弁済を受けるか、別途担保になるものを提供されると、目的物の留置はできなくなります。留置権がなくなるので、物を返還しなければなりません。
また、何らかの事情で、弁済を受ける前に債務者に目的物を引き渡すなどして目的物を占有できない状態になってしまうと、やはり留置権は消滅してしまいます。
さらに、留置中の物は「善良な管理者の注意義務」を持って保管しなければなりません(民法298条1項)。
なお、債務者の承諾を得ずに留置中の物を使用、賃貸、借金の担保にするなどした場合、債務者は留置権の消滅を請求できます(民法298条2項,3項)。

3.留置権による債権回収の流れ

ここからは、具体的にどのようにして留置権を使って債権を回収するのか、その流れを見ていきましょう。

(1) 督促

留置権は「目的物を留置して間接的に弁済を促す」ための権利です。
そのため目的物をいきなり競売にかけるのではなく、まずは相手に弁済を請求する必要があります。

通常通り、電話やメール、内容証明などを使って支払いを請求してください。

留置権の目的物が相手にとって本当に必要な物の場合は、目的物を取り戻すためにこの段階で弁済に応じてくれる可能性があります。

(2) 競売の申立て

督促をしても相手が弁済してくれない場合は、留置権に基づいて競売を行うことが可能です。

民事執行法第195条には「留置権による競売及び民法、商法その他の法律の規定による換価のための競売については、担保権の実行としての競売の例による」という条文があります。そのため担保権の実行としての競売と同じ方法で、競売の手続きに入ることができます。

競売は動産または不動産の所在地を管轄する地方裁判所に申立てを行います。

裁判所によって運用が異なりますが、概ね以下の書類が必要です。

  • 競売申立書
  • 当事者目録
  • 当事者となる法人の資格証明書(法務局で取得)
  • 執行場所または目的の不動産に関する地図など
  • 委任状(弁護士に依頼して申立てをする場合)

申立書や目録などは裁判所に書式があるため、事前に問い合わせるか現地で入手しましょう。

目的物が動産の場合は執行官に提出することになりますが、動産と言っても手の平サイズから大型機械まで様々です。執行官に取りに来てもらうことがあるため、執行場所の略図が必要になります。

(3) 申立て後〜配当

申立てが受理された後は、申立人がすることはほとんどありません。

以下の流れで裁判所側が手続きを進めてくれます。

  1. 競売開始の決定
  2. (不動産の場合は)不動産の調査
  3. 最低売却価格や期日の決定
  4. 競売開始
  5. 開札
  6. 債権者へ配当

また、競売を申立て時に予納金を納める必要がありますが、納付額は目的物が不動産か動産かだけでなく、裁判所によっても異なります。

管轄の裁判所にお問い合わせください。

4.競売に持ち込むなら弁護士へ依頼すべき

商事留置権は債権回収のための非常に強力な権利となっていますが、留置権に基づいて自力で競売を行うのは難しいです。

と言うのも、裁判所によって運用が異なることが多いうえに、ケースごとに必要書類が違います。
自分で裁判所に問い合わせながら書類を用意するのは極めて困難なため、手続きをなかなか進められない事態に陥る可能性も0ではありません。

留置権に基づく競売を行いたい場合は、弁護士に依頼して個別の事情に合わせた対応をしてもらうことがベストです。場合によっては留置権に基づく競売以外の効率的な方法を見つけて、スマートに債権を回収してくれるかもしれません。

債権回収でお悩みの方は、泉総合法律事務所にぜひ一度ご相談ください。

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