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債権回収の重要知識

第三債務者とは|差押債権の取立に応じない場合はどうする?

「品物を売ったのに代金を支払ってくれない」「注文された工事をしたのに工事代金の入金がない」……このような場合、債権回収を考えなくてはなりません。

債権回収の最終手段として、相手が「第三債務者」に対して有している「債権」を差し押さえる「債権執行」という手続があり、上手くいけば迅速に債権を回収することが可能です。

この記事では、第三債務者とは何か?債権執行とはどのような手続か?について、基本的な知識を説明します。

1.債権執行の仕組み

第三債務者について説明する前に、そもそも債権執行がどのような仕組みなのかを少々解説します。

(1) 債権執行の概要

強制執行は、債務者が債務を履行しない場合に、債権者の債権内容を強制的に実現するための制度です。
強制執行のうち、実現するべき債権が金銭債権で、強制執行によって金銭の支払いを得る手続が金銭執行です。

金銭執行は、債務者の「財産」を差し押さえて処分を禁止したうえ、その財産を金銭に換価し、そこから債権に対する支払いを受けることになります。
例えば、金銭執行のうち、債務者の所有する動産を差し押さえる場合が動産執行であり、動産を競売した代金から支払を受けます。

これに対し、金銭執行で差し押さえる債務者の財産が「債権」の場合を、債権執行と呼びます(民事執行法143条)。債務者が有する「債権」という資産をお金にかえて、そこから満足を受ける手続です。

(2) 債権執行の具体例

資材会社A社は建築会社B社に対して金1000万円の売掛金債権を有していましたが、B社が支払に応じないため訴訟を提起し、B社はA社に対して金1000万円を支払えとの判決を得ました。
しかし、判決が確定してもB社は支払おうとしないので、A社は強制執行に踏み切ることにしました。

調べてみると、B社はデパートC社の店舗建築工事を請け負い、C社に対して5000万円の建築請負代金債権を有していることがわかりました。

そこで、A社は、B社のC社に対する請負代金債権を差し押さえることにしました。

このような債権執行の場面では、各当事者とその債権債務を次の用語で表します。

A社:債権者(または「差押債権者」)
B社:債務者
C社:第三債務者

A社のB社に対する売掛金債権……請求債権
B社のC社に対する建築請負代金債権……差押債権(または「被差押債権」)

2.債権執行手続の流れ

(1) 債権者の申立て

債権執行は、債権者が裁判所に「債権差押命令の申立」を行うことからスタートします。

[参考記事] 債権差押命令とは|流れ・効力・申立書などについて解説

裁判所に提出する書類の主なものは以下になります。

  • 裁判所に発令を求める命令の内容を記載した「債権差押命令申立書」
  • 当事者(債権者・債務者・第三債務者)を表示した「当事者目録」
  • 債権者の権利内容を特定して表示した「請求債権目録」
  • 被差押債権の内容を特定して表示した「差押債権目録」
  • 執行力ある債務名義の正本
  • 債務名義の送達証明書
  • (当事者が法人の場合の)資格証明書

(2) 裁判所による債権差押命令の発令と送達

申立を受けた裁判所は、法定の要件を満たすと判断すれば、「債権差押命令」を発令します。ここからが裁判所による債権執行手続の開始です(民事執行法143条)。

発令された債権差押命令の書類は、債務者と第三債務者に送達されます(同法145条3項)。これは争う機会を与えるためです。

そして、第三債務者に送達された時点で、債権差押命令の効力が発効します(同法145条5項)。

(3) 債権差押命令の効力

債権差押命令の送達により、債務者と第三債務者には、次の効力が発生します。

  • 債務者は被差押債権を第三債務者から取り立てることや、被差押債権を他に譲渡したり、免除したり、相殺したりといった処分を行うことが禁止されます(同法145条1項前段)。
  • 第三債務者は債務者へ債務を弁済することを禁止されます(同法145条1項後段)。禁止に違反して弁済したとしても、これを債権者に主張することはできず、改めて債権者に弁済しなくてはならず、二重払いのリスクを負います。その反面、第三債務者が差押債権者に支払をしたときは、その限度で、弁済をしたとみなされます(同法155条3項)。

このように差押命令によって、債務者は自己の債権の弁済を受けたり処分したりすることができず、第三債務者も債務者への弁済を封じられるため、差し押さえられた債権は、一時的に、いわば「凍結」されるわけです。

このように凍結しておいてから、債権者は、凍結した債権という債務者の「資産」を換価、つまりお金に換える作業に入っていきます。

(4) 差し押さえた債権の換価

差押え対象が動産や不動産の場合は、これを売却して換価することができます。しかし、一般的な債権には市場がないため、差し押さえた債権を売却して換価することは通常は困難です。

そこで、債権執行では、差し押さえた債権を金銭化する方法として、原則的な2つの方法が利用されます。
ひとつは「取立権の行使」であり、もうひとつが「転付命令」の利用です。

