投資詐欺に遭った場合|返金方法などを解説
投資詐欺に遭ってしまった場合、被害金を返金してもらうには、早めの対応・行動が大切です。
速やかに捜査機関や弁護士にご相談のうえ、被害の回復を図ってください。
この記事では、投資詐欺のよくある手口や、被害金の返金を求める方法などを解説します。
1.投資詐欺のよくある手口とは?
お金を儲けたい、少しでも生活の足しにしたいという消費者心理につけ込む「投資詐欺」は、さまざまな形態で世間に横行しています。
投資詐欺の被害に遭わないようにするには、投資詐欺のよくある手口を理解し、怪しい勧誘に対しては、警戒を怠らないことが大切です。
まずは、投資詐欺のよくある手口のパターンを見ていきましょう。
(1) 「絶対に儲かる」などと勧誘する
「この商品を買うと、必ずお金が2倍になって返ってくる」
「元本は保証されているので、損をすることはあり得ない」
このような勧誘文言は、まず疑ってかかることが大切です。
投資はリスクとリターンのバランスで成り立っており、デメリットの全くない投資は存在しません。
それなのに、商品の良い面ばかりを強調して投資を勧誘する人は、まず信用できないと心得る必要があります。
利回りが良いように見える商品、確実に良いリターンが得られるように見える商品には、必ず裏があると思っておきましょう。
(2) 根拠のない安心感を与える
「芸能人の○○さんも投資していて、今流行の商品です」
「有名経営者の〇〇さんも投資しているので、将来性抜群です」
などと、有名人が投資していることを売りに投資を勧誘するケースも散見されます。
しかし、他に誰が投資しているかということは、投資商品としての質には全く関係がありません。
そのため、「有名人も投資している」などという勧誘文句は、投資家に対して根拠のない安心感を与えようとする、不誠実な言動といえます。
有名人の人気に便乗した勧誘文句を聞いたら、その投資商品は怪しいのではないかと疑いましょう。
(3) 投資詐欺に用いられやすい資産の主なパターン
投資詐欺に用いられやすい資産の特徴として、客観的な価値を判断しにくい点が挙げられます。
投資詐欺で頻繁に登場する資産の典型例は、以下のとおりです。
- 未公開株式
- 仮想通貨
- 不動産
- 情報商材 など
上場株式などとは異なり、これらの資産には客観的な市場価格が存在しないため、販売業者の言い値で取引されることが多いです。
しかしその実態は、資産価値の裏付けに乏しい粗悪な投資商品であるというケースが後を絶ちません。
上記の資産がすべて投資不適格というわけではありませんが、少なからず難易度の高い投資商品であることを理解したうえで、勧誘に対しては警戒心をもって臨みましょう。
2.投資詐欺の被害者は返金等を請求する権利がある
投資詐欺の被害に遭った場合、以下のいずれかの法律構成により、加害者に対して被害金の返金等を請求できます。
(1) 錯誤・詐欺取消し
民法上、錯誤または詐欺によって意思表示をした場合、その意思表示を取り消すことができます(民法95条1項、96条1項)。
錯誤:契約の重要な要素につき、誤解した状態で意思表示をしたこと(真意と表示された意思が違っており、本人がそれに気づいていない状態)
詐欺:契約の相手方などに騙されたことによって錯誤を生じ、その錯誤に基づいて意思表示をしたこと
投資詐欺の場合、勧誘者がリスク説明をきちんと行わなかったり、悪質なケースではウソをついたりして、上記の錯誤や詐欺の要件に該当するケースが少なくありません。
錯誤または詐欺による契約の取り消しが認められれば、支払済みの資金の返還を求めることができます。
(2) 損害賠償請求
故意または過失によって、相手方に対して違法に損害を与えた場合、不法行為に基づく損害賠償責任を負います(民法709条)。
たとえば、勧誘者が投資家を積極的にだましたケースや、本来であれば説明すべき事項を説明しなかったために投資家に損害が発生したケースなどでは、不法行為が成立する可能性が高いでしょう。
また、約定どおり配当や払い戻しが行われないなど、投資契約違反が発生した場合には、債務不履行に基づく損害賠償請求も可能です(民法415条1項)。
(3) 契約の解除
業者の側に債務不履行が発生したケースでは、投資契約を解除できる場合もあります(民法541条、542条)。
契約を解除すれば、当初払い込んだ資金についても、全額返還を受けられます。
3.投資詐欺の被害金を実際に返金してもらう方法
法律構成は前述のとおりですが、実際に投資詐欺の被害金の返還を求めるには、どのような手続きをとればよいのでしょうか。
(1) 詐欺業者に対して協議を持ちかける
詐欺業者の連絡先が分かっている場合には、まず詐欺業者に対して協議を申し入れ、直接被害金の返還を求めましょう。
