通販商品の後払い代金が未払いに!債権回収の方法は?
通販で顧客に販売した商品の代金を後払いにしている場合、支払期限までに代金が支払われないケースがあります。
販売者には、当然代金を顧客に請求する権利がありますが、顧客が任意に支払わない場合、どのような方法で債権を回収すれば良いのでしょうか。
今回は、通販で販売した商品の後払い代金が未払いとなってしまった場合に、代金を回収するための方法などを解説します。
1.通販代金を後払いにする業者側のメリット・リスク
通販代金の後払いを認める場合、販売業者にとっては、メリット・リスクの両面が存在します。
(1) 顧客側の選択肢が広がり、客層の拡大に繋がる
後払いを認めることによる販売業者側のメリットとしては、客層の拡大に繋がる点が挙げられます。
顧客の視点に立つと、決済の方法について選択肢が多い方が、利便性が高いといえます。
即日払いに加えて後払いが認められていると、すぐには資金を用意できない人や、支払いサイクルに縛りがある事業者なども、購入を検討しやすくなるでしょう。
その結果、商品を購買する客層が拡大し、より良い条件で商品を売却できる可能性が高まります。
(2) 代金が未払いとなるリスクがある
その一方で、販売業者は、後払い代金を回収できなくなるリスクがある点に注意が必要です。
商品の売買においては、原則として、商品の引渡しと代金の支払いは「同時履行」とされています(民法533条)。
同時履行であれば、売主は、買主が代金を支払わない限り商品を引き渡さなくてよいため、商品を持ち逃げされるリスクがありません。
これに対して後払いの場合は、同時履行の抗弁権を放棄して、商品を先に買主へ渡すことになります。
その後、仮に代金が未払いとなった場合、売主は商品を失っただけで、何の対価も得られないという事態になりかねないので要注意です。
2.未払いとなった後払い代金を回収する方法
後払いの通販商品購入代金が未払いとなった場合、売主としては、以下の方法により債権回収を図りましょう。
(1) 電話やメールなどで支払いを催促する
買主が支払いを忘れているだけかもしれませんので、まずは電話やメールなどで買主に連絡をとり、購入代金を早急に支払うよう催促しましょう。
2、3回連絡をとってもなお、購入代金が支払われない場合には、次のステップに移行すべきタイミングと考えられます。
(2) 内容証明郵便で督促状を送付する
電話やメールなどでの支払い催促が奏功しなかった場合、次は内容証明郵便により督促状を発送することが考えられます。
内容証明郵便による督促を行うことで、買主に対してプレッシャーを与えることができ、結果的に代金が任意に支払われる可能性が高まります。
また、内容証明郵便による督促(催告)を行うと、売買代金債権の消滅時効の完成が猶予されます(民法150条1項)。
[参考記事] 債権回収の消滅時効は?時効期間・完成阻止の方法(3) 法的手段を通じて回収を図る
内容証明郵便による催告を行ってもなお、買主が売買代金を支払わない場合には、法的手段を用いて売買代金の回収を図りましょう。
売買代金債権を回収するために、考えられる主な法的手段は、以下のとおりです。
支払督促
支払督促は、債権者から申立てを受けた裁判所が、債務者に対して、債務を支払うよう督促する制度です。
参考:支払督促|裁判所
支払督促は、簡単な書面審査のみによって発送されるため、時間と準備の手間がそれほどかからない点がメリットです。
債務者が支払督促を受け取ってから2週間以内に、適法な異議申立てを行わない場合、債権者による仮執行宣言の申立てを経て、裁判所が改めて、仮執行宣言付き支払督促を債務者に発送します。
仮執行宣言付き支払督促は、強制執行の債務名義として認められているため(民事執行法22条4号)、債権者は強制執行の手続きをとることができるようになります。
ただし、支払督促に対する適法な異議申立てが行われた場合、自動的に訴訟手続きへ移行します。
この場合、支払督促が空振りとなり、訴訟への対応と併せて二度手間になってしまう点に注意しましょう。
少額訴訟
少額訴訟は、60万円以下の少額債権を回収する際に利用できる、簡易的な訴訟手続きです。
参考:民事調停手続|裁判所
少額訴訟を提起すると、初回期日までにすべての主張と証拠を裁判所に提出することになり、原則1回の審理で請求の可否について判断が行われます。
さらに、少額訴訟の判決に対しては、控訴が認められていません。
そのため、裁判所による判断を早期に得られ、迅速に債権回収を実現できるメリットがあります。
特に通販の購入代金は、60万円以下であるケースがほとんどでしょうから、少額訴訟は使い勝手のよい手続きといえるでしょう。
通常訴訟
60万円を超える高額の商品代金が未払いとなっている場合、少額訴訟は利用できませんので、通常訴訟を提起する必要があります。
通常訴訟では、売主は、売買代金債権の存在を証拠により立証しなければなりません。
インターネット上の通販による売買であれば、売買の約定が成立したことを示すページやメールなどを、証拠として提出すればよいでしょう。
ただし、買主側から反論が行われる可能性もあるので、その際には法的な観点から再反論を行う必要があります。
買主の反論にきちんと対処し、スムーズに勝訴判決を得るためには、弁護士にご相談ください。
3.後払い代金の未払いを予防する対策
後払い代金が未払いとなった場合、債権回収の法的手段は用意されているものの、時間・費用・労力がかかってしまいます。
そのため、後払い代金の未払いをできる限り予防できる対策を行っておきたいところです。
後払い代金の未払いリスクを回避するための有力な方法としては、債権譲渡型後払いサービスを利用することが考えられます。
「債権譲渡型後払い」とは、決済業者に対して、後払いとなっている売買代金債権を譲渡し、その対価として、売買代金に準ずる金額を受け取る仕組みをいいます。
一定の手数料はかかるものの、買主が売買代金を支払うか否かにかかわらず、決済業者から確実にキャッシュを支払ってもらえる点がメリットです。
確実な売買代金債権の回収を図りたい場合には、債権譲渡型後払いサービスの利用を検討してみるとよいでしょう。
4.未払いとなった後払い代金の回収は弁護士に相談を
通販の売買代金が回収できない場合、「少額だから」「債権回収の方法がわからないから」などの理由で諦めてしまうという売主も多いです。
確かに、あまりにも少額の債権については、法的手段を講ずることが割に合わないかもしれません。
その場合は、再度未回収が発生するリスクを回避するため、債権譲渡型後払いサービスの利用などを検討するとよいでしょう。
その一方で、売買代金がある程度まとまった金額の場合には、法的手段を講ずる価値があります。
支払督促や少額訴訟などは、低コスト・低労力で利用できる法的手続きなので、ぜひ利用をご検討ください。
弁護士にご相談いただければ、債権回収の方法に関して、ご状況に合わせたアドバイスが可能です。
通販の売買代金を回収できずにお悩みの方は、お早めに弁護士までご相談ください。