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債権回収の重要知識

債権回収における所有権移転の仮登記の活用方法

債権回収の確実性を高めるため、債務者所有の不動産について、所有権移転の「仮登記」を申請するケースがあります。

仮登記申請は自分で行うこともできますが、手続きについてわからない部分がある場合や、債権回収自体の手続きを含めて専門家のサポートを受けたい場合には、弁護士に相談することがお勧めです。

今回は、債権回収の一環として仮登記を活用する方法や、仮登記申請の手続きの詳細などについて解説します。

1.債権回収時に所有権移転の仮登記を行うケース

債権回収に関連して、所有権移転の仮登記を申請すべきケースは、主に「代物弁済の予約」が行われる場合です。

(1) 債務不履行に備えた代物弁済予約

債務不履行の可能性が懸念される場合には、債権者は何らかの対策をとっておく必要があります。

もっともよく見られる対策としては、債務者所有の財産に対して、質権や抵当権などの担保権を設定する方法が挙げられます。
その一方で、債務者所有の財産について「代物弁済の予約」を行うことも、債務不履行対策としては有力な方法です。

「代物弁済」とは、本来の債務の履行に当たる給付に代えて、別の給付を行うことで、債務を消滅させる旨の契約(合意)です(民法482条)。

たとえば、AがBに対して500万円の貸金を返済する債務を負っているものの、手元に資金がなく返済ができないので、代わりにAが所有する土地をBに譲渡するという契約が「代物弁済」に当たります。

「代物弁済の予約」とは、「債務不履行などが発生した際には、代物弁済を実行する」ということを、債務不履行などが発生していない段階であらかじめ合意しておくことを意味します。

債権者は、仮に債務不履行によって債務が回収できなくなったとしても、代物弁済の予約完結権を行使すれば、目的物の所有権を得ることができます。
つまり債権者にとっては、債務者所有の財産を担保にとった場合と、実質的に同じ効果を得ることができるのです。

代物弁済の予約については、以下のコラムで詳しく解説しているので、併せてご参照ください。

[参考記事] 代物弁済予約とは|契約書の作成などわかりやすく解説

(2) 代物弁済の予約に対応した仮登記の備え

不動産を目的物として代物弁済の予約を行った場合、所有権移転の仮登記を備えておくことが大切です。

不動産に関する物権変動は、登記がなければ第三者に対抗することができません(民法177条)。

つまり、所有者との間で所有権の移転に関する合意をしていたとしても、登記を備えていなければ、後に不動産の二重譲渡を受けて先に登記を備えた第三者に劣後し、不動産の所有権を失ってしまう結果となるのです。

しかしながら、「代物弁済の予約」が行われた段階では、未だ不動産の所有権は移転していないため、所有権移転登記を備えることはできません。
そこで役に立つのが、所有権移転の「仮登記」です。

所有権移転の仮登記がなされた後、同一の権利について本登記がなされた場合には、本登記の順位は仮登記の順位によるものとされています(不動産登記法106条)。

たとえば、Pが不動産Xの所有者との間で、不動産Xについて代物弁済の予約を行い、所有権移転の仮登記を備えたとします。
その後、第三者であるQが、不動産Xについて所有権移転の本登記を備えたとしましょう。

この場合、Pは代物弁済の予約完結権を行使した後、不動産Xについて所有権移転の本登記を備えれば、Qを登記上の順位で逆転することができます。
Pの仮登記がQの本登記に先行している以上、Pの仮登記に基づく本登記は、Qの本登記よりも先順位となるためです。

このように、代物弁済の予約について、第三者への対抗力を備えるために、所有権移転の仮登記を確実に備えておくことが重要になります。

2.仮登記の登記簿謄本での表示

所有権移転の仮登記は、不動産登記簿謄本のうち「権利部(甲区)」に記載されます。
参考:土地登記簿謄本の見本|法務省

「権利部(甲区)」における仮登記関連の記載事項は、以下のとおりです。

①登記の目的
「所有権移転請求権 仮登記」と記載されます。

②受付年月日・受付番号
仮登記申請が法務局等に受理された日付と、受理時に付される受付番号が記載されます。

③権利者その他の事項
仮登記申請書に記載した登記原因と、仮登記の恩恵を受ける権利者の住所・氏名が記載されます。

3.所有権移転の仮登記を自分で申請する方法

所有権移転の仮登記申請自体は、司法書士や弁護士に依頼せずとも、債権者が自分で行うこともできます。

以下では、所有権移転の仮登記を自分で申請する方法について解説します。

(1) 申請先は不動産の所在地を管轄する法務局等

不動産に関する登記の事務は、不動産の所在地を管轄する法務局・地方法務局、またはこれらの支局・出張所が管轄となります(不動産登記法6条1項)。
この管轄は、所有権移転の仮登記についても同様です。