詐欺業者の側としても、トラブルを拡大させて警察に摘発されるような事態は避けたいという理由で、返金に応じる可能性があります。
(2) 支払督促により返金を請求する
詐欺業者が任意に返金を行わない場合は、裁判所に支払督促を申し立てることも考えられます。
参考:支払督促|裁判所
支払督促を申し立てると、裁判所から詐欺業者に対して、被害金を返金するよう督促が行われます。
支払督促に対しては2度の異議申立てが認められていますが、適法な異議申立てが行われなかった場合は、強制執行の手続きをとることが可能になります。
訴訟よりも簡易的な方法で、強制力をもって詐欺業者に返金を催促することができるので、まずは支払督促の申立てをご検討ください。
(3) 訴訟により返金を請求する
支払督促に異議を申し立てられた場合、訴訟を通じて被害金の返還請求を行いましょう。
訴訟では、詐欺業者に対して主張する法律構成に応じて、返金を求める根拠となる事実を証拠により立証する必要があります。
また、裁判所に提出する書面の作成や、裁判所で行われる口頭弁論期日の対応も煩雑かつ専門的なので、弁護士へのご依頼をお勧めいたします。
(4) 振り込め詐欺救済法による救済を受ける
投資詐欺の勧誘を受け、資金を詐欺業者の預貯金口座に振り込んでしまった場合は、「振り込め詐欺救済法(※)」に基づく救済を受けられる可能性があります。
(※)正式名称:犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律
振り込め詐欺救済法による救済を受けるための手順は、以下のとおりです。
①金融機関による預貯金口座の取引停止
金融機関は、捜査機関や被害者から提供を受けた情報を基に、預貯金口座が犯罪に利用されたことが疑われると判断した場合には、当該預貯金口座の取引を停止します(同法3条1項)。
②預金保険機構による失権の公告
金融機関が、犯罪に利用された口座であると疑うに足りる相当な理由があると判断した場合、預金保険機構に対して失権の公告を求めます(同法4条1項)。
失権の公告期間は60日以上で(同法5条2項)、その間に口座名義人から権利行使の届出等がなければ、口座名義人は当該預貯金債権を失います(同法7条)。
(権利行使の届出等が行われた場合には、振り込め詐欺救済法に基づく救済は受けられず、訴訟などを通じて返金を求める必要があります。)
③預金保険機構による分配金支払いのための公告
預貯金口座の失権が確定した場合、金融機関は預金保険機構に対して、被害金回復分配金の支払手続の開始に係る公告を求めます(同法10条1項)。
公告期間は30日以上で(同法11条2項)、その間に被害を受けたことを疎明する資料を提出することで、被害回復分配金の支払いを受けられます。
④被害者への支払い
被害回復分配金が、預貯金口座の残高から支払われます(同法16条1項)。
なお、被害者が複数いる場合で、預貯金口座の残高が被害総額に不足する場合は、按分的に支払いが行われます(同条2項)。
振り込め詐欺救済法による救済を受けるためには、詐欺業者の預貯金口座から被害金が引き出される前に、金融機関による取引停止(口座の凍結)が行われるかどうかがポイントです。
そのため被害者としては、一刻も早く警察に被害届を提出するとともに、詐欺業者の口座が開設されている金融機関に対しても連絡しましょう。
(5) 詐欺業者を刑事告訴して示談を行う
詐欺業者を刑事告訴すると、捜査機関による捜査が行われ、詐欺業者が逮捕・起訴される可能性があります。
詐欺業者が逮捕・起訴された場合、刑事処分を軽くするために、被害者に対して示談を申し出てくるかもしれません。
そのため、将来的な示談を見越して詐欺業者を刑事告訴することも、間接的な被害回復の手法として有効と考えられます。
4.投資詐欺の返金を受けるためにすべきこと
投資詐欺の被害に遭った場合、返金を受けるためには迅速な行動をとることがきわめて重要です。
交渉・支払督促・訴訟などの方法で被害金の返金を目指す場合、まず詐欺業者の住所・名前等を把握する必要があります。
詐欺業者とやり取りを行う中で、何か手がかりとなる情報があれば、その情報をできる限り辿ってみましょう。
また、捜査機関に被害届を提出していれば、捜査の結果判明した詐欺業者に関する情報を、被害者に教えてくれる場合もあります。
さらに、具体的に詐欺業者に対する返金を請求する場合は、早い段階で弁護士に相談することをお勧めいたします。
弁護士にアドバイスを求めることで、詐欺業者の素性特定に繋がる可能性があるほか、交渉・支払督促・訴訟などの請求手続きについても、全面的にサポートを受けられます。
投資詐欺の被害に遭ってしまった方は、お早めに弁護士へご相談ください。