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強制執行

債権差押えが競合した場合の取り扱いは?競合のパターン・優先順位

債権回収のために強制執行を申し立て、債務者が有する債権(銀行預金など)を差し押さえたとしても、他の債権者による差押え等と競合する場合があります。

他の債権者との競合が発生した場合、ご自身の取り分が減ってしまう可能性があるので注意が必要です。

この記事では、複数の差押え等が競合するパターンや、債権者間の優先順位などについて解説します。

1.差押えが競合するケースと優先順位

債権の差押えと競合する他の債権者による手続きには、いくつかのパターンがあります。

競合する手続きは、「一般債権者による差押え等」「税務署などによる滞納処分」の2つに大別されます。

それぞれの具体的な手続きと、債権者間の優先順位について見てみましょう。

(1) 一般債権者による差押え等と競合する場合

一般債権者による差押え等と競合するケースでは、差押え等の先後にかかわらず、債権額に応じて按分的に配当が行われます。

競合し得る手続きの種類は、「差押え」「仮差押え」「配当要求」の3つです。

①差押え

強制執行手続きの一環として、債権の弁済を禁止する処分です。

最終的に、差押債権者による取立て・差押債権者への転付命令・配当などによって、差押債権者が有する債権の満足を図ります。

②仮差押え

民事保全手続きの一環として、債権の弁済を禁止する処分です。

訴訟などの結果を待たずに、債務者が有する債権の保全を図る必要がある場合に活用されます。

③配当要求

先行する他の債権者による強制執行(差押え)の手続きに参加して、債権額に応じた配当を要求する手続きです。
先に差押えが行われていることがわかっている場合は、配当要求が活用されます。

 

先行する差押えと、上記いずれかの手続きが競合した場合、差し押さえられた債権の債務者(第三債務者)は、以下の対応をとることが求められます。

(a)差押え等の合計額が、債権額を超えない場合
差押え等の合計額が債権額を超えない場合には、すべての差押債権者が満足を受けられるため、第三債務者の対応に関するルールも比較的緩やかです。

差押債権者の取立権が発生した時点以降は、第三債務者は差押債権者に対して弁済を行うことができます。
また、差し押さえられた債権の全額に相当する金銭を、義務履行地の供託所に供託することも認められています(権利供託。民事執行法156条1項)。

(b)差押え等の合計額が、債権額を超える場合
差押え等の合計額が債権額を超える場合には、差押債権者は債権全額の満足を受けることができないので、債権額に応じた公平な配当手続きが必要になります。

この場合、債権額を超えて複数の差押債権者による差押命令等の送達を受けた第三債務者は、債権の全額に相当する金銭(配当要求の場合は、差し押さえられた部分に相当する金銭)を、義務履行地の供託所に供託することが義務付けられています(義務供託。同条2項)。

実質的に差押債権者同士の競合が発生するのは、上記(b)の場合です。
この場合、執行裁判所が債権額に応じた配当を実施することになっています(同法166条1項1号)。

配当手続きの中では、対象債権の額に対応する金銭につき、各差押債権者の有する債権額に応じて、按分的に配当が行われます。

(2) 税務署などによる滞納処分と競合する場合

先に差押えがなされている債権について、税務署などにより、租税債権等に関する滞納処分が行われるケースもあります。

この場合、税務署長等が裁判所に対して「交付要求」を行ったものとみなされます(滞納処分と強制執行等との手続の調整に関する法律36条の10第1項)。
「交付要求」とは、裁判所が実施する配当手続きの中で、租税債権等についても配当を行うように要求することをいいます。

なお、国税および地方税については、一般の債権よりも優先的に徴収するものとされていますので(国税徴収法8条、地方税法14条)、配当手続きにおいても一般の債権に対して優先されます。

つまり、先に債権を差し押さえていたとしても、後から税務署などが同じ債権に対して滞納処分(交付要求)を行ってきた場合には、税務署などに債権の回収を譲らなければならない点に注意が必要です。

2.差押えと他の債権者の競合はいつまで発生する?