したがって、所有権移転の仮登記申請は、対象となる不動産の所在地を管轄する法務局等に対して行うことになります。

(2) 仮登記申請書の記載例

所有権移転の仮登記を申請する場合、法務局等に登記申請書を提出する必要があります。

登記申請書の記載例は、以下のとおりです。

各記載事項について、それぞれ簡単に解説します。

①登記の目的

「所有権移転請求権仮登記」と記載します。

②原因

所有権移転の仮登記を行うべき原因となった、法律行為の日付と内容を記載します。

債権回収を目的とした代物弁済の予約であれば、「日付+代物弁済予約」と記載します。

③権利者

代物弁済が実行された際に、不動産の所有権を譲り受ける側の住所・名前・連絡先を記載し、実印を押印します。

④義務者

代物弁済が実行された際に、不動産の所有権を失う側の住所・名前・連絡先を記載し、実印を押印します。

⑤添付書類

所有権移転の仮登記申請の添付書類は、「登記原因証明情報」と「印鑑証明書」の2つですので、そのように記載します。

⑤申請日、申請先

所有権移転の仮登記の申請日と、申請先の法務局等の名称を記載します。

⑥課税価格

対象不動産の固定資産税評価額を記載します。

複数の不動産について同時に所有権移転の仮登記を申請する場合、固定資産税評価額の合計額を記載します。

⑦登録免許税

固定資産税評価額から計算される、登録免許税の金額を記載します。

⑧不動産の表示

所有権移転の仮登記を申請する不動産を特定する情報を記載します。

土地の場合は所在・地番・地目・地積、建物の場合は所在・家屋番号・種類・構造・床面積をもって特定します。

また、個々の不動産の固定資産税評価額も、この項目で記載しておきます。

(3) 仮登記申請書の添付書類

所有権移転の仮登記に係る登記申請書の添付書類は、以下の2つです。

①登記原因証明情報

代物弁済の予約など、仮登記の原因となる法律行為を証する資料が必要となります。

代物弁済予約契約の原本や、同写しに義務者の記名押印を付したものなどが、登記原因証明情報として提出可能です。

②登記義務者の印鑑証明書

代物弁済の予約完結権の行使などによって、不動産の所有権を失うことになる側(登記義務者)の印鑑証明書が必要となります。

(4) 所有権移転の仮登記にかかる登録免許税

所有権移転の仮登記を申請する場合、不動産の固定資産税評価額の1%が登録免許税として課税されます。

資産価値の高い不動産の場合は、登録免許税がかなりの高額になるケースもあるので、事前に金額を確認して準備しておきましょう。

なお、返済の滞納など、専らに債務者側の責任によって代物弁済の予約を行うことになった場合には、代物弁済予約契約の中で、登録免許税を債務者側の負担とする旨を合意しておくことも考えられます。

4.債権回収全体の手続きは弁護士に依頼するとスムーズ

債権回収の一環として、代物弁済の予約や所有権移転の仮登記申請を行う場合には、手続き全体を弁護士に依頼するのがスムーズです。

たしかに仮登記の申請自体は、債権者自身でも行うことはできます。
しかし、代物弁済予約契約の中で何を規定すべきなのか、他の手段によって担保をとる方法とどちらが良いかなど、総合的な観点からの検討は、債権者が自分で考えるだけでは見落としが生じがちです。

この点、弁護士にご相談いただければ、債権回収の手続き全体について、総合的なアドバイスを差し上げます。
代物弁済の予約などに関する契約書の作成も、弁護士にお任せいただければ安心です。

債権回収については、ぜひお早めに泉総合法律事務所の弁護士までご相談ください。

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