なお、これ以外に、裁判所は、譲渡命令・売却命令・管理命令その他の相当な方法で換価することを命令することが可能ですが、いずれも債権の取立が困難な例外的な場合に利用されるものですので、ここでは説明は省略します。

また「転付命令」については、次のコラムに詳細を説明してありますので、ご参照ください。

[参考記事] 債権差押における転付命令とは

(5) 取立権の行使

債権差押命令が第三債務者に送達された日から1週間を経過すると、債権者は直接に第三債務者から債権を取り立てることが認められます(同法155条1項本文)。
ただし、取立できるのは、請求債権の金額と強制執行費用の合計額を上限とします(同法155条1項但書)。

なお、この1週間という期間は、被差押債権が、給与債権、賞与債権(同法152条1項2号)、退職金債権(同2項)、扶養請求権や保険会社等との私的な年金契約に基づく継続的な収入で生計維持に必要なものの請求権など(同1項1号)の場合は、4週間に延長されています(同155条2項)。

これらは第三債務者の生活維持に必要な金銭債権であるため、債権者に取立権が発生するまでの期間を長くして、その間に、差押え禁止範囲の変更申立(同153条1項)を行う余裕を与える趣旨です。

(6) 第三債務者の立場

債権者が取立権を行使して請求してきたのに対し、第三債務者が任意に支払いをすれば、第三債務者は、その限度で、自己の債務を弁済したとみなされます(同法155条3項)。

ただし、第三債務者は、被差押債権の債権者に対して主張することができた事由を、取立権を行使してきた債権者に対しても主張することができます。取立権は、本来の債権者に代わって被差押債権を取り立てるものに過ぎないからです。

したがって、例えば冒頭の例で、債務者である建築会社B社の建築工事が履行されていないことを理由として第三債務者C社が建築請負代金の支払いを拒むことができるならば、C社は、これを取立権を行使してきたA社に対しても主張することができます。

(7) 第三債務者の支払拒否と取立訴訟

では、このように第三債務者が支払を拒む場合、債権者はどのような対応がとれるのでしょうか?

取立権を与えられた債権者は、自分の名で、第三債務者に対して、被差押債権の取立に必要な裁判上・裁判外の一切の行為をすることができます。

任意の支払を請求するにとどまらず、支払督促の申立や訴訟の提起も可能です。債務者が既に被差押債権の債務名義を取得している場合には、それにより第三債務者に対して強制執行を行うこともできます。

このうち訴訟の提起は、「取立訴訟」と呼ばれます(同法157条)。

債権執行では、複数の債権者が同一の被差押債権を差押えるという「差押えの競合」という事態が頻発します。この場合、各債権者がバラバラに取立訴訟を提起することができるとするならば、第三債務者にとっては大迷惑ですし、裁判所としても手間と時間が無駄です。

そこで、取立訴訟が提起された場合、第三債務者は、競合して差し押さえた他の債権者を共同訴訟人として取立訴訟に参加させる命令を発するよう裁判所に求めることができます。

命令の対象となるのは、取立訴訟の訴状が第三債務者に送達される前に競合して差押えをおこなった債権者に限られます(同法157条1項)。参加を命じられた競合債権者は、訴訟に参加しないことも自由ですが、参加しない場合でも、取立訴訟の判決の効力が及びます(同法157条3項)。

3.第三債務者の協力義務

さて、第三債務者は取立を受ける債務者の立場だけではなく、債権執行に協力して行う一定の義務を課されています。

債権は公示されていないので、被差押債権の有無及び内容の本当のところは、差押債権者にはわからないことが通常です。そこで法律では、第三債務者にこの点を明らかにするよう協力させ、差押債権者の判断に資する制度を設けています。それが「第三債務者に対する陳述催告」の制度です。

差押債権者の申立があれば、裁判所書記官が差押命令を送達する際に、第三債務者に対して、送達の日から2週間以内に、被差押債権の存否、種類、金額などの事項を書面で陳述、すなわち書面で回答するよう催告しなくてはなりません(同法147条1項)。

もしも、第三債務者が故意過失によって陳述をしなかったり、虚偽の陳述をした結果、差押債権者に損害が生じた場合は、第三債務者は損害賠償の義務を負います(同法147条2項)。

4.第三債務者の供託

本来、第三債務者は自己の債権者に対して金銭を支払う義務があるだけなのに、他人の事情で強制執行に巻き込まれるというのは迷惑な話です。

そこで、第三債務者は被差押債権の全額を供託して責任を免れることが認められます。これを「権利供託」と呼びます(同法156条1項)。

また、複数の債権差押えが競合した場合などには、第三債務者は供託しなくてはならないとされています。これを「義務供託」と呼びます(同法156条2項)。

これは第三債務者が誰に支払えば良いのか判断に迷うことから開放すると共に、勝手な判断で支払がなされることで債権者の平等が害されることを防止する趣旨です。

5.まとめ

債権執行制度と第三債務者の地位について説明しましたが、強制執行の手続を効果的に利用するには、幅広い法律と実務慣行の知識、経験が必須です。
是非、専門家である弁護士にご相談ください。

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