債権回収のために強制執行を申し立て、債権の差押えにまで至ったとしても、他の債権者と競合する可能性があるうちは、債権者としても安心できません。

それでは、差押えと他の債権者の競合は、いつまで発生する可能性があるのでしょうか。

結論として、「配当要求遮断効」が発生する事由が発生した時点以降は、他の債権者による差押え等をブロックすることができます。

配当要求遮断効が生じる時点は、以下のとおりです。

(1) 直接取立てにより債権を回収した時点

裁判所によって差押命令が第三債務者に送達された日から、原則として1週間(※)が経過した時点で、差押債権者に対象債権の取立権が発生します(民事執行法155条1項)。

(※)以下に挙げる債権については4週間(同条2項)
・国および地方公共団体以外の者から生計を維持するために支給を受ける継続的給付に関する債権
・給料、賃金、俸給、退職年金および賞与ならびにこれらの性質を有する給与に関する債権
・退職手当およびその性質を有する給与に関する債権

取立権の発生後、差押債権者が第三債務者から債権の支払いを受けた時点以降は、当該債権につき、他の債権者が差押え等を行うことはできないと解されています。

(2) 第三債務者が供託を行った時点

ある債権について差押え等が競合し、その総額が債権額を超過した場合には、第三債務者に対して債権全額に相当する金銭の供託が義務付けられています(民事執行法156条2項)。

また、差押え等の総額が債権額を超過しない場合にも、第三債務者が任意に債権全額に相当する金銭を供託することが認められています(同条1項)。

これらの第三債務者による供託が行われた時点が、他の債権者による差押え等のタイムリミットとされています(同法165条1号)。

(3) 取立訴訟の訴状が第三債務者に送達された時点

第三債務者に対する取立権の発生後、差押債権者が第三債務者に対して取立訴訟を提起した場合には、訴状が第三債務者に送達された時点をもって、他の債権者による差押え等のタイムリミットとされています(民事執行法165条2号)。

したがって、第三債務者に支払いを拒否された場合には、他の債権者からの差押え等を防ぐため、直ちに第三債務者を提訴するのがよいでしょう。

なお、訴状が第三債務者に送達された時点までに差押えを行った他の債権者は、取立訴訟に共同原告として参加することが義務付けられます(同法157条1項)。

(4) 転付命令によって債権を取得した時点

「転付命令」とは、弁済を受けるべき債権(強制執行の対象債権)の支払いに代えて、差し押さえた金銭債権を、第三債務者から差押債権者に転付(移転)する旨の裁判所による命令を意味します(民事執行法159条1項)。

転付命令は、第三債務者に対する取立権の発生後に、差押債権者が裁判所に対して申し立てることで、裁判所により発令されます。

転付命令が発効した場合、強制執行の対象債権は弁済されたものとみなされ(同法160条)、差押対象債権は完全に差押債権者へと移転します。

したがって、転付命令の発効時点以降は、差押対象債権につき、他の債権者が差押え等を行うことはできないと解されています。

[参考記事] 債権差押における転付命令とは

3.差押えによる債権回収は弁護士に相談を

債権の回収が滞った場合、訴訟などを経て、最終的には強制執行(差押え)の手続きにより回収を図る必要があります。

強制執行に至るまでには、訴訟における債権の立証などを適切に行い、さらに強制執行を裁判所に申し立てなければなりません。
その過程での準備や対応の手間は、債権者の方にとって大きな負担となるでしょう。

また、これまで解説したように、いったん預貯金債権などを差し押さえたとしても、別の債権者による差押え等や、税務署などによる滞納処分が競合してしまうケースも考えられます。

債権の支払いを滞らせた債務者は、多重債務の状態に陥っている可能性が高いため、このような競合が発生することも想定しておかなければなりません。

債権者が、他の債権者や税務署などとの競合を阻止することはできませんが、少しでも競合の可能性を低くするためには、訴訟・強制執行の手続きを迅速にとることが大切です。

債権者の方の手間を少なく、かつ迅速に債権回収を行うためには、弁護士へのご相談をお勧めいたします。

弁護士は、債務者に対する支払い催告から訴訟・強制執行に至るまで、債権回収に必要な手続きを一括して代行いたします。
債権の回収がうまくいかずにお悩みの方は、お早めに弁護士までご相談ください。

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